ラジオやイベント出演のオファーが来ることも
現在、手条さんは会社員の仕事を続けながら、ときどきメディアに出演している。手条さんの著書の一部は書店にも置かれているので、それを機に依頼を受け、ライター向け講座の講師をしたこともあった。
「同人誌の出し方についてお話しました。まずは印刷所を予約して締め切りを決めて、あと戻りできないようにします、とか(笑)。それをきっかけに同人誌を出した方もいます」
最近の活動は多岐に渡る。
「この間、2021年のM-1グランプリを総括するコラムの執筆依頼をいただきました。依頼者の方も通販で私の本を買って読んで、興味を持ってくださったようです」
Webでの公開後、その記事は一時期、Twitterのトレンドにも入った。生で漫才を見続けてきたからこそ出せる熱量と、評論作家ならではの冷静な視点が同時に感じられる内容だった。
「この記事をきっかけにフォロワーが増えて、お笑い評論の注文が増えました」
今後は今回のような媒体での執筆業や、イベントの仕事にも力を入れていきたい、と手条さんは話す。
「硬派と軟派の二刀流」
2021年末、手条さんは新刊として同人評論誌『お笑い芸人のワーキャーファンが何も考えてないと思った?』を出した。ピンクが基調のカラフルな表紙に、キャッチ―なタイトル。見た目とは裏腹に、内容は批評性に富んでいる。
「読者の方に、“手条さんの評論は、硬派と軟派の二刀流ですね”って言われたことがあるんです。ハッとしました。私の評論を表すなら、その言葉がぴったりです」
お笑い関係で、してみたいこともある。
「漫才のネタ作家になりたいと考えていた時期があって。ネタは難しくても、いつかお笑いライブの構成を作ってみたいですね」
評論に対しても、もっとスキルを上げたいという気持ちがある。そのための方法として手条さんは「ほかの作家の評論や小説を読んで知見を得ること」を挙げる。
「ほかの方の評論やエッセイ、小説もたくさん読んで、SNSなどで感想を書きたい。そうやってインプットとアウトプットを繰り返していくことは、自分が評論を書くうえでも学びになります」
普段の仕事が忙しくても、コロナ禍でイベントが中止になっても、「それはやりたいことを諦める理由にならない」と手条さんは話す。
地道な努力が形になり、それが新たな未来につながる。手条萌さんは、令和の新しい生き方を象徴する存在になるのかもしれない。
(取材・文/若林理央)