さまざまな“平成グッズ”が再ブームに!

 いま現在、『たまごっち』や『ルーズソックス』以外にも、平成に流行ったものの再ブームの機運が高まっているそう。

平成に流行ったものの再ブームの傾向はほかにもあります。例えば、昭和の終わりに誕生した『写ルンです』や、平成でも使われ続けたカセットテープそれらが今になって再注目されているところからも、何もかもが便利になりすぎた結果、少し手間をかける行動が新鮮な体験になっているのでは、と感じています。リバイバルしているものには、不便なものが多いんですよ。でも、平成のブームって、再ブームが次から次へと起きるかと言うと、それは難しい理由があるんです」

ファッションにも独自のセンスが光る 撮影:渡邉智裕

 山下さんによると、平成に世間を席捲(せっけん)したブームのなかには、サービス自体が終了しているものが多いという。

「昭和の黒電話はまだ使えるのですが、ドコモのiモード公式サイトはサービスが終わっているんです。ポケベルもそうですが、サービス終了とともに使えなくなると、リバイバルしづらい。平成時代に流行った小説投稿サイト『魔法のiランド』や、シミュレーションゲーム『サンシャイン牧場』なども、サービスが終了して見られなくなっています。ネット上のサービスは、サーバーが止まったら終わり。ネットワークを介して、同時につながらないと得られない体験は貴重でした」

 だが、山下さんは「平成そのものがなくなっていくわけではない」と語る。

「文化は地続きなので、“令和になったので平成のものは廃棄して、すべて一新します”ということは起こらないんです。ただ、例えば、サブスクリプションなどの普及で、CDを聴かない人が増えてきたという変化はあります。CDも徐々にレトロ化しているのです。このCD保護マット(以下の画像参照)は、CDケースのなかに入れ、CDの下に敷いてディスクを保護するものでした。かつてCDショップでは、店舗ごとのロゴが入ったマットが用意されており、アルバムを買うと無料でつけてくれたものです」

店舗ごとの個性も出る。色とりどりのCD保護マット 撮影:渡邉智裕 

 まさにサブスク世代にはなじみがないCD保護マット。このCD保護マットにも、彼ならではのこだわりのエピソードがひそんでいた。

「私は、小学校のころCHAGE and ASKA(チャゲアス)が好きでした。チャゲアスの次のアルバムが『RED HILLL』だから、赤のCD保護マットをもらおうとか、そういうふうにCD保護マットをもらうのを楽しんでいたんです。そして1993年、チャゲアスの『YAH YAH YAH』と、当時人気があったWANDSの『時の扉』が同じ日に発売されることに。しかも、WANDSは普通に1000円なのに、チャゲアスは1200円。チャゲアスは両A面扱いで3曲入りだったので、ちょっと高かったんですよ(笑)。

 そこで当時、小学校から帰ると、すぐに近所のCDショップに行って、WANDSかチャゲアスかで悩んでいる友達がいたら、“200円あげるから、チャゲアスにしな”って、ひとりで“チャゲアスを買いなキャンペーン”をしていたんです。そのおかげで、チャゲアスがオリコンチャートで1位になりました。私の行動が実を結びました(笑)

 山下さんは、CD保護マットひとつとっても、各人の歴史や思い入れがあるという。

「'90年代は、みんながCDを買っていたのでミリオンヒットが連発された時代でした。CD保護マットにはCDショップの店名がプリントされているので、近所に住んでいる人にとっては、CD保護マットを見れば思い出が浮かぶんです。同窓会でも、その当時に流行った音楽の話題になりますよね。CDショップのことを思い出すのに、CD保護マットがトリガーになるんです」