たれぱんだ、こげぱん、リラックマ、じんべえさん、すみっコぐらしなど、子どもから大人まで幅広い世代に愛されているキャラクターたち。誰もが知るこれら数多くのキャラクターを生み出してきたのが、2022年に90周年を迎えたサンエックスです。
人々を夢中にさせるキャラクターはどのように生まれ、定期的にヒットキャラクターを世に放つことができるのはなぜなのか。プロモーション事業部広報チームの和田くるみさんに話を聞きました。
たれぱんだの大ヒットでキャラクタービジネスが加速!
サンエックスが創業したのは1932年。もともとはノンキャラクターの文房具の製造、販売を行う会社だった。1970年代になると、世間ではキャラクターがブームに。サンリオのハローキティやマイメロディが誕生したのも、この時期だった。
「時代の流れにのって、弊社でもキャラクターを作ってみようという話に。そこで1979年に誕生したのが、第1号のキャラクター『ロンピッシュクラウン』でした。ピエロのキャラクターで、便せんや封筒、カンペンケースなどの文具製品を発売したんです」
そのころは今のように、キャラクターを育てるという概念もノウハウもなかった。その後も次々とキャラクターを作ったが、シリーズ化されることはほとんどなく、単発的な商品化が続いたそうだ。転機が訪れたのは1998年。『たれぱんだ』の登場だ。
「シールを発売する予定があり、そのキャラクターデザインを新人デザイナーたちが担当することに。指定された動物の中からパンダを担当したのが、作者の末政ひかるさんでした。末政さんはかわいいパンダ、元気なパンダなどいろいろ提案しましたが、ことごとく採用されず疲れ果ててヤケ気味に描いたのが『たれぱんだ』でした。
するとそれがまさかの採用に。全部で12キャラクターのシールを発売したのですが、たれぱんだのシールが群を抜いて大ヒットしたんです」
それまではキャラクターの文房具を中心に販売してきた。しかしたれぱんだのキャラ性を生かし、初めてぬいぐるみを作ってみようということに。末政さんが手作りしたぬいぐるみを工場に送るなどしてイメージを伝え、試行錯誤を重ねて販売にたどりついた。
「今では弊社でおなじみのぬいぐるみですが、作られたのはたれぱんだが初めて。これがきっかけで、ほかのキャラでもぬいぐるみ制作に取り組むようになりました。
当時のたれぱんだの勢いはすごく、たれぱんだの専門店もあったほどでした」
大人や世界を巻き込んだリラックマとすみっコぐらし
たれぱんだ以降も、『ぶるぶるどっぐ』、『こげぱん』、『アフロ犬』、『みかんぼうや』など、ヒットキャラクターが誕生した。月に10以上のキャラを生み出していた時期もあり、その背景には毎月デザイナーが新しいキャラクターを考えて提出するという、カンプ(キャラクターの企画を出すときに作る絵)出しがあったそう。そんななか生まれたのが、2003年の『リラックマ』だった。
「作者のコンドウアキさんによると、飼っているチワワのように疲れた自分の面倒を誰かにみてもらいたい……と思ったのがきっかけ。リラックスとかけて、犬ではなくクマになりました。社内からはカラフルにしようという意見もあったそうですが、“絶対に茶色!”とコンドウさんが折れなかったそうです。
翌年にコリラックマが加わり、より世界観が広がるように。5年目に車のCMにリラックマが出演したことで、認知度が一気に上がりましたね」
現在ではNetflixでアニメーションが制作され、世界にも人気が広がっている。
2012年には、サンエックスを代表するもうひとつのキャラクター『すみっコぐらし』が生まれた。誕生のきっかけは社内コンペの投票で人気が集まったこと。作者はまだ新人デザイナーだった、よこみぞゆりさんだった。
「最初から爆発的にヒットしたわけではなく、店頭の商品からファンが増え、徐々に口コミで広がっていきました。デビュー当時のメインはねこ、しろくま、ぺんぎん?、とんかつで、途中からとかげが加わりました。
とかげの登場により、ファンが増加。とかげを主役にした17シリーズ目の『とかげとおかあさん』でさらに人気が高まり、沼った人が多いようです。今ではとかげが特に大人気な印象です。
他にも『喫茶すみっコ』、『すみっコぐらし図鑑』などのシリーズも話題に。現在、すみっコぐらしのキャラクターは60キャラクター以上います」
映画のヒットも記憶に新しいすみっコぐらし。子ども向けに制作されたものの、公開してみると“泣ける”映画として多くの大人が映画館に足を運ぶように。幅広い世代への人気の高さを見せつける結果となった。
これからもどんなときもキャラクターといっしょに
これまでに1000以上のキャラクターを生み出してきたサンエックス。以前は社内コンペなどが中心だったが、最近では別の形で新しいキャラクターが生まれることも。
「2021年にデビューした『チキップダンサーズ』は、プリスクール向けの全国放送アニメキャラとして提案しました。
2022年に誕生した『くまうさ』もYouTuberのエミリンさんから、自身の絵本でくまうさをぜひ登場させたいという声をいただきました。このように最近では、これまでと異なる形でデビューするキャラクターも増えてきました」
他にもYouTube「San-x Channel」で、新しいキャラクターのアニメーションを公開。人気の出たキャラクターを商品化する予定など、新しい取り組みも行っている。
現在、社内には40名ほどのデザイナーが在籍。キャラクターデザインだけでなく、新しいシリーズの打ち合わせ、ライセンス商品の監修作業なども行う。キャラクターはデビューが決まると、世界観を完成させるための担当プランナーが決定。デザイナーはプランナーと一緒に、生み出したキャラクターに背景やストーリーを肉づけしていく。ヒットのカギはチームワークにかかっているのだ。
キャラクターが生まれるところに関しては、デザイナーやプランナーの感性に委ねられている部分が大きい。和田さんによると穏やかな社風や優しい人ばかりの環境が、世間に受け入れられやすいキャラクターを生み出せている理由ではないかという。デビューしたキャラクターは、みんな子どものように大事に育てられていくそうだ。
夏には東京で『サンエックス90周年 うちのコたちの大展覧会』が開催され、連日にぎわいを見せた。記念すべき年に合わせて、サンエックスのパーパス、いわゆる企業の存在意義を発表したのだ。
「パーパスにある“ずっといっしょに”というのは、みなさんとキャラクターがずっといっしょにいるという意味です。キャラクターは動くわけでも、話すわけでもありません。ただ側にいるだけですが、嬉しい日も、悲しい日も毎日寄り添ってくれます。また、私たちサンエックスがキャラクターと“ずっといっしょに”という意味も含んでいます。
このコがいるからがんばれる、このコが大切な人との架け橋になってくれたなど、みんなの居場所を作り、クスッと笑える日常のお手伝いができればと思っています」
今後も私たちを驚かせ、夢中にさせるキャラクターがどのように生み出されるのか、今からわくわくする。100周年に向けて、たくさんのキャラクターたちがどのように育ち、私たちのもとに届くのか、楽しみに待ちたいと思う。
(取材・文/酒井明子、編集/福アニー)
【Information】
●『サンエックス90周年 うちのコたちの大展覧会』札幌会場
会場:東1丁目劇場(旧北海道四季劇場)
会期:2022年11月27日(日)まで開催中
※2023年春から夏にかけて、福岡、仙台、静岡、大阪会場でも開催! 詳細は決まり次第、公式サイトで発表☆
Twitter:https://twitter.com/sanx_official
『サンエックス90周年 うちのコたちの大展覧会』公式サイト:https://san-x90th-ten.exhibit.jp