冒頭の漢字の答えは、文章の中に出てくるんですけど、答えを知っている人は読まなくていいと思います。あと、「そういう変な小細工いらないから漢字の答えだけ教えてくれ」って人は、最後に答えを書いてあるので文章は飛ばして、そっちにいってください。そして心に余裕があって、文章にケチ付けない人だけ読んでくださると幸いです。
「F」の鉛筆を使ったモテテクを披露してみたら
漢字のテストでわからないのがあったけど、教室の壁に貼ってあるプリントをよーく見たら答えの漢字が書いてあってラッキーって経験、みんなしたことあるよね。漢字の読み書き、懐かしいね。ノートにいっぱい書いたよね、2Bの鉛筆だから小指の外側が黒鉛で真っ黒になっちゃってね。
あの~鉛筆の濃さで「F」って覚えてる? HBとHのあいだで、ちょうど真ん中がFなんだよね。小学生のころ、そんなことも知らず、ただそのFって表記がカッコよくて、みんなも持ってなかったし、いざというときのために筆箱に忍ばせていたのね。そのいざというときは、班ごとに机を合わせる授業で、その班の中に好きな子がいるタイミングでFが登場。人間、動くものに目がいくことを本能的に知ってか知らずか、わざと鉛筆を振ったりぐるぐる回したりして、好きな子に対してFをアピールしていた。「ほら、こんなカッコいい鉛筆持ってるんだぜ」ってね。
そりゃ今考えるとくだらないよ、とんがりコーンをわざわざ指にはめて食べるくらい、そのうち指を噛んじゃうくらいくだらない。でも、当時のつぶやき少年は必殺のモテテクだと思ってたんだね。だいたいそういうエピソードって、好きな子には全然気づいてもらえず、どうでもいい男子に食いつかれて終わったりするんだけど、それどころか、だ~れにも気づかれず「fin」。だから、こんなことで好きな子の気を引こうとしていた過去なんて一生誰にも話すことなんてないと思っていたし忘却の彼方。確か、その鉛筆は六角形だったから、コンパスの針で穴をあけてサイコロ代わりにしたんだっけな。
でもこうやって文章を書いているうちに昔を思い出させてくれて、ほんとフムニューさんには感謝しかないです。ありがとうございます。あ、なんかすぐ「感謝」って言葉を口にする人いるよね。別にいいんだけど。
誰しもブレーキが利かないときってあるよね〜
進まないな! 漢字について話そうとしてたのに、Fの鉛筆の思い出からの、最後「fin」って自分で書いてて、「わぁ~書いちゃった! 気持ちわり~」ってなる。こういうのって、思ったことを頭で考える前にしゃべっちゃうおばちゃんや、つまらないダジャレを言いまくるおじさんと一緒で、ブレーキが利かないのかな? 僕の周りでも、ダジャレおじさんいるもん。周りのツッコミありきなんだよね。だいたいが年上の上司だったりして邪険にできないし、ツッコミワードのレパートリーもなくなってくるし、ダジャレハラスメントは勘弁してくださいってなる。
僕自身、“ダジャハラ”はしないが、さっきの鉛筆のFにかけてfinって、たまたま思いついちゃった、うまい感じが気持ち悪いのもわかっているし、“うまいこと言ってやった感”を持って書いてると思われたくない。だいたい、finishでも成立するのに何でわざわざフランス語? なのに我慢できなくて書いてしまう現象に、危機を感じている。でも自覚があるだけマシということにしよう。
自分でわかっているけど、どうしてもブレーキが利かないことってあるよね。僕ね、貧乏ゆすり。周りの人からすると、なんでイライラしてるんだろって不快になるよね。考えごとをしてると、ついね。貧乏ゆすりをしながら邪念を逃すことによって集中できているんだけどね。第2の心臓、ふくらはぎを動かすことで血流もよくなり、運動不足も解消できて実は身体にいいって聞いたことあるけどね。うるさいって? そこまで聞いてないよって? 知ってる知識全部しゃべるなってね。ブレーキ利かないね。
あと、人と話してるときにスマホをいじっちゃう人、多いんじゃない? 失礼だってわかってるし、自分がされたら嫌なのもわかってるけど、一瞬。一瞬で終わらないね。ずーっと見ちゃう。相手の話にうなずいて聞いてるつもりなんだけどね。「あなたの話はつまらないです」って言っているようなもんだからね、よくされるけど。
これは誰に迷惑ってわけじゃないけど、晩ごはん前のお菓子ね。これもブレーキ利かないのよ。小腹が空いたから、ちょっとだけ、ちょっとだけ……ってやってるうちに、ノってきちゃうのよ。袋もちょっとしか開けてないんだよ、取り出すのめんどくさいのに、もうひと口、もうひと口って、食べれば食べるほどお腹が空いてくるという怪奇現象が起きるんだよね。いっぱいあるから、また今度しゃべるね。
漢字が苦手でも“逆転人生”が待っていた!?
漢字だよね。僕は漢字、苦手だな。いまだに、「博」って字は点をつけるんだっけ? ってなるよ。漢字を覚えるだけでなく、書き順も覚えさせられたよね。代表的なのは「必」ね。先に「心」書いちゃう人は見てて気になるけど、別に書きやすい順でいいと思う。「左」は横棒からで「右」は斜めからとかさ。ホワイトボードに書いたり、人に見られたりすると、普段は書ける簡単な漢字が急に出てこなくなるよね。「そんな漢字も書けないのか」と思われてると考えると、ちょっと焦るんだよね。ワンプレートで食べてたら、サラダのドレッシングが白飯に流れてきたときくらい、ちょっと焦るね。
でも、そういうとき以外は文章とか、だいたいパソコンで書くし、わからない漢字があっても瞬時に変換してくれるから、思春期に漢字の勉強しないで深夜番組の『11PM』や『トゥナイト』に夢中だった僕が正しかった、豊かな人生を送った勝ち組ってことでよろしいでしょうか? 一生懸命、寝る間も惜しんで漢字検定1級とか取得した人には申し訳ないけどもね。逆転人生だね。そういう番組あるよね、取り上げられちゃうかもな。わかんないもんだね。
漢字について書くって引っ張ったわりには、そんなに書くことなかったな~。思い出したら、またどこかで書こうかな。そんで、冒頭に載せたイラストの漢字の答えは「サイコロ」。サイコロステーキって、中にはサイコロの形してない肉もけっこうあるよね、のサイコロ。イラストがサイコロの「1の出目」に見えるから、すでに答えは出ていたね。クイズになってないのに、文章を読ませるために最後まで引っ張るなんて、いかさまだよね。
(文/つぶやきシロー)
【PROFILE】
つぶやきシロー ◎1971年3月10日、栃木県生まれ。お笑いタレントや俳優として活動するかたわら、2011年からは小説も執筆。2021年には、著書『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館刊)が安田顕主演で映画化された。2022年4月、新著『こんな人いるよねぇ~──本を読んでつぶやいた』(自由国民社刊)を上梓。また、2009年から公式Twitterでほぼ毎日「あるあるネタ」をつぶやき続けて大人気に。フォロワー数は100万人を超える。(2022年10月現在)
公式Twitter→@shiro_tsubuyaki