夏のレジャーと言えば、海でしょうか。それとも、山でしょうか。海辺や河川敷でのレジャーで紫外線対策をする人は多いでしょうが、気をつけなければならないのが夏山の紫外線だそうです。今回もコーセーで紫外線の研究をしている後藤祐一郎さんに解説してもらいます。
フムフムな発見6:驚き! 海よりも山のほうが紫外線が強いの?
──紫外線には“逃げ場がない”と言う人もいるのですが、本当ですか?
「UVケア商品を作っている立場の研究員からすると、そんなことはないと言いたいですね(笑)。基本的に、私たちがご提供しているUVカット商品で紫外線はしっかり防御できているんです。
逃げ場がないというのは、おそらく、紫外線はあらゆるところに当たって“乱反射”するという意味だと思います。乱反射というのは、たとえば紫外線がビルの壁に当たったとき、いろんな方向に反射することを言います。跳ね返った紫外線も日焼けの原因になるんですよ。ちなみに、UVAはガラスを通り抜けてくるので、窓の近くにいれば室内にいても日焼けをしてしまいます」
──水はどうでしょう。紫外線は、海や川や湖などでは水面に入り込むのではないのですか?
「いえ、紫外線は水にも反射します。海水浴に行くと水着だけになるので、紫外線を衣服で防げない状態になりますよね。おまけに、砂浜に出ると、紫外線を遮蔽(しゃへい)する場所がほとんどありません。紫外線は海にも反射するし、砂浜の砂にも反射します。ビーチパラソルを差して直射日光を避けても、海や砂に反射した紫外線を浴びることになります。海や砂のほうがコンクリートよりも反射するんですよ」
──やっぱり逃げ場がない?
「だから紫外線をカットできるUVケア商品が有効になってくるんです。海水浴に行くときは日焼けを想定して、ほとんどの方が日焼け止めを塗るなど事前のケアをすると思いますが、案外と見落としがちなのが山に行く場合です」
フムフムな発見7:標高が1000メートル高くなるごとに、紫外線量も10%ずつ増量する
──標高が高いところに行くと、夏でもひんやりした感じがして涼しいし、日差しもそんなに強くないように思えるのですが。
「そうですね。でもそれは勘違いで、標高が1000メートル高くなると、紫外線は10%増量するというデータも出ています。だから、標高が高くなればなるほど紫外線量も多くなります」
──1000メートルで10%増なんて、驚きですね。
「はい。雪もものすごく紫外線を反射するので、ゲレンデでは下からの反射にも要注意です。スキーをやるときはゴーグルを着用したり、日焼け対策をなさっている方も多いのですが、気をつけなければならないのが夏場の登山やハイキングです。まさに今の時期ですね。夏山を楽しむ方は案外とお気づきになっていないのですが、山ではかなり強い紫外線を浴びているんです」
──山に行くと森や雑木林があったりしますが、それでも危ない?
「森の中は大丈夫です。日陰になるし、ちょっと薄暗かったりして直射日光が遮られているところの紫外線量は日なたの50%くらいに減ります。でも山歩きをするときはずっと森の中を歩くわけでもないので、やっぱりUVケアは必要です」
「もう1つ注意しなければならないのが、夏と冬での紫外線量の違いです。冬になると、UVBの照射量は夏場の5分の1くらいに減ります」
──5分の1ということは、8割も減るわけですね。UVBが紫外線全体に占める割合は1割くらいとお聞きしましたが、冬はそれがさらに5分の1になるということですか?
「はい。だから冬場はほとんど日焼けしないんです。でも、UVAは冬になっても照射量は半分くらいにしかなりません。半減するので減ることは減るんですが、5分の1になるUVBと比べると、照射量は多いと考えたほうがいいですね。だから、冬はUVAのケアが大事になってきます」
フムフムな発見8:UVケア商品を選ぶときは“SPF”と“PA”を見逃すな!
「女性の方はほとんどご存じだと思いますが、紫外線予防効果には2つの指標があります。
UVBをカットする指標を「SPF(Sun Protection Factor)」と言います。
UVAをカットする指標が「PA(Protection Grade of UVA)」です。
例を挙げると、当社には『サンカット プロテクトUV スプレー』というスプレータイプの日焼け止めがあるのですが、この商品には“SPF50+”“PA++++”という指標を表示してあります。
“SPF50+”というのは、主にUVBによる日焼けの影響を50分の1以下にカットしますよという意味になります。UVAは4段階に分けて予防効果を表すのですが、“++++”はもっともUVAを防ぐ効果が高いという意味です。これらの指標は日本化粧品工業連合会で定められたものなので、ここで表される数値はコスメ業界全体で共通しています」
──ということは、この『サンカット プロテクトUV スプレー』という商品は、スプレータイプなのに紫外線を防ぐ効果がものすごくありますよという意味ですか?
「はっきり言えばそういうことになります(笑)。海水浴に行って、直射日光が強く、海や砂浜の乱反射も強いときに、SPF50+とある日焼け止めを塗れば、主にUVBによる日焼けの程度を50分の1以下にカットすることができるんです」
──本当に50分の1以下にカットできるんですか?
「できます。科学的にも確かめていることですし、そのために私たちは毎日のように品質や安全性のチェックをして、SPF35なら本当に日焼けの程度を35分の1以下にカットしているのか、SPF50+なら本当に50分の1以下にカットできているのかを調べているわけですから」
──海だけでなく、夏山も紫外線が強いのであれば、こうしたUVケア商品が役に立つわけですね。
「はい。海水浴もそうですが、この季節に登山やハイキングをされる方は、しっかりとUVケアをして夏のレジャーを楽しんでいただきたいと思います」
UVケア商品には“ウォータープルーフ(耐水性)”タイプや、汗に強いタイプの商品もあります。露出した部分にUVケア商品を塗っても、夏場はどうしても汗などで流れ落ちやすいので、商品の機能や特性を生かして塗り直しの手間を省くのもいいとのことでした。スポーツで汗を流したり、海水浴に行くときなど、用途や外出時間などに応じて使い分けるのがコツだそうです。次回もコーセーの研究員・後藤祐一郎さんに紫外線対策について伺います。
◎第4回:【紫外線#4】紫外線を浴びないデメリットも!適度に日に当たりながら肌を守るのがUVケアの極意(8月15日13時公開予定)
(取材・文/志谷恭作)