「認知的不調和」を利用する!
そのいじめっ子の頭のなかで、いったい何が起こったのでしょう?
それは、「いじめっ子である自分」と「お父さんから息子を守るように頼まれた自分」との間に不一致が生じてしまい、その結果、「いじめっ子である自分」のほうが封じ込められたのです。
脳科学では、このような現象を「認知的不調和」と呼びます。
人は、「自分で認知している自分」と「自分が認知している自分と矛盾する自分」の両方を抱えると不快になって、どちらかを解消しようとするものなのです。
脳科学者の中野信子さんの本には、この「認知的不調和」を利用して「自分に嫌がらせをしてくる相手」を、「自分の味方」に変える方法が載っています。
それは、次のような方法です。
「自分に嫌がらせをしてくる相手に、直接、その嫌がらせの内容についてのアドバイスを求める」
最初に例に出した、「会議で自分が提出した提案」についてイチャモンをつけてくる上司がいたら、会議のあとで、その上司に対して、こう言えばよいのです。
「さっきの会議で私が出した提案について、ぜひ、アドバイスをいただけないでしょうか?」
これで、もし、何かしらのアドバイスがもらえたら、しめたもの。
その上司の脳では、「自分のアドバイスが役に立つことを期待する」「自分が授(さず)けた知恵を正解にしたい」という心理が働くために、あなたに嫌がらせをするモチベーションが下がってしまい、逆に味方になってくれるのです。
相手の脳を揺さぶって、嫌がらせをしてくる相手を味方に変える魔法のひと言、「その件で、ぜひ、アドバイスをいただけませんか?」。ぜひ、活用してみてください。
(文/西沢泰生)
参考:『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(中野信子著/アスコム刊)