サブスクリプションと呼ばれる楽曲の聴き放題サービスの普及や、スマートフォン、ワイヤレスイヤフォンというデバイスの進化のおかげで、私たちはこれまで以上に日常的に音楽に触れる機会が増えてきました。
そこで、ミュージシャンや俳優、タレント……いろいろな有名人の方々に、最近よく聴いているプレイリストの中身を教えてもらいました。気になるあの人のプレイリストは、どんな曲なのでしょうか。
第3回は共著のインタビュー集『電池以下 吉田豪編/掟ポルシェ編』(太田出版)が発売中のミュージシャンでDJ、ライターの掟ポルシェさんと、プロインタビュアー・プロ書評家の吉田豪さんに、最近のプレイリストをお聞きしました!
【掟ポルシェのプレイリスト】
アイドル文化が定着したから、もっと気持ち悪い音楽を
──おふたりは、どのようなデバイスで音楽を聴いていますか?
掟:『iPad mini』に入れて聴いています。俺、指が不器用だから、スマホの小さいキーボードじゃ無理なんですよ。小学生のころ習っていたそろばんも玉を2つずつ弾いちゃって全然昇級しないままだったくらい(笑)。サブスクってさ、電波使うじゃないですか。電波のない状況でどうすんの? って。
吉田:(電波がなくても)全然、大丈夫だよ。
掟:でも、(本体に)落とさなきゃダメでしょう。
吉田:ダウンロードしなくても、お気に入りに入れれば大丈夫。
掟:そうなの? でもサブスクって、サンプリング周波数(アナログデータをデジタルデータにするための処理)のビットレートがすごく低い。だからよく聴きなれた曲だと違和感があって、それが嫌なので極力、使わないようにしている。同じように音質が嫌って思う人もいるんじゃないかな。
吉田:ボクはバリバリ使っていますよ(笑)。
──掟さんは、最近はどのような曲を聴いていますか?
掟:アイドルってなんだかんだで、世の中に文化として復権したじゃないですか。そうなってくると、世の中的にあまりいい顔されない気持ち悪いもののほうに引き寄せられちゃいますね。海外だと、ヘビーメタルっぽいハードコアパンクをメタルパンクって呼ぶんですね。俺はメタルパンクのバンドにいくつも好きなバンドがあって、『BONEHUNTER』(ボーンハンター。フィンランドのバンド)のPoison Mindがソロでやっているバンド『ALUCARD』が気に入ってます。豪ちゃんもアルバム買ったよね?
吉田:専門の通販で買ったら、買ったことがバレた。通販って、個人情報が保護されていないのがわかりますね。ボクの場合は、「買ってくれましたね」ってよく言われるんで(笑)。
──ALUCARDは、どのような音楽ですか?
掟:ボーンハンターのメタルパンクをホラーテイストにした感じの音楽。今までカセットテープで3作出ていたのが1枚のCDになった。このアルバムを今、よく聴いていますね。
吉田:掟さんは、それきっかけでSHOW-YAとか聴いたりしないの?
掟:聴かないよ(笑)。このボーカルは、日本のメタルカルチャーにも詳しくて……。
吉田:(遮って)寺田恵子が脱退後のSHOW-YAは聴かないの? ステファニー在籍時の。
掟:気持ちの悪い音楽以外はよくわからないよ!
吉田:『うる星やつら』の主題歌でおなじみのステファニー(笑)。彼女が2代目ボーカルになってから、SHOW-YAは本格的なメタルになっていた時期があって、セールス的には落ちてたはずなんですけど、それをカヴァーしてるんですよ。
【吉田豪のプレイリスト】
趣味は課金。出ていないイベントの配信を購入
──豪さんはサブスクリプションで音楽を聴かれているのですか?
吉田:聴いていますね。プレイリストもいっぱい作っています。仕事用のリストだと、DJをやるときのために、かけたい曲をリストにガンガンぶち込んでいます。この前、10年ぶりにDJをしたんですけれど、ソフトなど全然使わず『iTunes』のリストを順番に押すっていう(笑)、デジタルなのにアナログでDJしました。今度、『CITY CHILL CLUB』(TBSラジオ)という深夜番組の選曲を頼まれたので、そちらは90年代の洋楽中心に選んでいます。
──仕事中も音楽を聴かれているんですか?
吉田:前はずっと音楽を聴いていたんですよ。それがある時期から、ラジオになって今は完全にイベント。トークイベントなどの配信を買って、それを流しながら仕事をしています。
──ご自分が出演されていないイベントの配信を買うのですか?
吉田:買いまくっていますね。それこそコメントが1個もついていないようなイベントとか。思わず、ボクが1回コメントをしたら、そのコメント1個だけで終わったり(笑)。趣味が課金なんで。
掟:趣味が課金! オタクの鑑!
吉田:「あれ買いました」「見ました」っていう言葉は、(本人に対して)本当に有効なんですよ。それだけで一瞬で距離が詰まる。
掟:「そんなものまでチェックしてんのかよ」と、ちょっと怖がられたりもするけれど(笑)。
吉田:いつ着るのかな、みたいな服も大量に買っていますからね。長渕剛フォーク時代のスタッフジャンパーとかね。メルカリを始めたばかりのときで、「10%オフチケットを使えば9万円になるぞ」って(笑)。
掟:タレントグッズの買い過ぎで金銭感覚がおかしなことになってるよ! 親が聞いたら怒るよそれ、「いらないもの買うんじゃない」って!
吉田:親にも大金を渡しているから大丈夫。
──(笑)え~それで、豪さんが最近聴いている曲は何ですか?
吉田:『爆音娘。』(注:2001年から始まったハロプロの楽曲を中心としたDJイベント)というイベントでも流したボクの大好きな1曲なのですが、矢口真里さんのソロ曲で『ひとりぼっちの部屋』。フォークソングのカバー曲で、すごく好きな曲なんです。
──曲にまつわる思い出とかありますか?
吉田:この前、イベントで矢口さんと一緒だったんですよ。ボクがこの曲をどれだけ好きなのかって話をしたらキョトンとした顔をされて……。「何、それ」って言われて。「あなたの歌ですよ」って言って、控室で曲を聴いてもらったら、「私の声だ~」って(笑)。何ひとつ覚えていなかった。
──ちなみに、どのアルバムに入っているのでしょうか。
吉田:『FOLK SONGS 4』(2003年発売)というアルバムに入っているんですよ。Cymbals(シンバルズ)の矢野博康さんがアレンジしていて、すごくいいんですよね。でも当然、サブスクにも何もない。ハロー!なので(注:ハロー!プロジェクトの楽曲はいまだ未配信)。
──おふたりは『DOMMUNE』(ライブストリーミング)で『オルタナティブ・アイドル大百科』という番組のMCをされています。いつも珍しい曲を紹介していますが、『おとといフライデー』(小島みなみと紗倉まなのユニット)の曲をかけていらして、素敵な曲がいっぱいあると改めて思いました。
吉田:それ、(かけたの)ボクですね。歌のレッスンを受けていない人のよさがあるんですよね。
掟:歌手っていう肩書がつくと、アイドルでもうまく歌わないと批判されたりする。でもセクシー女優さんって、本職があるから歌は下手でも大丈夫だし。だからこそ、朴訥(ぼくとつ)とした歌い方のものができあがることがあって、それがよかったりする。そこに、アイドルとしての魅力がすごくあふれているっていうか。プロとしての指導を受ければ受けるほど、違う宝石としてカッティングされていっちゃう。磨いていない状態で見せていただきたい!
・『Nocturne In The Moonlight(月下の夜想曲)』ALUCARD
・『FOLK SONGS 4』より『ひとりぼっちの部屋』矢口真里
(取材・文/池守りぜね)