「今はストレスフリー」と生き生きとした瞳で語る高知東生

目標は持たない。毎日を楽しむだけ

 このころから地元にいるのが嫌になり、東京に出てきた高知さん。田舎者だとナメられてはダメだ、と思ってディスコ通いを始め、“オシャレ”のつもりでドラッグに手を出しているグループと出会った。その内のひとりの女性と“男女の関係”になり、一緒にドラッグをやるうちに、衝動的に何度も使うようになってしまったという。高知さんがデビューしたのは'93年、28歳のときで、'96年に離婚を経験。その3年後には女優の高島礼子さんと再婚するも「もともと吸い始めたのはハタチくらいだった」と明かす。

「正直“いつでもやめられるだろう”という甘い考えでいました。芸能界に入ってからは、ほぼ使わない時期も長かったけれど、捕まる1年くらい前からストレスが増え、ドラッグに頼る頻度も高くなりました。そのころの自分に対して、どこかで“ヤバい、ヤバい、ヤバい”とは思っていた。だから、50歳を過ぎて逮捕されたときは“これで、ついにやめられる”と、ホッとしましたね」

 '16年6月、覚せい剤と大麻所持の容疑で逮捕され、同年8月には高島さんとの離婚を発表。翌月に懲役2年執行猶予4年の判決を受け、今年9月で執行猶予期間が終了する。すっかり足を洗った高知さんは、'19年2月に公益社団法人『ギャンブル依存症問題を考える会』の代表・田中紀子さんと出会って考え方に賛同し、『依存症予防教育アドバイザー』の資格を取得。今は自助グループで同じ悩みを持つ人たちと苦悩を分かち合ったり、全国で講演したりしながら、回復に努めている。

依存症に悩む人は何よりも、ひとりで苦しまないでほしい。抱え込まずに勇気を持って、経験のある人に頼ってほしいなと思う。僕自身、今は“考える会”の仲間たちの存在に、本当に助けられています。孤独だったころとはぜんぜん違うし、最近はストレスフリーですっごく楽。今の目標? 目標を持ちすぎると、達成できない苦しさが生まれそうで、また薬を始めてしまう恐怖があるから、持たないようにしているんです。毎日を楽しみ、小さなことに幸せを見つけています

 目標はないと言えど「自分が向き合ってきた家族とのこととか、逮捕された経験を、いかにして人の役に立てるかということに全力を尽くしたい。決して、それによって“許してくれ”とか“俺はこういうことをしてるんだ”ってアピールしているわけではないよ。でも、今の自分が最大限にできることは、これかなって」と語る。

 近年、問題になることも多い親子関係のこじれについては「俺の母親のように“育て方が分からない。でも、愛はあるんやけど”っていう人たちにも“サポート”が必要じゃないかなって思う。揚げ足をとって攻撃することよりも、手を差し伸べることが大事」と、高知さん。壮絶な経験をされた彼にしか語れないことが、今後もたくさん発信されていくだろう。

(取材・文/お笑いジャーナリスト・たかまつなな)


【INFORMATION】
たかまつななと高知東生さんの対談をYoutube『たかまつななチャンネル』内の動画で公開しています。リンクURL→https://youtu.be/eAExVKG0R3g