猫を診察した動物病院の医師は──

 70~80代の夫婦は、昨年11月半ばごろから立て続けに、「ちび」(生後半年ぐらい)、「くろ」(推定2歳)、「とら」(同)の3匹を看取った。

ちびが急にみどり色の液体を吐いたので、病院に連れて行ったら腎臓機能がダメになっていた。亡くなる寸前には痙攣して息を引き取った。見ていられなかった、同じ生き物として。朝、昼、晩のエサやりとトイレをやってあげていて、たいへんな老後になっちゃったと思っていたけれども、1週間ごとに3匹も火葬することになるなんて。ほかにも変死した猫がいるようだし、誰かに毒を盛られたなと思っている」(80代の夫)

 玄関先にはいつも5匹がエサを食べにきていたが、残る2匹も姿を見せなくなった。

「もう1匹もこないのよ。猫が嫌いな人もいるでしょうが、猫も犬も生きているんだから」(70代の妻)

 ちびが死ぬ前の晩、妻は同じ布団で抱いて寝たという。

 猫たちは何者かに毒物を盛られたのか。

 住民に運び込まれた猫を診察した動物病院の医師は、

「故意に毒入りのエサを食べさせられたかどうかは判断できない」

 としながらも、腎臓の数値は異常だったと話す。

「測定機械が想定する数値を超えていましたからね。猫は腎臓の弱い動物で、機能悪化は死に直結しうる。また徐々に悪くなってゆくケースは見たり触診してわかりますが、そうでもなかった。いわゆる急性腎不全です」(同医師)

げんの腎臓の数値は「140.0以上」と赤字で測定上限値の突破が示されて

 複数の住民が別々の病院で診察を受けている。いずれも腎臓の状態を示す尿素窒素の値が基準値を大きく上回り、基準上限の4倍以上にあたる計測不能値が出たケースもある。どうすれば、これほど悪化することが考えられるのか。

「例えばオス猫はおしっこが詰まって急に腎臓に負担がかかることがある。しかし、この場合は見てわかります。ほかにエチレングリコール(※ジェル状の保冷剤などに使われる)や果物のブドウを食べたときなども腎臓に負担がかかることがあります。今回は、似たケースが何件かあるようですから、間違えてブドウを与え続けてしまったというのはちょっと考えづらいのではないか」(同)

 毒物を摂取して死亡したかどうかは、解剖した上で、人間でいうところの科学捜査研究所(科捜研)のような専門機関に分析をゆだねるしかなく、数十万円の費用がかかる見込みという。

 住民らは猫の連続不審死について、地元警察に情報提供している。ただ、猫が食べ残した毒入りのエサや目撃証人などは見つかっておらず、なぜ、死んだのかはっきりしない。状況をみれば、きわめて短期間に限定された地域で集中して不審死が発生しているのは確かだ。