「この前お約束していた、例の仕事の件なんですが、申し訳ありませんが会社の考え方の方向性が変わってしまって、なかったことにしていただけませんか?」
あなたは、仕事の取引先から突然、こんな連絡をもらったら、なんと返事をしますか?
これは、そんな理不尽なドタキャンをされたとき、「最初に考えるべきことは何か?」という話です。
予想外のキャンセルでも、文句を言うのは「ちょっと待った!」のワケ
例えば、発注担当者と商談をしていて、こちらからの提案を相手が気に入り、「ぜひ、お願いします」などという、依頼を意味する言葉をいただいたとき。
たとえ口約束であっても契約は契約です。
ですから、いくら契約担当者が上司から「その提案はボツ」と言われてしまったとしても、本来なら、ドタキャンは立派な契約違反になります。
あなたがもし、「いや、口約束であっても、法律的には契約が成立していますから、今さらボツと言われても納得できません」と言ってゴネれば、なんとかなるかもしれません。ボツになるにしても、何かしらの見返りをいただけることもあるでしょう。
でも。もし、これからもその会社とのお付き合いを続けたいと思うなら、ここで文句を言うのは「ちょっと待った!」なのです。
なぜなら、ここでゴネてしまったら最後。
運よく、口約束が契約だと認められて仕事を受けることができたとしても、相手とのつながりはそれで終わりです。“次の仕事”が依頼されることは(たぶん)永遠にないでしょう。
ドタキャンに対してゴネるのなら、“この取引先との仕事はこれで最後”という覚悟が必要なのです。
かと言って、怒りにこぶしを握りながら、無理して笑顔をつくって、「わかりました。残念です」と言って引き下がるのでは、ただの泣き寝入り。ここはひとつ、相手に対していっさいの恩着せがましさを感じさせないように、恩を着せたいところ!
そのためには、どうすればよいのでしょうか?
テッパンのひと言は、「今回は〇〇〇〇〇が合いませんでしたね」
まず、考えるべきは、心ならずも提案を“ドタキャンしなくてはならなくなった相手の気持ち”です。
相手の立場になればわかるでしょう。多少なりとも、あなたに対して「すまないな」という気持ちがあるはず。
その気持ちを察してあげると、明るい未来が待っているのです。
前回の商談では乗り気だった担当者が、上司などから反対されてドタキャンをしてきたとき、例えば、こんなふうに返事をしたらどうでしょう。
「そうですか、ご一緒に仕事ができることを楽しみにしていたので、それはとても残念です。今回はタイミングが合いませんでしたが、また次の機会によろしくお願いします」
ドタキャンの理由が、“上司の反対”であろうが、“会社の方針”であろうが、すべてを「今回はタイミングが悪かった」というひと言で済ませてしまうのです。
「口約束も契約ですから」とか、「上司の方にもう一度話してみてください」とか、「御社の方針はわかりますが、そこをなんとか」などは、あえて、ひと言も言わない。
そもそも言ってもどうにもなりませんから、無駄な抵抗をして相手の心証を悪くするよりも、驚くほど爽やかに受け入れるほうが、はるかに印象がよいのです。
あなたがドタキャンした自分を、あっけらかんと許してくれたら、心ある担当者なら、こう思ってくれるはずです。
「今回は悪いことをしてしまったな……。今度、何か機会があったら、またこの人に仕事を依頼しよう」
つまり、相手からドタキャンをされたとき、あるいは、提案していたことが不採用になったとき、最初に考えるべきことは、“断ってきた相手が、次の仕事を頼みやすい状態をいかにしてつくるか?”ということなのです。
相手に伝えるべきことは次のとおり。
●「今回は一緒に仕事ができなくて非情に残念である……」ということ
●「今回はタイミングが合わなかっただけで、そんなことはよくあることだから気にしないでください……」ということ
●「また次回の機会を楽しみにしている……」ということ
相手がドタキャンをしてきたとき、これができるかどうかで、今後の取引先が減ってしまうかどうかが決まるのです。
この考え方はもちろん、仕事以外にも使えます。例えばデートの約束を、相手がやむをえない理由でドタキャンしてきたとき。
ウダウダと文句を言うより、「とても会いたかったのに、今回はタイミングが合わなくて残念です。次に会えるのを楽しみにしていますね」なんて言えたら、相手はあなたに対して好感を持ってくれるはずです。
(文/西沢泰生)