モデルとして活動しつつ、YouTube登録者数は40万人以上と、インフルエンサーとしても活動するうさたにパイセン。テレビをはじめ数々のメディアに出演しつつ、世界を飛び回りギャルを布教するバイタリティには脱帽だ。
前半ではうさたにパイセンがギャルに憧れた原体験について聞いた。後半ではギャルのポジティブマインドを持つ秘訣、うさたにパイセンの今後の活動などを伺う。
【前編→「いじめられていたとき、ギャルに救われた」ギャルカルチャーの伝道師・うさたにパイセンの原体験とは】
ヒョウ柄のTシャツを着るだけで強くなれる
──前半で「ギャルのファッションやメイクをすることで、メンタルも強くなれた」というお話がありました。やっぱり変わるものですか?
「人によるとは思うんですけど、私は超変わりますね。今でもヒョウ柄のTシャツを着るだけで強くなれるんですよ(笑)。
やっぱりいきなり内面を変えるのは難しいじゃないですか。でもファッションはすぐにでも変えられる。ギャルにとってファッションって”武装”なんですよね。服もメイクもヘアケアも完璧に武装するから自信を持てる、みたいな」
──めっちゃ合理的だし素敵ですよね。ただ最初にギャルのファッションをするときはちょっと勇気が要りそうな気もします。
「正直、最初は勇気が要りました。親が教育熱心だったし、地元の福島にギャルはあんまりいなかったので、一緒に外を歩いてたら“恥ずかしいからちょっと離れてよ”とか言われたり(笑)。でも“ギャルファッションをする”って自分で決めたことが大きかったですね。
それまでは親の意見に従って大人しく生きてきたけど、初めてやりたいことを自分で選べた。そこからは“やりたいことをやれない人生って何?”って思えるようになって、すごく楽になれたと思います」
──なるほど。「ギャルのファッションに身を包むこと」だけでなく、自分でやりたいことを選べたのが大きかったんですね。
「そうですそうです。でも正直、ファッションは”慣れ”なんで。1回ギャルファッションで外出ちゃったら、2回も3回も一緒ですよ(笑)。
そうしたら誰かから“かわいい”って言ってもらえるから、“あ、これでよかったんだ”って安心できるんですよ。それで堂々と人前に出られるようになっていくし、どんどん自信がついていくと思います」
「自分と違う」を否定せず受け入れるギャルのマインド
──たしかに周りに肯定してくれる人がいるのは大きいですよね。
「そうですね。ギャルマインドを持ってる人って、何でも褒(ほ)め合うんですよ。超ポジティブだから」
──他人を否定しない姿勢って、すっごい素敵ですよね。
「そう、前提としてギャルって各々が自分の理想像はちゃんと持ってるんです。そのうえで“他人の理想像を否定するのは違う”ってことを、みんなわかってるっていうか。だから“こういうのよくない?”って、安心して自分が好きなものをシェアできるんですよね」
──だから伸び伸びできるんですよね。「こういうの好きっていったら引かれちゃうかも」ってビビって言えないこともありますもん。
「そうそう。ギャルは何でも肯定してくれるんですよ。絶対“え、何それ超かわいい”とか“今度一緒にそのアクセ付けようよ~”っていう話になるんで(笑)。
ギャルはみんな”完璧”になりたいので、自分と違う意見をシャットアウトするんじゃなくて、取り入れて成長していくという姿勢なんだと思います」
──肯定が連鎖することで、コミュニティにいるみんなの自己肯定感が上がっていくわけですよね。
「そうですね。こういうコミュニケーションが普通になると、もともとネガティブな人間でも自信がついていくから、みんながポジティブになれるんですよ」
──そういえば、うさたにパイセンさんは「肌が荒れちゃった」とか「体重が増えちゃった」とか、言いにくそうなことも発信しまくってます。つらいことをポジティブに昇華しているのも素敵だなぁ、と。
「実際、肌荒れがひどかった時期とか、めっちゃつらくて。でも“ネガティブな思い出も自虐ネタにしちゃえばいいんじゃね?”って。
やっぱ、しんどいことがあったら周りから“大丈夫?”とか心配されるじゃないですか。そしたら自分もみんなも暗くなると思うんですよね。
でも先に自分から話のネタにしちゃえば、みんな笑ってくれるんですよ。同じ出来事でも、捉え方次第でポジティブにできるんですよね」
──心配されたら落ち込んじゃうけど、みんなを笑わせたら楽しいですからね。
「そうそう。私“自分が生きやすい世の中にすること”をいちばん考えてるんで(笑)。辛いことも笑い話にしたほうが生きやすいじゃないですか」
──それめっちゃ幸せです。結果的にみんなも幸せになってるし。
「なんでも捉え方次第だと思ってるんで。例えば、財布失くすとするじゃないですか。そこで“うわ、マジ最悪~”って落ち込むのか、“よっしゃ!新しい財布買えんじゃん”ってテンション上げるのか、みたいな。ミスったときって、あがいてもどうにもならないし、じゃあポジティブなほうがよくね? って(笑)」
──確かに「常にポジティブに捉える」って、最強の考え方です。でも人間は防衛本能もあって、ネガティブな感情に反応しやすいじゃないですか。うさたにパイセンさんは脳をポジティブな状態に保つために、何か訓練とかしたんですか?
「小さいころからお母さんに“つらいことがあっても、ありがとうって言え!”って教えられてたんですよね。苦手な人の嫌いな部分をバーッて言うんじゃなくて、いいところを1個見つけろって。
当時は“は? 何それ意味わかんない”みたいな(笑)。特にいじめられているときとか、お母さんの言ってることが理解できなすぎて」
──そうですよね。なかなか、そんなすぐポジティブ思考にはなれない。
「でも、当時は毎日つらくて“自分から何かを変えなきゃ”って思っていたので、とりあえずやってみたんですよ。
最初は嫌な人にも“ありがとう”って言ってみたりとか。“『しずかったー(※)』”みたいな感じで、ネガティブな言葉をポジティブに変換してて(笑)。
そしたら、だんだん考え方がポジティブに変わっていったんだと思いますね。その時期に周りにギャルしかいなかったので、自然と褒め合うのが普通になっていた感じです」
※しずかったー:トヨタ自動車株式会社が2014年にリリースしたアプリ。「マジあいつ嫌い!」→「マジあの方将来的に好きになるしかない」のように、『ドラえもん』のヒロイン・しずかちゃんがネガティブな言葉をポジティブに変換してくれる。
──そもそもいじめを受けてつらかった時期に、相手を憎むのではなく「自分が変わらなきゃ」と思えたのがすごい。
「相手を変えるより自分が変わるほうが早いじゃないですか。だから思い切ってギャルっぽい服装をしたり、クラスの一軍グループにも入っていけたんですよ」
──そこがカッコいいですよね。ちなみにうさたにパイセンさんって、SNSでアンチとか見つけたらどんな感情になるんですか?
「私、物事に対して否定から入る人のことは完全にシャットアウトするっていうか、もう視覚と聴覚がなくなるんで(笑)。“なんか、かわいそうな人だな~”って感じで、内容とか覚えてないですね」
今後はギャルメイクができる店舗をオープン予定
──今後も国内外にギャル文化を広めていく活動は続けるんですか?
「はい。日本の代表的なカルチャーとしてギャルを知ってもらうことが目標ですね」
──いま「ギャル文化」は再ブームしていますし、注目も集まりそうです。
「そう。いまギャル文化は盛り上がってるんですけど、誰でもギャルを自称するようになったぶん“ギャルの定義”が曖昧(あいまい)になってる気もしてます。
もともとの“ギャル”ってファッションもマインドも”完璧”な存在なんですよ。マインドだけギャルっぽくて洋服が雑だといけないし、ただ格好を真似(まね)るというのも違うし」
──なるほど。ギャルを正しく広めるために、ちゃんと定義しなくてはいけない、というか。
「そうそう。だから今はまず『日本ギャル協会』を立ち上げたいですね。それとギャル雑誌の仲間たちと一緒に“ギャル検定を作ろう”って話をしたり。あらためて注目されている時期だからこそ、みんなに正しく“ギャル”を知ってほしいです。
それと、今後はギャルを楽しめるお店をオープンする予定もあります。みんながギャルメイクを楽しんだり、かわいい洋服を着れたりするお店にする予定です。ギャルに憧れてる人をもちろん、自信が持てない自分をなんとか変えたいと思っている人など、みんなに来てほしいですね」
(取材・文/ジュウ・ショ、編集/FM中西)