'04年にプリキュアシリーズが放映開始
強く美しい女性ヒーロー・セーラームーンの成功のあと、「戦う魔法少女」はいくつか誕生していた。『魔法騎士レイアース』『カードキャプターさくら』などが、その代表例だ。当時はあくまで“魔法を使って、相手に触れることなくやっつける”のが主流だった。
'04年、プリキュアシリーズの1作目『ふたりはプリキュア』が放送される。『おジャ魔女どれみ』というヒット作を生み、『明日のナージャ』で軽くコケた東映アニメーションによるオリジナルアニメだ。
『ふたりはプリキュア』では、運動神経が抜群で勝気な美墨なぎさと、頭脳明晰なお嬢様の雪城ほのかが、伝説の戦士と呼ばれる「プリキュア」に変身して、悪の組織「ドツクゾーン」を倒していく。
コンセプトは「女の子だって暴れたい!」。ディレクターを務めたのは『ドラゴンボール』を成功に導いたアニメ監督の西尾大介氏だ 。この背景を見ればわかる通り、プリキュアの戦いは主に肉弾戦。可愛い顔して、格闘技イベント『PRIDE』の出場選手並みの武闘派なのである。
では、『セーラームーン』と何が変わったのか。両者の1話で比較してみよう。
主人公の月野うさぎは、ある日、人の言葉を話す黒猫のルナと出会い「あなたはセーラームーンよ。敵が現れたから倒してほしい」と、ホント急なお願いをされる。ちょっとあまりに唐突すぎる。
「いやいや、なんのこっちゃ」と思いつつ、うさぎは同級生が襲われているところにやってきて戦うわけだが、当然うまくはいかず苦戦する。
すると、一輪のバラが投げられ、おなじみタキシード仮面が登場。簡単に自己紹介して「泣いているばかりではダメだ」と、うさぎを励ます。いや、まったく実用的でない。「おい。お前はいったい何をしにきたんだ」とツッコみたくなる。
「そんなこと言ったって」とさらに泣くウサギ。あまりの絶叫に怯(ひる)む敵。黒猫のルナは「ティアラをとって“ムーン・ティアラ・アクション”と叫んで、投げて!」と、船場吉兆のささやき女将ばりに具体的な指示を出す。うさぎはマニュアル通りに動き、無事に敵を倒すことに成功する。