池ならポンドタウンのはず

 さて、湖と池はどう定義されているのか。

 環境省の資料「人工湖沼の湖沼類型指定について」によると、厳密には区別されておらず、一般的に水深5〜10メートル以上のものを湖と呼び、水深5メートル未満ならば池になる。底が泥地だと沼になるが、この調節池は人工物なので沼ではない。

 大きさの分類では池に該当するため調節池の命名は的を得ており、むしろレイクタウンの名前に背伸びを感じる。

 和英辞典を引くと池は英語で「pond(ポンド)」とあるからポンドタウンでもよかったはず。

 なぜ名称に食い違いが発生したのか。

 越谷市に聞いた。

国が治水対策の調節池と新市街地整備を一体的に行う『レイクタウン事業』に県とともに手を挙げ、昭和63(1988)年に第1号として越谷レイクタウン地区が採択されたのが始まりです。当時の建設省(現・国土交通省)は『リブレーヌ(フランス語で水辺に住む人々の意)都市構想』を進めており、いまのレイクタウン一帯は浸水被害が生じている場所だったため治水対策が求められていたんです。区画整理事業が終わったとき正式に町名もレイクタウンに改めました」(市都市整備部都市計画課)

 つまり、越谷市が「レイクだ」と言い張って命名したわけではなく、もともとレイクタウン事業なる呼称があったということ。ならば、あとで名前をつけた調節池はどういった理由からか。町名に合わせて「調節湖」にしてもよかったのではないか。

「大相模調節池の名前の由来は、ひとつはこのエリアを市内13分割したときに大相模地区と呼んでいるためです。さらに治水機能を持ったいわゆる調節池は、大きさにかかわらず池と呼んでいるためそれに倣(なら)いました」(同課)

 実際、調節湖の名称を持つものは見当たらない。同県戸田市には「彩湖」と呼ばれる大きな貯水池があるが、彩湖を含めた治水機能を持つ一帯の正式名称は「荒川第一調節池」となっている。調節池は一般呼称と言っていい。

 米国には五輪開催地のソルトレイクシティやレイクプラシッドなど湖に由来した地名がある。そうした知名度から、ポンドタウンよりレイクタウンのほうが意味がわかりやすいとの見方もできる。

 ほかに公園で話を聞いた人は「池」「湖」「レイク」などと略して呼んでいるといい、名称にこだわりを持つ人は見つからなかった。

夜の調節池には虫の鳴き声が

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する。ウェブ版の『週刊女性PRIME』『fumufumu news』でも記事を担当