命がけのドッジボール
ゲームルールはいたってシンプル。ボールを投げてぶつけられるとアウト、キャッチすればセーフというルールです。
ただし、一点だけ実際のドッジボールと異なる点があります。アウトになるのは体力がゼロになったときで、アウトとなった選手は昇天して天使になるのです。
そう、くにおくんのドッジボールは命がけなのです。
放つシュートも「貫通シュート」や「ナッツシュート」という超強力な必殺シュートです。ヒットした選手はふっとばされ地球を一周してコートに戻ってきて昇天していきます。昇天した選手がコートに戻ることはありません……。
これこそが硬派のドッジボール。
くにおくんは相変わらずリーゼントだし、出てくる選手も高校生とは思えない強面(こわもて)ぞろい。
殺人シュートが乱れ飛び、負けたチームのコートには生存者がゼロになる。放課後の校庭ではルール無用の殺し合いがはじまり、リセットボタンを押すとゲームがプレイヤーに「なめんなよ!」と因縁をつけてくる。
どう考えても不良のケンカゲームではありますが、ドッジボールに関しては完全にルールに則っている。スポーツと硬派の両立ができることを証明したゲームなのです。
ルールを守って硬派を貫く
くにおくんのこの姿勢から、理不尽な現代社会を生き抜く処世術を学ぶことができるのです。
くにおくんは、ルールを守ったうえで硬派を貫いているのです。
途方もない量の仕事を要求されて残業になったら? 理不尽な残業をして残業手当をがっちり要求すればいいのです。
作成した資料に対して何度も何度も必要性を感じない修正指示を受けたら? 徹底的に修正して修正指示まで明記した資料を作ってたたきつければいいのです。
進めていた案件が理由もなく中止扱いになったら? 進めたときの承認メールと中止指示のときのメールを張りつけて関係者に共有してやればいいのです。
そう、仕事のルールを守って硬派を貫くことできっと活路は開けます。ルール破りはあなたに有利な状況を生んではくれません。ルール内であれば、思いっきり暴れても文句を言われる筋合いはないのです。
硬派を貫けば、回りは「この人はヤバイ、硬派なやつだぞ……」とビビりはじめます。仕事に取り組むからといって物腰を柔らかくする必要はないのです。ときには、くにおくんのように硬派を貫くことで解決することもあるのです。
もうわかりましたね。反撃の返信メールの1行目は「なめんなよ!」でいきましょう。
(文/野中大三)
《PROFILE》
ゲームとプロレスをこよなく愛するコラムニスト兼ドット絵師。電子玩具開発を経て、株式会社カプコンでテレビゲームのプロデューサーを務め、オリジナルタイトルや人気シリーズタイトルのプロデュースを手がける。現在も電子ゲームの開発に携わっている。35年にのぼるプロレス観戦歴とゲームプレイ歴の経験から日本最大のプロレス団体、新日本プロレスオフィシャルサイトでコラム「ゲーム的プロレス論」を連載中。プロレスラーをドットで表現する「dotswrestler」をTwitterで公開中。