ハルこと天王寺陽(目黒蓮さん)と桐姫こと黒龍キリカ(今田美桜さん)による、妖艶すぎる手の振り合いが話題を集めた『トリリオンゲーム』(TBS系)第7話。
なぜ桐姫は、ライバルであるはずのハルに手を貸そうとするのか? ふたりの間に、恋心はあるのか? 本稿では、複雑すぎるふたりの関係性を、じっくり考察していきたいと思います。
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桐姫にとってハルは、“おもしれー男”なんだと思う
人生で一度は、イケメンに「フッ、おもしれー女」って言われてみたい! そんなことを思った経験はありませんか? 私は、あります(笑)。
なぜなら、平成の少女マンガって“おもしれー女”が、モテ男子と結ばれることが多かったんですよ。それも、こびたり尽くしたりするわけじゃないのに愛される。
『花より男子』の道明寺司だって、牧野つくしにビンタをされてから、急に意識し始めていましたよね。お金持ちのお坊ちゃんの考えることはよくわからないけれど、「この俺様に、そんなことするなんて!」という驚きが、恋心に発展していったんだと思います。
『トリリオンゲーム』も、ハルにとっての桐姫は“おもしれー女”なんだろうな……と思いながら見ていました。
しかし、悲しいけれど、ハルが桐姫に興味を持ったのは、道明寺のようにただ“おもしれー女”と思っているだけではない。その裏には、いろいろ打算的な事情があります(もちろん、尊敬はしているんだと思うけど)。
彼女には“莫大(ばくだい)な財産”と“社会を動かす力”があるから。だから、このドラマにおいて沼にハマっているのは、桐姫のほう。
第3話でハルは、蜜園フラワーの社長(余貴美子さん)から与えられた条件を達成するため、ホストクラブの売り上げトップの座をかけて挑みました。しかし、やっぱり本物のホストは強い。困っていたとき、そのお店に桐姫が現れ、501万円(ライバルのホストの売上に1万円を足した金額)を払ってハルをナンバーワンに導いた。
ある意味、ハルは自分のおもちゃでもあるので「ここでつぶれてもらったら困る」と思ったのかもしれませんが、ライバルにそこまで手を貸してもいいのでしょうか。“桐姫がこんなにひとつのものに執着したのは、初めてなのでは?”と思ってしまいます。
ハルは、桐姫を塔から連れ出す大泥棒・フリン?
「I’ll take you all(おまえごと全部いただく)」
第1話で、ハルは桐姫に向けてこんなメッセージを残していました。ふと思ったんですけど、桐姫の置かれている状況って、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』のラプンツェルに似ている部分がありませんか?
ラプンツェルほど拘束されているわけではないけれど、ドラゴンバンクの創業者で、ビジネスをする上では、上司でもある父・黒龍一真(國村隼さん)に対する複雑な感情を抱えていると思うんです。
今田美桜さんが公式サイトのインタビューで、桐姫について「勝手に自分のテリトリーを侵害されるのは大嫌いなタイプだと思っているので、父親に対しての敵対心もあるだろう、と感じる」と語っていましたが、自身が父の会社の役員である以上は、自分勝手な行動は慎まなければならない。
ちなみに原作のマンガでは、桐姫がハルに「(小さいころバレエを)やらされてた」と寂しそうに訴える場面もあります。
“欲しいものはすべて手に入れてきた”一方で、“欲しくないものまで抱えなければならなかった”。だからこそ、本当にワガママに生きているハルには、憧れに近い感情を抱いているのかもしれません。
また、桐姫が働く高層ビルの窓までシュルシュルっと降りて来て「I’ll take you all」と伝えたハルの姿が、ビルの中にとらわれたお姫様を助けに来た王子のように見えたんですよね。もしかしたら、ハルはラプンツェル(桐姫)を連れ出すフリン・ライダーだったりして? と思ってしまいます。
欲しいものは手に入らないからこそ美しい?
桐姫は、ハルだけでなく、ずば抜けたIT技術を持つガクこと平学(佐野勇斗さん)のことも自分のものにしようとしています。ただ、ガクの場合は男性として……というよりも、素直に彼のスキルを尊敬している。たしかに、ハルとガクがタッグを組んだら、最強ですもんね。
だけどハルに対しては、そこに複雑な感情が入り込んでいる気がしてならないのです。桐姫は、ハルへの興味が、男性としての好きなのか、人間としての好きなのか。それともただ彼の持つポテンシャルに惹(ひ)かれているのか。彼女自身も、まだわかっていないのではないでしょうか。
一方で、ずっと欲しかったものって、手に入った瞬間に輝きがうせてしまうもの。ハルもガクも、手に入らないからこそ輝いて見えている。
相手の気持ちを読み取ることに長けているハルは、そのことに気づいているはず。だからハルは頑張って桐姫の“おもしれー男”でい続けようとしているんだと思います。悲しいけれど、ハルと桐姫は最後まで結ばれることはないのかもしれません(涙)。
(文/菜本かな、編集/本間美帆)