2022年10月6日からスタートした、木曜劇場『silent』(フジテレビ系)。初回から話題を集め、毎話放送のたびにTwitterでは世界トレンド1位、TVerなどの見逃し配信でも過去最高の再生回数を誇るなど今期大注目の作品です。
本作で目黒蓮さん(Snow Man)演じる佐倉想の妹・佐倉萌役を演じる桜田ひよりさんにインタビューを敢行。ドラマ撮影現場の様子から、役づくりの工夫、そしてもうすぐ二十歳を迎える桜田さんの今後の夢やプライベートについて、たっぷりと語っていただきました。
木曜劇場『silent』、名場面の数々の中で特に印象に残ったシーンは?
──『silent』は毎話のようにTwitterの世界トレンド1位を獲得したり、見逃し配信の視聴数も独走状態と大変な人気ですね。
「ずっとトップのほうにいるようですね。私もリアルタイムで見ています」
──街から人が消えるんじゃないかっていうぐらい。
「あはは。確かに」
──ドラマがスタートしてから、周囲からの反響はいかがですか?
「いろいろな方面から“見てるよー!”って報告を受けていて、ありがたいなと思いますし、そういう作品に携われていることがすごくうれしいです」
──本作では手話のシーンも登場しますが、手話は今回が初めてですか?
「初めてです。手話の練習の日があって、今日撮影したシーンも撮影前に練習の時間があったのでそこで学びました」
──例えば、お好み焼きはヘラで引っくり返すしぐさなど、意外と覚えやすいのかなと思いましたがいかがですか?
「コツをつかむと、すっと入ってきやすいです。しぐさとリンクしてる部分が多くて、8話に出てくるんですけど、これが『プリン』(手のひらの上でプリンが揺れる様子を再現)」
──撮影現場はどんな雰囲気ですか?
「基本的にすごく落ち着いた雰囲気で。ドラマの空気感そのまま、流れていくかのような感じです。段取りもしっかり、土台づくりをしっかりしようっていう団結感があります。和気あいあいというよりは、雰囲気を大事にしている感覚です」
──『silent』ご出演にあたり、演出の方々とはどんな話をされましたか?
「繊細な部分にポイントが当たるドラマになっているので、細かい心の動きだったり、(役の)バックボーンだったりについてしっかり説明を受けました」
──劇中で言葉を交わすシーンはこれまで登場していませんが、主演を務める青羽紬役の川口春奈さんとはお会いしたのでしょうか。
「撮影では今のところ会えていないんです。ただ事務所の先輩なので、以前、別のお仕事でお会いする機会はあったんですけど。1回くらい、現場でお会いできたらいいなと思っています」
──お兄さん・佐倉想役の目黒さんとは会話をされましたか?
「実はあまりお話しする機会がなくて、撮影に入ってからお会いするのが、家に帰ってきたシーンで2回目だったんです。私もいち視聴者として見てるので、“想くんだー!”と思いました(笑)」
──これまで放送された中で、印象に残っているセリフやシーンはどの場面ですか?
「母・佐倉律子を演じる篠原涼子さんとの車内のシーンで、“誰のせいでもないときがいちばん厄介なの”っていうセリフが、やっぱり自分の中でも納得せざるをえないというか。萌的にも“嫌”って言いたいけど言えない。なんとも言えない感じになったのはすごく印象的でした」
──桜田さんが萌を演じるうえでどんな点にこだわりましたか?
「想との、見えない何かでつながっている絆を大切にしたいなと思って演じました。きょうだいにしかわからない感覚ってあるじゃないですか。私も兄がいるのですが、すごく仲がよかったりけんかが絶えなかったりというわけではない(距離感)ですけど、自分の中に信頼できる部分が相手(兄)にあって。育ってきた環境が同じだからこそ、経験するものも似ているので、妹にしか引き出せない想を、みなさんに見せることができたらいいなという思いで演じています」
──篠原さん演じる母・律子が想のCDを処分しようとする場面で、萌が「私の部屋に持っていくよ」というシーンが印象的でした。両親とも違う、妹ならではの場面でした。
「そうですね、あれは妹にしかできないことだなと思っていて。人それぞれ、人へのアプローチの仕方ってまったく違いますし、お母さんはお母さんなりに大切にしたい思いがあるし、お父さんから見て大切にしたいっていう思いもある。そこを想目線で“それは違うんだよ”と、きょうだいだからこそ言える、親への関係性を大切にしました」
──きょうだいって不思議で、あんまり言葉を交わさなくてわかり合えますよね。
「わかりますね。それこそCDの件もそうですけど、お母さんはよかれと思ってやってるけど、“こっちからしたら、それはやってほしくないことなんだよ”というのを、本人の代わりに伝えるのは、結構よくあることなので。実体験がそのままリンクしているシーンでした」
──篠原さんとは撮影の合間などでお話はされましたか?
「一緒のシーンが1話につき1シーンあるかないかで、お会いする機会は少ないのですが、篠原さんは空気感をすごく大事にされていると思います。個人的には篠原さんと雰囲気が似ていると言っていただくことが何度もあって、それがすごくうれしいです」
──今作はもちろん、2022年を振り返っても桜田さんをお見かけしないときがないというほどに出演が続きました。どの役もキャラクターをインストールしたかのように入り込んでいる印象を受けましたが、役の切り替えや役づくりで工夫したことは?
「私は原作がある作品に出演させていただく機会がすごく多くて。作品ごとにどれくらい原作に寄せるかのレベルが違うので、原作のマンガとかアニメを見つつ忠実に再現するところもあれば、オリジナルの要素を加えた作品もあるんです。どこに軸を置いていくかでだいぶ変わっていくと思っているので、まずはその部分を監督ときちんとすり合わせしたり、脚本を読んだ感じで決めたりしています」
もうすぐ二十歳、ターニングポイントと透明感あふれる理由は?
──今年の12月で二十歳のお誕生日を迎えられます。おめでとうございます。20代突入にあたり目標はありますか?
「ありがとうございます。楽しみです! 環境がすごく変わるわけではないとは思うので、いままでどおりに過ごせたらいいなって思います。私はすごく人見知りで、積極的に話すほうではないので、休みの日は引きこもっちゃうんですけど(笑)。二十歳になったら、もっといろいろな方と接して、いろいろな考えを吸収できたらいいな」
──二十歳以降、挑戦してみたい作品のジャンルはありますか?
「私は制服を着て学園ものに出演する機会がほとんどなくて。制服を着て誰かの娘役として登場することは1、2回あったんですけど。いわゆる“学園もの”はなかったのでそういう作品を、二十歳からでもやりたいなという願望はあります(笑)」
──二十歳と言わず、この先もまだまだいけそうです!
「ええー! 高校を卒業した年にそれこそ制服を着て、同世代の方と『神様のえこひいき』(Huluオリジナルドラマ)という作品に出演したのですが、現役の子がやっぱ制服を着ていると、現役じゃない私は、ちょっと違和感ありました(笑)」
──雑誌『Seventeen』では年下のモデルさんたちとも接する機会も多いですもんね。
「そうなんですよ。『Seventeen』では、高校を卒業したら制服の企画に出る機会が減るんです。“ああー、寂しいな”って思いました(笑)」
──モデルに俳優と活動の幅がどんどん広がっていますが、これまでを振り返ってターニングポイントになった出来事は?
「仕事で、というよりは、高校を卒業したことがターニングポイントです。それまでは、もちろん仕事としての重みはありましたし、決して遊びでやってるわけでもなかったですけど、やっぱり社会人になる、“学生”という肩書を捨てることへの責任感というか。“自分はこの仕事で生きていくんだ!”という決心をした瞬間、実感した瞬間でした」
──目標にしている人や憧れている俳優さんはいますか?
「特定の人はあまりいないです。それこそ私は小さいころから芸能の仕事をやらせていただいて、いろいろな方と接する機会が多くて。“こういう大人になりたい!”と思える方が本当にたくさんいるんです。だから、そのいいとこ取りをできたらなって思います」
──同世代で仲のいい俳優仲間は?
「吉川愛さん。単なる仕事仲間ではなくて、プライベートでもいちばん信頼している人です」
──共演を機に仲がよくなったのでしょうか。
「仕事もしましたし、同じシーンはなかったんですけど、同じ作品に出たこともありました。私が中学生のときに、愛ちゃんが事務所に入ってきて、そこからの付き合いです。お姉さんっぽいところもあれば、(実際には年上だが)同い年なんじゃないかなって思うところも、妹みたいなところもある。すごく不思議な関係です」
──演技や仕事の相談をすることもありますか?
「まったくしないです(笑)。仕事の話はあんまりしなくて、お互いの作品も見ないんですよ。なんだか恥ずかしくて……私のほうが恥ずかしくなっちゃって。“あ、いまはこういうこと(仕事)をやってるんだな~”っていうのを遠目で(笑)。刺激を受けることが多くて、私も頑張ろうって思います(笑)」
豊かな人間関係や環境づくりのために、ときには勇気を出すことも必要
──桜田さんと同世代の人たちはそろそろ社会に出るタイミングが近づいています。社会を生き抜く秘けつがありましたら教えてください。
「秘けつ……。参考になるかわからないですが、基本的に自分の周りにいる方は、尊敬できる方がすごく多いんです。自分が相手に対して尊敬するポイントだったり、憧れるなっていう部分を持つ人が周りにいることで、自分も刺激を受けて頑張ろうと思えますし、向上心が生まれるんです。マイナス方向に引っ張られることもないので、ネガティブな感情になることがなくなりました」
──周囲の人を含めて環境ですものね。
「自分はけっこう周りの環境に左右されるタイプだと思うんです。環境を整えるという意味では、いろいろな方とかかわっていくのももちろんすごく大事なことですが、その中で自分が、“この人とかかわりたい”って思う人に自分も向き合えたら、きっとすごくすてきな関係になれるんじゃないかなと思います」
──仕事に限らず、身近な人間関係にもいえそうですね。
「一緒にいてネガティブな感情になったりとか、自分が“ん?”って思う(違和感に感じる)ポイントがあるんだったら、いったん距離を置くとか、連絡手段を絶ってみるとか。そういうのをやらないと、きっと自分を取り巻く環境も変わっていかないので。そこは勇気を持ってパツパツって(これまでの関係を一度絶ってみて)、自分の環境を整備していくっていうのは大事なんじゃないかな」
──ズルズルと続けてしまう人が多いと思います。
「私もすごい悩んだ時期があって、一時期はもうほんとにすごくネガティブな感情になったときがあったんです。環境だったり、自分の気持ちだったりっていうのもあるんですけど、いったんすべてリセットしようと思って、LINEなどのSNSをすべて削除したときがありました」
──ええー!なかなか勇気が要りますね。
「自分がネガティブな感情になったとしても、自分のことを引っ張ってくれる、自分が尊敬できるポイントを持っている方だけを残して、あとは思い切って連絡を絶ちました。すごく勇気がいることだったし、周りからは冷たい人間だと思われるかもしれないって、勇気が出なかったんですけど。“いや、ここで変わんなきゃダメだ!”って思って、勇気を出して実行しました。そうしたら肩の荷が降りたというか……。そういうのもときには大事なんだなって思いました」
──なるほど、それが桜田さんの透明感につながっているのかもしれません。
「ほんとですか⁉(笑)」
──その勇気って、たとえば30代でも40代でも、年齢を重ねたからできるかっていうとそうではなくて。やっぱり決心した人だけ、勇気を出した人だけができることだと思うので、この言葉に響く人も多いと思います。
「ほんとですか。そうだとしたらよかったです!」
──もし仮にこのお仕事をされてなかったら、何をしてたと思いますか?
「看護師になってましたね。母が看護師だったので。その影響を受けてきっと私も目指していたんじゃないかなと思います。働く姿がカッコよかったんです」
──多忙な桜田さんを癒やす、愛しい人やモノ、コト。お気に入りのものは?
「4歳になる愛犬のアルクですね。もう愛おしくて愛おしくて(笑)。もう毎日癒やされてます」
──最後にドラマ『silent』をご覧のみなさんにメッセージをお願いします。
「今回、オリジナルストーリーということで、私もまだ結末がわかっていないので、みなさんと一緒に楽しんでいけたらいいなと思っています。紬と想、ふたりの行く末と、周囲がどう動いていくのかをぜひお楽しみに」
(取材・文/柚月裕実、編集/本間美帆)
【PROFILE】
桜田ひより(さくらだ・ひより) 2002年生まれ、千葉県出身。雑誌『Seventeen』(集英社)のミスセブンティーン2018に選出され、専属モデルとして活躍するほか、俳優としてもテレビドラマ『彼女、お借りします』(朝日放送テレビ)、映画『おそ松さん』、『東京喰種 トーキョーグール【S】』、『男はつらいよ お帰り 寅さん』に出演。劇場アニメ『薄暮』では主役・小山佐智役として声優としても活躍。1st写真集『ひより日和。』も好評発売中。12月17日には、自身初となるファンイベントを開催予定。
Instagram→@hiyori_sakurada…