たじまことさんのBL漫画『アキはハルとごはんを食べたい』の実写映画が、6月2日から2週間限定で公開されます。一軒家でルームシェアをする大学生のアキとハル。性格も悩みも違うけど、“距離感ゼロ”のふたりがひたすら仲良くごはんを作って食べるという、ほのぼのとした日常を描いた作品です。
本作で、料理担当の「アキ」こと秋吉純太を演じた赤澤遼太郎さんと、片づけ担当の「ハル」こと藤城春継を演じた高橋健介さんに、演じた役やお互いの印象、アドリブシーンについてなど、いろいろなお話を伺いました。
激しいラブシーンはナシ! ほっこり男子ふたりの温かさに癒されて
──まずは原作を読んで面白いと思ったところを教えてください。
高橋 どういうところに面白さを感じるかは人それぞれだと思うんですけど、僕はこの作品の面白さは、コメディとは違うと思っていて。男子ふたりが一緒にごはんを食べて過ごすという、ほっこりしているところがいいところだなと感じました。ハル役を演じるにあたっては、アキとハルがお互いを想い合うという、その「想い」の中にも多くの種類があって、それを1種類ずつ考えていくのが楽しかったです。
赤澤 とにかく、終始優しい感じがする物語だと思います。初めて原作を読んだときは、アキとハルのかわいらしいやり取りや、おいしそうなご飯の描写に心を奪われました。脚本を読んでいるときも、字面だけでおいしそうな料理と楽しそうなふたりのやり取りが描かれていたので、どうやって演じようかとワクワクしていました。
──おふたりはこれまでも共演経験があるそうですが、そのときに感じた印象と、本作を通して感じた印象の変化はありましたか?
高橋 ある意味、全然変わっていなくてよかったなと思いました。最後に共演したのは5年くらい前だっけ? そのときから全然変わっていなかったです。太郎(赤澤さんの愛称)は本当にいい子なんですよ、だから心配なんです。役者でずっといい人って、僕、見たことがないので。
赤澤 あはは(笑)。そうかなぁ。でも、どうする? 実は裏アカとかで毒を吐いていたら(笑)。
高橋 それはヤバいね(笑)。太郎が「仮面をかぶったいい子」なのか「本当にいい子」なのか僕にはまだわかりかねるので、どっちか見極めるために引き続き人間観察したいなと思います。
赤澤 でも、健介さんだって変わっていないですよ。あのころから健介さんはずっと「高橋健介」だったから。
高橋 僕って、人からの評価が二極化するんですよね。太郎みたいに「全然変わっていない」と言ってくれる人と「変わった」っていう人と。僕自身の考え方はずっと変わっていないし「人と違うことをやっちゃえ!」っていうところも昔からありますけど、それを「変わった」って言う人は、きっとある意味、認めてくれたのかなって思います。
赤澤 健介さんが周りの人たちを認めさせたんじゃないですか。僕が初めて共演させてもらったときから、人との接し方や現場でのあり方、仕事への向き合い方は一切ブレていないよ。そういう健介さんの姿を見て「そういう人なんだな」って考え直す人もいるんじゃないかな。
高橋 それはわからないけど、人によっては「鼻につく」とか言われていたので、太郎とかは当時からそういう自分を認めてくれていたんだと思います。
アキとハルでいたら、自然に出てきたアドリブの数々
──友人たちからも「あのふたりってなんかいいよね」といわれる自然な“ゼロ距離感”のアキとハルですが、劇中でふざけ合うところやテンポのいい会話もアドリブなのかな?と思いながら楽しく拝見しました。掛け合いなどは事前に相談されたのですか?
赤澤 わりとその場その場でやってみた感じですね。川野(浩司)監督がふたりの空気感を大切にするためにたくさん提案してくれて、僕らを遊ばせてくれていました。
高橋 事前に打ち合わせしたら、もはやアドリブじゃなくなりますからね。テストでアドリブをやってみて「こういう感じで来る」となったら本番でもそれをやるっていう流れだったかな。いつも勢いでやっているので、そのシーンの延長をやっている感覚でアキとハルとして生きていれば、その場でもっと何か出るんじゃないかなという感覚でした。
赤澤 健介さんはどんなアドリブも引っ張ってくれるんですけど、中でも僕が「やっぱ健介さんすげぇ!」って思ったシーンがあるんです。
アキがメロンチューハイにのっているアイスを食べているところをハルに見つかって、それをごまかすために「あ、ペンギン課長(劇中に出てくるぬいぐるみ)!」 っていうアドリブを投げたら、僕の頭の中で「健介さんにこう来てほしい」と思っていた以上のものを返してくれたんです。そういう「あうん」の呼吸みたいなものが今回の現場で何度も感じたので、嬉しかったですね。
高橋 太郎とのもともとの関係値があるっていうのもありますが、ほかのキャストの方とだったら、もしかしたら出なかった部分があるかもしれないです。
アキの手作り料理に、ハルの「うまっ!」が連発
──アキが作る料理は簡単でおいしいアレンジレシピが中心ですが、特におふたりが思い出に残っているメニューを教えてください。
高橋 僕はトマト塩ラーメン! 初めて撮影で料理を食べるシーンだったときのメニューでしたが、インスタントラーメンにひと手間加えるだけでこうなるのかって。超うまかったです。
赤澤 どれも全部おいしかったけど、お総菜のコロッケを使ったホットサンドもおいしかったなぁ。
高橋 完成した映画を見て思ったんですけど、僕、何食っても「うまっ!」って言っているんですよ。原作があるものだから「うまっ!」って書いてあったら脚本のセリフも「うまっ!」になるんですけど、あまりに「うまっ!」って言いすぎていて、「本当にうまいのか?」と思ってきちゃって……。
赤澤 いや、いい顔して食っていましたよ(笑)。
高橋 本当は「おいしい」とか別の言葉も言いたいけど、そこが原作実写化の難しいところで、たぶんハルは無意識に「うまっ!」って言っているんだよね。映画の上映時間中、同じリアクションが10回くらいありますが、飽きずに見てください! 太郎は料理を作るシーンが何度もあったから大変そうだったね。
赤澤 僕は普段から料理をするタイプではないので、まずレシピをちゃんと作れることから始めたのですが、アキは作り慣れているという設定だからその手際のよさも習得しなければいけなくて。あと、こういう料理系の番組や作品だと、手元の寄りを撮るじゃないですか。「餃子チーズタッカルビ」を箸で持ち上げるとき、手がプルプルしちゃって「OK」がかかるまでが結構大変でした。
──アキが餃子を包んでいるところをハルが思わず連写するシーン、かわいらしくて好きです。
赤澤 あのシーン、実は途中でセリフが変わったんです。ハルがアキの手元を見て「アキって意外に手がキレイだな」っていうセリフだったんですけど、そういう健介さんの手がキレイすぎるんですよ! 僕も原作のセリフを変えるのは正直嫌だったんですけど、どう見ても健介さんの手のほうがキレイだから「アキらしくてかわいい」くらいの、オブラートに包んだちょうどいい感じになって。僕はそれが面白かったしいいなと思ったのですが、原作者のたじ先生や原作ファンの方には申し訳ないなってちょっと思います。
高橋 原作って絶対に変えられない部分もあるけど、あそこのセリフは大丈夫じゃない? もし、たじ先生がめちゃくちゃそこにこだわりを持っていたら申し訳ないけど。実際に僕らがアキとハルを生きてみて出た言葉だったと受け止めてもらえたら嬉しいです。
学生から社会人になるときに、誰もが通る道
──赤澤さんは「アキは感情表現が豊かだからこそ、繊細な一面を持っている男の子で、個人的には共感できる部分が多かった」と公式サイトでコメントされていますが、具体的にどういうところに共感しましたか?
赤澤 好きな人に対して何でもやってあげたいと思うところですかね。その相手が恋人でも家族や親友でも「喜ぶ顔が見たい、尽くしたい」と思うのはとても共感しました。自分の好きな人には笑っていてほしいし、最大限の愛をあげたいなと思います。なので、自分が作る料理を「うまっ!」って言いながらパクパク食べているハルを嬉しそうに見つめるアキの気持ちはよくわかります。
──高橋さんは演じたハルについて、「自分も実際に学生時代に考えていたことと重なる部分があった」とおっしゃっていますが、特にどういうところが?
高橋 自分の行く道を決めるときの「ちょっとした揺らぎ」みたいなことですかね。僕は就活をせずに役者という仕事をやらせてもらっていますけど、学生のときは誰かや何かに感化されやすかったり、新しいことに出会うと「あ、こんな道があるのか」って思ったりするじゃないですか。そのへんの悩みや迷いみたいなことを、今作でハルとして経験できました。学生の間は、その瞬間をずっと楽しんでいたいですよね。だけどみんな大人になっていくし、妥協しなきゃいけないのかなと思いつつ、社会人になることの憧れみたいなものは誰もが抱くと思います。
この作品は、何か事件が起きるような特殊なことは何もなくて、ハルもアキも多少誇張した表現をしていますけど、誰もが通る道でみんなが悩んだことや、共感できる内容になっているなと思います。
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後編では、おふたりの役者に進んだ経緯や友達が社会人になったときに感じたことなどのほか、恒例の「意外なイチメン」にも迫ってみたいと思います!
(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/松嶋愛、ヘアメイク/Kanagon。(Beauty Salon nagomi)、スタイリスト/西川志都(Tatanca))
【Profile】
●赤澤遼太郎(あかざわ・りょうたろう)
1997年1月11日生まれ、神奈川県出身。2015年、舞台『CHaCK-UP―Episode.0―』で俳優デビュー。その後、舞台『おそ松さん』『あんさんぶるスターズ』『A3』『xxxHOLiC』等で人気の役を射止める。近年はCMやバラエティ、TOKYO MX連続ドラマ『救出劇』の主演、『あさステ!』のパーソナリティ、ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』など、多方面で活動している。
●高橋健介(たかはし・けんすけ)
1994年12月24日生まれ、東京都出身。高校生のころより芸能活動を開始し、2015年、ドラマ『ウルトラマンX』にて主演(大空大地役)を務める。翌年、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ(蜂須賀虎徹役)に出演するなど、TVや映画、舞台、YouTubeなど幅広い活動をしている。
【Information】
●映画『アキはハルとごはんを食べたい』
出演:赤澤遼太郎、高橋健介、赤羽流河、櫻井佑樹、竹内星菜、田中優香、青山ひかる、永山たかし、柴田理恵
監督:川野浩司
脚本: 川崎龍太
公開日: 2023年6月2日(金)より、シネマート新宿ほか2週間限定公開
(C)たじまこと/竹書房・「アキハル」製作委員会