批判する人は、自分を客観視してほしい

 人気が出ると、批判されることも増える。

「“お笑いのこと何も知らないくせに”って言われたことがあります。私も学生のころから長いあいだ、劇場で漫才を見続けているんですけどね。2021年の春に出した同人小説『無冠の休日』は、30歳の社会人が解散したはずのお笑いコンビに引き合わされるというストーリーですが、私のことを“お笑いを何も知らない”と誤解している人への返答としても読める内容にしました

 だが、批判する人のほとんどは、実際には手条さんの著作を読んでいないので、伝わらないこともある。

「SNSで私を批判する投稿を見つけたら、ご自身の発言を客観視してほしくて、無言でリツイートをしています。ただ、反対意見を持つ方々がなぜそう感じるのか知りたいので、その方が評論を書いているなら読みたいなって気持ちもあります」

 自分の評論に対する反応を、できる限り受け止めたいと考えている。

同人誌でなく商業出版で『平成男子論 僕のエッジと君の自意識。』を出したときもさまざまな意見が届いた 撮影/北村史成

目に見えないものを読解する面白さ

 反対に、モチベーションを上げてくれるのは、手条さんの評論を好きだと言ってくれる読者の存在だ。

「昔からの読者さんが、コロナ禍でイベントが開かれなくなったあとも通販で購入してくださっていて。ありがたいです」

 初期のころからの読者、本を出すごとに増える新しい読者……読者層が広がったため、評論を書くときの意識も変化した。

私は、目に見えないものを考察するのが好きです。前は読者さんにもそれを期待しながら書いていました。

 でも今は、本のテーマ、例えば“お笑い”には興味があるけど、評論は読んだことがない、という人も通販で私の本を買ってくれます。読みながら、“自分が評論を読んだことがないから難しく感じるんだ”って、疎外感を抱いてほしくない。そのために、補足が必要なところは入れて以前より、わかりやすくしています。評論との向き合い方が変わりました