元荒川流域の被害を食い止める
非常時とは洪水を指す。
そもそもこの一帯は、元荒川や利根川、江戸川といった大きな河川に近い平地で、皿のように水がたまりやすい地形らしい。
《元荒川流域は、かつて田畑の広がる穀倉地帯でしたが、昭和30(1955)年以降は下流域より開発が進みました。このため、遊水、保水機能を果たす田畑が減少し、降った雨は一気に川へ集まるようになりました》(埼玉県発行のパンフレット「元荒川大相模調節池」より。カッコ内は加筆)
周囲の川が増水すれば氾濫(はんらん)する危険性は増す。高度経済成長期に都心へのアクセスのよさからベッドタウン化が進んだ反面、洪水や浸水被害から住民の生命・財産を守る機能が必要になった。
その機能こそが調節池。
「水かさの増した元荒川から一時的に水を調節池に流し込んで溜め、危険性がなくなってから川に戻す仕組みです。池周辺の遊歩道などは一部水没してでも元荒川流域の被害を食い止めるのに役立ちます」(県政関係者)
平時の水深は約1〜1・5メートルで休日ともなればボートやカヌー、小型ヨットのディンギーも楽しめるが、非常時は水深3・5メートルまで貯水する能力を持つ。2015年9月の豪雨災害ではその機能を発揮し、レイクタウン周辺では浸水被害が確認されなかったという。