人間とともに社会で生きる猫たちの姿を、一歩一歩あゆむように伝える連載「猫の道フミフミ」。第6回は猫専門の本屋さんで“書店員”として働く3匹を紹介します。
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東京・三軒茶屋の猫本専門書店「Cat’s Meow Books」は住宅街の一軒家だけあって、とてもアットホームな雰囲気。店主の安村正也さんのこだわりで、妥協のない品ぞろえを誇る専門店です。
ここにはもう何度も訪れていますが、この数か月の間に大きな変化があったそうです。2017年の開店時から、保護猫出身の“猫書店員さん”たちが店内で猫らしく気ままに過ごすだけ、という究極の接客をしているのですが、そこにちょっと体格のいい新人が2匹現れたのです。その様子をレポートすべく、お邪魔してきました。
全国の猫好き、本好きが集う。売上の一部を保護猫活動団体に寄付
以前と変わったのは猫書店員だけではありません。店内の猫本の数が棚の空きが心配になるほど増えているし、ネット販売も始めたそうなので、いつの間にか猫に関する古書を多くそろえていたお店から、新刊猫本の予約を大量に扱うお店になったそうです。
本の売り上げの10パーセントを保護猫活動団体に寄付していることもあり、日本全国の猫好き、本好きさんとお店はしっかりつながっている印象です。遠方から用事や旅行がてらに来店するファンの方々も増えているようで、ゆっくりと時間をかけ本選びをし、猫書店員と猫本だらけの空間を共有しているそうです。
2匹の“新人”を2か月ほど前に保護猫団体から迎え入れたのですが、それには理由があります。実はお店には「チョボ六(メス・8歳)」と「読太(メス・7歳)」という猫店員さんがいました。でも今年の2月と4月、がんと腎不全で相次いで亡くなったのです。
店主の安村さん夫妻は家族を突然失い、失意に暮れていましたが、悲しいのは人だけではありません。残った黒猫の「さつき(メス・8歳)」がいなくなった2匹を待つかのように、いつまでも通路を眺めたり、夜になると安村さんの布団に入り懐で丸くなったり……。過去にはそんな振る舞いをしたことがなかったさつきのために、安村さん夫妻はすぐに行動を起こしました。
3匹は間もなくお互いに打ち解けた様子
新しい猫たちを迎えるにあたり相性を心配しましたが、さつきはもともとがフレンドリーな性格。1週間ほどで打ち解けました。ただし、パワーがあり余っている長毛猫「あおい(メス・1歳)」と、ずっと約20匹の猫たちと外で暮らしていたサビ猫「なつめ(メス・6歳)」にやや押されぎみの様子。猫の世界でも、新人には手を焼くもののようです。
そんな「Cat’s Meow Books」の猫本と猫書店員に会いに行ってみてはいかがでしょうか。猫本に精通している安村さんにオススメの本を聞いてみるのも一興ですね。
住所:東京都世田谷区若林1-6-15
電話:03-6326-3633
営業時間:11:00〜19:00
定休日:月、火曜日
営業時間等はご来店前にツイッターでご確認ください。
Twitter:@CatsMeowBooks
※猫書店員は店内にいない場合もあります。猫カフェではないので猫書店員たちには節度ある対応をお願いします。
《執筆者プロフィール》
南幅俊輔(みなみはば・しゅんすけ) 盛岡市生まれ。グラフィックデザイナー&写真家。デザイン事務所コイル代表。現在、デザイン以外にも撮影、編集、執筆を手がける。2009年より外で暮らす猫「ソトネコ」をテーマに本格的に撮影活動を開始。日本のソトネコや看板猫のほか、海外の猫の取材・撮影を行っている。著書に『ソトネコJAPAN』(洋泉社)、『ワル猫カレンダー』『ワル猫だもの』(マガジン・マガジン)、『踊るハシビロコウ』(ライブ・パブリッシング)、『ハシビロコウカレンダー』『ハシビロコウのふたば』(辰巳出版)など。企画・デザインでは、『美しすぎるネコ科図鑑』(小学館)、『ねこ検定』(ライブ・パブリッシング)『ハシビロコウのすべて』『ゴリラのすべて』(廣済堂出版)などがある。