太陽から届く光線には、目に見える可視光線と目に見えない紫外線、赤外線、放射線などがあることがわかりました。紫外線も細かく分類すると、3種類に分けられるのだそうです。困ったことに、3つの紫外線にはそれぞれに厄介な性質があるのだとか……。今回もコーセーの研究所で紫外線の基礎研究やUVケア商品の品質評価をしている後藤祐一郎さんにお話を伺います。
フムフムな発見3:UVAとUVBとUVC、全部クセが強くてヤバイやつ?
「紫外線は大きくUVA、UVB、UVCの3種類に分けられます(※A波、B波、C波と分ける場合もあり)。
これも波長の長さで分けているのですが、いちばん波長が短い(=エネルギーが強い)UVCはオゾン層に吸収されるので地表には届きません。エネルギーが強いということは肌に強烈なダメージを与えることでもあるので、もしUVCが地表に届いていたら人体にたいへんな影響を及ぼしていたと考えられますが、幸いにもそのようなことはないので安心してください。
ただ、殺菌灯のように、UVCを人工的に作り出して利用することもあります」
──歯医者さんなどで治療用の器具に薄紫色の光を照射している蛍光灯のようなアレですか?
「そうです。エネルギーが強いので、その力を利用して菌やウイルスを殺しているんです。私たちも研究所で人工的に作り出したUVCを扱うことはあるんですが、うっかり浴びてしまうと肌が炎症を起こしたりしかねないんですよ。だから、じかに触れたり光線が目を直撃したりしないように、扱いには細心の注意を払っています」
──UVCは危険なんですね。
「はい。でも地表には届かないから大丈夫です(ニッコリ)。
UVBも一部がオゾン層に吸収されるので地表に届く量は減りますが、UVAはそのまま地表に降り注ぎます。私たちが浴びる紫外線の約9割がUVAなので、一般的に言う“紫外線”は、ほとんどがUVAと考えていいと思います」
──じゃあ、UVAさえ防いでいれば、紫外線対策はバッチリということになるんですか?
「……と思われるでしょうが、実はそうではないんです。それでは、UVAのことからお話ししましょうか」
フムフムな発見4:ジワジワときて、肌の潤いを奪うUVA
「UVCやUVBに比べると、UVAは波長が長い(=波のかたちが緩やかだからエネルギーも弱い)んですが、そのぶんジワジワくるというか、肌の奥まで入り込む性質があるんです。
皮膚のいちばん外側にある表皮を“角層”と言います。頭皮の角層はフケになり、皮膚の角層は垢(あか)になって剥がれ落ちます。角層の奥に“顆粒層”があり、さらにその奥に“有棘層(ゆうきょくそう)”があり、さらに“基底層”とあって、まるで地層のように皮膚も4層に分かれているのですが、いちばん奥に“真皮(しんぴ)”と呼ばれる組織があります。真皮はほとんどがコラーゲンでできています」
「UVAは皮膚の奥にある、この真皮にまで入り込むんです。波長が長くなるほど、肌の奥まで届くと言ったほうがいいのかもしれません。
真皮には、コラーゲンのように肌のハリや弾力をつかさどる成分があるので、UVAが真皮にまで入り込んで蓄積すると、その成分を変形させて肌のハリや弾力を保てなくしてしまいます。急激な変化をもたらすわけではなく、ゆっくりと時間をかけて、気がついたときには肌のたるみやシワの原因になっているケースがほとんどです。これがいわゆる“光老化”と呼ばれる現象です」
──たるみやシワが出るのは半年後とか1年後くらいですか?
「いえ、症状が出てくるのはもっと長い時間がたってからですね。1年や2年ではわかりません」
──すると、若いころにUVケアを怠っていた人は、高齢になったときに“光老化”が表れる?
「そうなんです。お年を召されると、顔のシミが目立ったり、肌が乾燥して同年代の人よりシワが深くなったりする方がおられますが、すべてではないにしろ、UVAは原因の1つと考えられています」
──地表に降り注ぐ紫外線のうち約9割がUVAなら、UVBは1割程度しかないことになりますが、UVBも注意が必要なのでしょうか?
「はい。地表に届く量が少なくても、UVBは肌への作用が強いんです」
フムフムな発見5:UVBは紫外線全体のたった1割、だけど破壊力が強い
「UVBはエネルギーが強いので、短時間浴びるだけで肌に炎症が起きます。顔や胸元、腕など、露出したところが直射日光を浴びると、肌が赤くなったりヒリヒリしたりすることがありますよね。紫外線による軽いやけどが起きているわけですが、これを“サンバーン”と言います。症状がひどくなると水膨れを起こしたりすることもあります。それが過ぎると数日で肌が黒くなりますが、それを“サンタン”と言います」
──UVAは肌の奥まで入り込んで、じわじわと肌の潤いをなくすような悪さをして、UVBは短時間のあいだに肌にダメージを与える?
「そのとおりです。でも、人間の身体というのはとても不思議で、何もしなくても紫外線対策ができるようにできているんですよ。
紫外線を浴びると、私たちの身体は体内に“メラニン”という成分を生成するように指令を出します。メラニンには、身体の中に入ってくる紫外線を吸収して皮膚を守る働きがあるんです。日焼けすると肌が黒くなるのは、紫外線を吸収したメラニンが細胞に沈着しているからなんです。
夏にこんがり焼けても、数日で皮がむけたり、秋や冬になると肌の色がまた元どおりになるのはメラニンが役割を終えて排出されるからなんですが、日焼けの季節を過ぎても身体がメラニンを生成する指令を出し続けていたり、うまく排出されず肌の中に残ると、残念なことにシミの原因になるんです」
──メラニンだけに頼るわけにはいかない。だから日焼け対策が必要になるわけですね。
「はい。UVBはシワやシミの原因になるだけでなく、皮膚細胞のDNAを破壊するなど、遺伝子レベルで影響を及ぼすことがあり、これが皮膚がんの原因になることもあるので、地表に降り注ぐ量が少ないからと言ってダメージケアをおろそかにすることはできないんです」
──人間にはもともと紫外線を防御する力が備わっているけど、さらにしっかりしたケアをしたほうがより安心ということですね。
「肌のダメージを極力抑えるという意味では、ぜひともUVケアをしていただきたいですね」
DNAを破壊するなんて……。紫外線を甘く見てはいけないことがよくわかりました。次回は正しいUVケアのやり方を引き続きコーセー研究所の後藤祐一郎さんに伺います。海よりも紫外線が強い場所があるらしいので、肌が弱い方は必見ですよ。意外な場所が、危ないのだそうです。
◎第3回:【紫外線#3】知らなかった人は要注意!海水浴場に負けないくらい夏山は紫外線が強い!!(8月14日13時公開予定)
(取材・文/志谷恭作)