喜ぶだろうという気持ちから

「『偽物』は人をだまして儲(もう)けてやろうというものですが、私が『いんちき』と呼ぶものは違います。多少は儲けようという気持ちもありながら、人気のあるキャラクターにさらに付加価値をつけて、もっと子どもを喜ばせたい気持ちが伝わってくるもののことですね」

 本物ではないけれど、サービス精神にあふれているものが「いんちき」。中国では、人気が出たキャラクターのおもちゃは、最初は「偽物」が出回り、やがていんちきなものが増えていく。機関車が合体変形して巨大ロボットになったり、ネコ型ロボットがMARVELヒーローと夢のコラボをしたり……。「いんちきおもちゃ」シリーズではそんな自由気ままな世界を堪能することができる。しかし、見る人によっては複雑な思いもあるようだ。

「最初の本が中国で出版されたときに現地の方から『俺が子どものころに大切にしていたあのおもちゃはいんちきだったんだ……』という感想を多くもらいました。『どえらいモン大図鑑』では日本の古いものもいろいろ紹介しているのですが、同じような反応をもらっています」

 子どものころに大事にしていたおもちゃは本物ではなかった……しかし、その裏には作り手、そして買い与えてくれた大人たちの愛が詰まっている。しみじみする話ではないか。

 近年は中国でも版権意識が高まり、正規商品の流通が増えてきているそう。では「いんちき文化」はなくなっていくのだろうか?

「今でも地方に行けば、街中に1軒だけある、1年に1回しか品ぞろえが変わらないような雑貨屋さんでしか正規のおもちゃを買えないことが多くあります。それに、中国はありとあらゆる国に輸出をしています。世界のすべての国が豊かになるか、世界中で版権がフリーにならない限り、無版権のものはなくならないでしょう」

 ピッカピカの本物ではないけれど、驚きとともにどこか懐かしさも感じさせてくれるいんちきおもちゃの世界。知れば知るほど、あのメガネの少年がネコ型ロボットを呼ぶときのように「どえらいモ〜ン!」と叫びたくなるはず!

 次は『どえらいモン大図鑑』で紹介されている“どえらいモン”を少し紹介します。