「夢の島」といえば、昭和を生きたミドル世代には“埋め立て地”として記憶に残る。もとは飛行場の建設地として'39年から埋め立てが始まるも、戦争の影響により、'40年に開催予定だった「東京オリンピック」とともに中止となった歴史がある。
夢の島は常夏の島だった
そして“幻のオリンピック”から80年、'20年東京五輪・パラリンピックのアーチェリー競技会場に選ばれた夢の島。その世界が注目する熱~い舞台から目と鼻の先にあるのが、ビニールハウスのようなドーム型の建物が特徴的な「夢の島熱帯植物館」だ。
世間の懐が温かかったバブル時代に開館('88年)した、マリーナも近いことからデートスポットとしても人気を集めた熱帯植物館。そんなホットな時代を過ごしたミドル世代記者が、久々に熱帯植物館を直撃する!
北風と海風が交差して一層寒さで身が凍えそうな日、ぶるぶると震えながらドーム内に入ると、あ、暖か~い♪ そして、うるうるの湿度が乾燥お肌に浸透していく気分。
「世界の熱帯・亜熱帯地方の植物を展示しているため、大温室は冬でも20度~25度を保つように管理しています。正確な湿度の調整は行っていませんが、定期的に水まきをしているため現地に近い気候を再現しています」
とは、案内をしてくれた館長の高橋将さん。湿度計が示すのは65%。ムシムシするわけでもなく、上着を脱いでちょうど快適に感じるくらい。外気に比べれば極楽だ。
デカすぎる熱帯植物たち
3つのドームに分けられた館内において、まずは「木生シダと水辺の景観」がテーマのAドームを行く。植物の緑がパッと広がる原生林に、室内とは思えない滝が映える。非日常空間に気分が高まる。
順路をたどり、生い茂る草花の中でまず目についたのが、概念を覆す太すぎる竹。
「ゾウタケといって、主に東南アジアで栽培される世界でいちばん太い竹です。現地では直径30センチメートルになるものもあります」(高橋館長、以下同)
地域環境に応じて、やたらと巨大化する傾向があるのも熱帯植物の特徴のひとつ。
中央にヤシの木群が生えるBドームは、その名も「ヤシと人里の景観」。10階建てマンションに相当する、高さ約28メートルの天井に届くほどのヤシに、これ以上成長したらドームが……、と勝手に心配してしまう。またところどころでなるヤシの実がと心配が絶えないが、落ちるのは無人の場所なので大丈夫だそう。
そして「小笠原の植物とオウギバショウ」のCドームでは、扇を広げたような「オウギバショウ」に圧倒される。
東京都でありながら“秘境”とも呼ばれる小笠原諸島は、火山島であるため独自の進化を遂げた島。そこで育った貴重な植物の数々を堪能できるのも、同館ならでは。
もちろん、世界各地で咲く色とりどりの花や、珍しい形態の植物も見逃せない。各植物には、名前とともに説明書きも添えられているので、ただ見るだけでなく背景も知ることができる。
「“見ごろの花”も毎月ご紹介しています。1~2月はキンカチャという、ツバキ科の黄色い大きな花が咲きます。またバレンタインデーがあるので、“夢の島カカオ&チョコレート展”(2月4日~24日)と題して、生産地の様子やチョコレートができるまでの工程を展示で紹介します。もちろん、植物館にもカカオの実がなっていますよ」