平成は現代人にとって“ほどよい懐かしさ”を感じられる時代

 また、『ミニモニ。』などのアイドルの人形は、最近ではあまり見かけない。平成時代には女子高生の間であるブームがあったという。

「タレントの人形自体は、平成に流行っていないですが、天童よしみさんの『よしみちゃん人形』は魔除けになるとうわさになって、女子高生の間で大人気になりました」

こちらは山田邦子(左)と、井森美幸(右)のグッズ。タレントショップは'90年代にブームとなった 撮影:渡邉智裕
平成に活躍したオタク評論家の宅八郎さんもキャラクター人形に 撮影:渡邉智裕

 ほかに、平成ですたれた文化といえば、携帯電話の改造アンテナ。ガラケーに着けるストラップも流行った。

「改造アンテナは、携帯電話が小型化していったころに登場しました。お値段もそこそこするのですが、一部で人気に。自家用車にネオンや光るナンバープレートをつけて個性を演出する感覚に近かったと思います」

90年代後半に登場した携帯電話の改造アンテナ 撮影:渡邉智裕

 山下さんが思う、テレビ番組や音楽などで平成を代表するものは何か聞いてみると……。

「平成の始まりを象徴する番組と考えたら、『平成名物TVいかすバンド天国』(TBS系)でしょうか。あとは、ダウンタウンやウッチャンナンチャンらが出演していた『夢で逢えたら』(フジテレビ系)。これは、昭和が終わる少し前に始まっています。

 平成全体は30年近くあるので、なかなか選べないですよね。でも、私のなかで平成を代表する曲といえば、おやじGALSの『ランバダ音頭』ですね。いや、平成を代表するアーティストが、オヤジGALS(『ソルマック』のCMソングなどを歌っていた女性3人組)で、曲はMOMOの『ポケベルNightは5643#(ゴウロクヨンサン)』です」

 さきほど見せていただいたポケベルの暗号本にもいろいろとありましたが、曲のタイトルにある《5、6、4……殺し……?》

「難しいんですけれど、“ゴム持参”って読むんです。ポケベルの暗号でごまかしていますが、、実態は、お色気ソングです」

中尊寺ゆつこ先生の漫画『オヤジギャル』のフィギュア。オヤジギャルという言葉は、1990年の『新語・流行語大賞新語部門』銅賞を受賞した 撮影:渡邉智裕
こんな面白グッズも! こちらは、グラスをセットすると釈由美子さんがお酌をしてくれる『お酌パラダイス 釈お酌』。2002年6月、玩具メーカーのバンダイから発売され話題を呼んだ 撮影:渡邉智裕

 若者にとって、“懐かしさ”が平成の魅力だと山下さんは言う。

「平成って、比較対象が昭和しかない。昭和か平成しかない。そうなると、重厚長大な昭和に対して、平成はちょっと軽佻浮薄(けいちょうふはく)な感じががありますね。でも、若い人にとって、遠すぎる昭和は理解できなくても、近い存在である平成には、身近で懐かしい感じがするそうです。平成は現代からみて、ほどよい距離感の時代なのかと思います。ちょうどよい懐かしさがあるんですね

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
山下メロ ◎ファンシー絵みやげ研究家・平成文化研究家。『平成レトロ』を提唱し、平成元年(バブル期)から平成初期にかけての風俗や文化の分析及び保存を行う。また、1980年代から1990年代に日本各地で売られていた子ども向けの土産品を『ファンシー絵みやげ』と名づけ、全国の観光地で保護活動を行っている。保護したファンシー絵みやげは21000種におよぶ。著書に『ファンシー絵みやげ大百科 忘れられたバブル時代の観光地みやげ』(イースト・プレス刊)がある。Twitter→@inchorin