最近よく耳にする「ライバー」って、何だか知ってます? スマートフォンやPCを使ってネット上でトークや歌、ダンス等をライブ(生で)配信をする人のことですが、これまでライブ配信といえば芸能人やアイドルがするもので、最もメジャーなプラットフォームはYouTubeというイメージでした。
それが近年はライブ専門のプラットフォームやアプリが増え、より手軽で身近な存在に。おかげで最近はOLの新たな副収入の手段として、主婦がお小遣い稼ぎのために、さらにはライバーを専業にしている人までたくさんいるというのです。
「コロナ禍の副産物といえるでしょう。接触イベントの代わりに配信、とくに生配信が盛り上がりました。ネット上でコメントすると配信しているライバーがそれを読んで返答してくれるやりとりや、視聴者がオンラインで送金して配信者を応援する“投げ銭”はすっかり定着し、規模は大きくなるばかり。中には月3ケタの収入の人もいるとか」(エンタメライター)
ではいったい、どれくらい稼げる、稼いでいるのでしょう? 現在は仕事を辞めてライバーに専念しているという30代主婦のAさんに話を聞きました。
ライバー歴10か月で月収30万円に!
──そもそも配信を始めたきっかけは?
Aさん「ライバーをやっていた友達からの紹介ですね。私も緊急事態宣言とか在宅が増えた2年半前くらいからライブを見るようになりました。それでその友達が事務所を紹介してくれて」
──歴はどれくらいですか?
Aさん「10か月くらいです」
──事務所とはどういうギャランティーの分配契約なんですか?
Aさん「本当に事務所や人によってバラバラみたいです。私の場合は時給+視聴者からの投げ銭の3割だったかな? 毎日何時間も配信しているので大体30万円くらい毎月稼げてます。誕生日月とか〇周年とかの月はもうちょっと増えますね。もちろん、ここまで来るのにはかなり努力しました」
なかなかの金額に驚くばかり。これならライバーになろうとする人が増えるのもわかるけれど……。
Aさん「私がやっているプラットフォームにはランキング制度があって、上位になるにつれて時給が上がります。1番上のS6からS5・S4・S3・S2・S1とS帯は6番まであり、A帯以下はA3・A2・A1と3段階づつの順位になっています。S帯からE帯まであり、S帯は時給5000円以上らしいんですが、DとかE帯だと数十円とかでとてつもなく安いです。
毎日の投げ銭の量でランキングが変動するシステムだから、投げ銭の金額をいったん締める時間が1日に1回あります。だから長く配信していれば無条件でランキングが上がるというわけではないので、多くのライバーはC帯以上に行けずに辞めますね」
──夢はありますが厳しい世界ですね。毎日、配信する必要はあると思いますか?
Aさん「毎日やらないとリスナーさんが離れてしまうので、やった方がいいと思います。おやすみチケットという、配信をお休みできる制度もあるのですが、おやチケを使っても配信します。リスナーさんは気分屋なので他のライバーに乗り換えられないように時給が出ない時間もサービス配信をしないとランキングの維持ができません」
──1日あたり何時間やっているんですか?
Aさん「6~8時間はやってますね」
それをほとんど毎日というのだから、普通の会社員やアルバイトの労働時間とほぼ変わらない……。
──どんなことに苦労したり大変だなと思ったりします?
Aさん「リスナーさんをつなぎ止めるのが大変です。多くのリスナーさんは3か月で飽きるといわれているので、長く自分の配信に来て視聴してもらえるように考えなければならないことです。
そして私のプラットフォームは無課金でも遊べるので、より多くのリスナーさんに課金して投げ銭をしてもらえるように工夫しなければいけません。でも他方で課金をたくさんするリスナーさんは態度が大きくなったり横柄になる人もいるので、そういうリスナーさんとの付き合い方も大変です」
──配信していて楽しいことや嬉しいことは何ですか?
Aさん「仲のいいリスナーさんができたり、優しいリスナーさんがついてくれると楽しいです。ライバーとリスナーさんの間だけではなくリスナーさん同士が仲よくしてくれるのも嬉しいですね。雰囲気がよくなりますし。でも結局は、高額なアイテムを投げられるときがいちばん嬉しいです(笑)」
──多くの視聴者を獲得したり、投げ銭を多くしてもらうコツは?
Aさん「自分の配信内でコスプレだったりプレゼントするイベントをしたり、歌を歌って投げ銭してもらうことが多いです。よく投げ銭してくれるリスナーさんの好みのメイクや髪型にして飽きさせない工夫もしています。“自分のためにやってくれた”と思うと投げてくれる金額が上がる人もいますからね」
──そのへんは人間味もあるんですね。
Aさん「特技を生かした配信もいいと思います。プロサックスプレイヤーやモノマネ、手品をやっているライバーも見かけます」
やりがいはお金だけでなく、リスナーとの交流
芸能界やYouTubeにも当てはまるように“差別化”がポイントとなってきている様子。中でもライブ配信と相性がよさそうな“占い”に特化したユニークなライバー事務所『Ascension』に所属する2名のライバーにも話を聞いてみることに。
灯夏(とうか)さん(以下、灯)「現在の職業である占い師としての活動の幅を広げたいと思い、ライバーの活動を始めました」
まいまいさん(以下、ま)「今の事務所の方にTwitterで声をかけていただいて、興味があったので始めてみました」
──配信していて苦労することはありますか?
灯「生活リズムと時間確保です。自分は仕事とライバーの掛け持ちなので、その都度生活リズムを調整しないと次の日に支障が出ることが多いです。時間に関しては1日24時間では足りないのが本音です(笑)」
ま「他の仕事もしているので配信時間の確保も大変ですし、自分はどちらかと言うとクールなほうなので、親しみやすい雰囲気を作るのは苦労したりします」
──配信していて楽しいことや嬉しいことは何ですか?
灯「リスナーさんからの応援や感謝の言葉があることで、ライバーをやってよかったと思っています」
ま「リスナーさんとお話が盛り上がったときはすごく楽しいです。常連さんになって来てくれるのもやっぱり嬉しいです。私は占いの他に絵やダンスなど趣味が多いので、それを披露できるのも楽しいです。うまくいかないときに逆転できる楽しさもあると思います」
特化型ライバーであっても、やはり大切なのはマメさや継続性のようで。
──多くの視聴者を獲得したり、投げ銭を多くしてもらうコツはなんですか?
灯「なるべく長時間配信をしたり、リスナーさんたちが積極的にアシスタント(※)をすることで新規獲得につながるかと思います。投げ銭を多くしてもらうには、リスナーさんに楽しんでもらうよう全力で配信することですね」
※アシスタント=配信者のファングループの中から任命された存在で、配信者に代わり視聴者の変なコメント等をブロックしたり、ファミリーのメンバーを管理したりすることができる心強いサポーター的な人。
ま「私も模索中ではありますが、継続と、できるだけ毎日配信、イベントに参加したりしてギフトを投げてもらう環境づくり。私の場合は占いなどの特技があるので、歌やお絵描きなど特技がある方はそのメニューをつくること。素直にギフトを送ってほしいことを伝えること(笑)。あとは笑顔と明るい雰囲気」
集客に悩む占い師さんのための“受け皿”にも
やはり簡単なようで誰でもやっていけるものではないのだ。ではどういう人がライバーに向いているのだろう? マネジメント側の分析も聞こうと『Ascension』代表のAoiさんにも質問してみました。
──ライバーのスカウトもされているそうで。どういう場所でスカウトしていますか?
Aoiさん「SNS等で気になった方にDMを送っています」
──ライバー事務所は、ライバーのためにどういうことをしてくれるんですか?
Aoiさん「ライブ配信で稼ぎたい! というライバーさんを、しっかり稼げるようにサポートします。Ascensionでは、元トップライバーのマネージャーがつくので、的確なアドバイスと指導を受けることができます。家電や温泉旅行ペアチケットなどをゲットできる事務所限定イベントもあり、フリーライバーよりも事務所に所属した方が、報酬比率が上がる仕組みになっています」
──すでにライバーをやっていて、伸び悩んでいる人に何かアドバイスをいただけますか?
Aoiさん「創意工夫しつつ、継続すること。継続しても伸び悩んでいるなら、ライバー事務所に所属するのもおすすめです。占い師さんはもちろん、占い師さん以外のライバーも随時募集中ですので、ぜひお気軽にご応募ください!」
──占いに特化しようと思ったきっかけは?
Aoiさん「実は、もともと私も占いライバーでした。ライバー事務所はたくさんあっても、占いライバーに特化したライバー事務所はなかったので、自分でつくることにしました」
──ライブ配信における占いならではの強みはなんですか?
Aoiさん「最近、テレビ等の影響で占い師さんが増えてきていますが、多くの占い師さんは集客に悩んでいます。ライブ配信上では指定の有料アイテムをリスナーに購入していただいてリスナーを占うシステムなのですが、例えば街中にあるような占いの館は、お客さんが来るまでの待機時間は占い師に時給が発生しないところが多いと思います。
ライブ配信だと、配信中にライバーが「占ってほしい人はいますか?」と呼びかけてもリクエストがなければ、歌枠(ライバーがカラオケを歌う配信)や雑談枠(ライバーがリスナーのコメントを読み上げ、コミュニケーションを図る配信)に切り替えることができます。こうして占いの待機中に歌ったり雑談をするだけでアイテムが飛び交い、配信アプリによっては時給も発生するので効率よく稼ぐことが可能なんです。ライブ配信は家にいながら占い師活動ができるという点でも、おすすめです」
──占いに限らず、どういう人がライバー向きですか?
Aoiさん「明るく愛嬌があり、元気な人ですね。この人からよいパワーをもらえそう! という人です」
もしかしたら一獲千金の可能性が? あなたの友達ももうライバーデビューしているかも? 配信する側も視聴して投げ銭する側もどちらも楽しめるのがライブの醍醐味のようで。
(取材・文/相良洋一)