かつての大人気番組、『アメリカ横断ウルトラクイズ』(以下、ウルトラクイズ)。その第10回大会で、決勝まで行かせていただいた私の体験から、前回、前々回と、ニューヨークで行われた決勝直前の裏話をお伝えしました。

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 今回は、その続き、決勝戦・早押しクイズでの裏話です。

ウルトラクイズ決勝戦──いよいよ決戦の火蓋が切られる

 いまは便利な世の中になったもので、YouTubeで“第10回ウルトラクイズ 決勝”と検索ワードを打ち込めば、1986年に放送されたウルトラクイズ決勝戦のオンエアも、簡単に見ることができます。

 私自身も、ウルトラクイズに絡めた原稿を書くときには、YouTubeで見直すことがあり、この『フムフムニュース』の記事執筆の際も、久しぶりに決勝戦の映像を見直して書いています。

 いや~、われながら緊張していますね。特に決勝戦の早押しクイズの直前、司会の福留功男(以下、留さん)からインタビューされたときは、緊張がMAXです。

「西沢さんは、相手によって作戦を変えるところがありますね。今日の作戦は立ちましたか?」

「今日はいきます。どんどん押していきます!」

 それはそうです。チャレンジャーがたくさんいる番組の前半では、焦ってボタンを早押ししなくても、誤答によるマイナス点にさえ気をつけていれば、簡単に勝ち抜けることができます。でも決勝は、実力者である森田孝和さんとの一騎打ち。早く押さなければ、勝てっこありません。

「この一戦に、いちばん必要なものはなんだと思いますか? 森田さん」

「精神力です」

「西沢さんは?」

「集中力です!」

 話すというより、もう叫んでいますね。われながら顔が怖い。

 ちなみに、この“クイズは集中力”というのは、当時の私がクイズに対して掲げていた信条です。

「森田さん、帽子をかぶってください」

 留さんに促されて、早押しハットをかぶる森田さん。

 私もあらためて帽子を整えます。この帽子、金属製なのですごく重い。少しでも頭をかしげるとずり落ちてしまうので、アゴひもがついています。

 心臓はもうバクバク。よく“緊張で心臓が口から飛び出しそう”という表現がありますが、まさにそんな状態。

 永遠のように長く感じられた沈黙の20秒。その静寂を留さんの声が破ります。

「10ポイント先取! まいります、問題!」

 いよいよ、決勝早押しクイズのスタートです。

本当の1問目は「スカイスクレイパー」じゃなかった?

「問題 ニューヨークといえば摩天楼。では、その摩天楼を英語で言うと?」

 これに森田さんが「スカイスクレイパー」と正解して決勝がスタート。でも、実はこれ、1問目ではありませんでした。

 オンエアではカットされていますが、この問題の前に、4~5問くらい、ふたりともスルーをした問題があったのです。

 記憶では、本当の1問目は次のような問題だったと思います。

「問題 ニューヨークのマンハッタンという地名の由来となったのは、ネイティブアメリカンの何族の言葉?」

 答えはレナペ族。

 難問ですね(笑)。たぶん、クイズが強いふたりが決勝に残ったことから、スタッフは決勝戦の問題の難易度を上げたのでしょう。そのため、最初の4~5問は、私も森田さんも答えることができなかったのです。

 このスカイスクレイパーの問題以降、それ以前よりは少しずつ問題の難易度が下がっていき、わからない問題をスルーしつつも、ふたりの早押しボタンを押すタイミングは、だんだんと早くなっていきます。

「問題 ホーホケキョーと鳴くのはウグイス、では……」

 戦況が3対3の場面。ここで私が押して、「コジュケイ」と誤答。

 ホトトギスの鳴き声を「テッペンカケタカ」というように、鳥の鳴き声を人間の言葉にたとえることを“聞きなし”といい、クイズでは、よく「ブッポウソウと鳴く鳥は」(答え:コノハズク)という問題がよく出題されます。

 ここも、素直にそう答えれば正解だったのに、それまでの問題の難易度を考えて、“コノハズクでは簡単すぎる。ここは、……では、チョットコイと鳴く鳥は? ではないか”と予想し、勝負をかけて失敗したのです。

 この誤答で、ほんの少しだけ、私はボタンを押す手が遅くなってしまいます。

 そのため、ほぼ同時に押した問題も森田さんに点を取られ続け、点差がどんどん開いていきました。

 戦況8対2というところで、私が得意なマンガの問題が出ます。

「問題 鉄腕アトムを作ったのは何博士?」

 この問題で森田さんが「天馬博士」と正解。私はてっきり「作ったのは天馬博士、では……」と問題文が続くと思ってしまい、手が遅れました。

 あとから考えれば、これは、つい「お茶の水博士」と答えてしまうのがミソの問題で、ほかのマンガに振ったら面白くない問題です。留さんも、問題文が短いのでゆっくりと読んでいます。

 得意の漫画問題まで取られてしまい、得点はあっという間に9対2に。私は完全に追いつめられてしまいました。

 ここで福留さんが、私に声をかけます。

「西沢さん、諦めるな」

 このひと言で、思いました。

「そうだ。第1回の放送を見た日から、ずっとずっと憧れてきたウルトラクイズ。今、まさにその決勝戦をやっているんだ。1問でも長くクイズをやりたい! このままでは終われない!」

 留さんのひと言で、諦めかけていた心に火がつきました。(つづく)

(文/西沢泰生)