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人生100年時代。今や日本人のおよそ半分は50歳以上です。「NEOFIFTY」では、これから50代を迎える人にとって、その先にある老後が「終活の始まり」ではなく「新しい人生がもう一度始まる」と思えるように、素敵な生き方をしている人たちの言葉を紹介していきます。

NEOFIFTY -新50代の生き方-

パラ開会式の演出家・ウォーリー木下が新作舞台で問う「人生の最後への向き合い方」

SNSでの感想
ウォーリー木下さん
目次
  • 意識はあるけれど身体を動かせない主人公
  • VR版よりも現実に近いものになっていると思う
  • 「東京2020パラリンピック」開会式の演出を経験して
  • 演劇に惹かれた一番の理由
  • 人は誰しも突然、真っ暗な世界に行くことがありうる

「WE HAVE WINGS(私たちには翼がある)」をテーマに、片翼の少女の物語を描いた昨年の「東京2020パラリンピック」開会式。その感動的なパフォーマンスを演出したことで広く知られることとなった演出家・ウォーリー木下さん。自身がプロデュースする、言葉を使わないノンバーバルパフォーマンス集団「THE ORIGINAL TEMPO」がエジンバラ演劇祭にて最高峰の五つ星を獲得するなど海外でも高く評価を得ている。手がける作品は、ストレートプレイ、ミュージカル、2.5次元舞台、コンサートと多岐にわたり、共通して豊かで緻密な人物描写と巧みな表現力が魅力だ。

 2月17日から、原案と演出を手がける舞台『僕はまだ死んでない』が上演されている。もし、自分の大事な家族が、友人が、最愛の人が、あるいは自分が、生死の境をさまよう事態になったら……? 終わりの瞬間を見つめる主人公と彼を取りまく人々、それぞれに湧き起こる想いをリアルに感じさせる人間ドラマに期待が高まる。

 いま最も注目される戯曲家・演出家に、コロナ禍で挑む意欲作について、50代を迎えての心境の変化、今後の作品で手がけたいテーマ、人生で大切にしている思い……などを語っていただきました。

意識はあるけれど身体を動かせない主人公

──今回、“人生の最後について向き合う”というテーマを選ばれた理由を教えていただけますでしょうか?

いくつかあるのですが、まず、ひとつは昨年2月にこの作品が“VR演劇”として誕生しまして。そのときに舞台の中心にカメラを置いて、周りを役者さんが取り囲むようなつくりになるということで、真ん中にいる人物を誰にしようかと考えた中で、意識はあるけれど身体を動かせない人物にすることにしました。

 それが始まりなのですが、同時にその当時は新型コロナウイルス感染拡大の真っただ中で、まだ今後どうなるか本当に不透明なときで。たくさんの方が亡くなっていく中、僕は直接的に自分の隣に死が迫っているというよりは、ただ毎日、ニュースで死亡者の数だけがカウントアップされていくみたいな世界観の中で生きていて。“僕らは今後どうやって生きていったらいいんだろう”って思ったときに、やっぱりそれは、同時に“どうやって死ぬことを自分でコントロールしたらいいんだろう”ってことにもつながるなということも思っていて。日本においてまだあまり議論がされていない終末期医療に関して、勉強したいなという思いがあったことが大きいです。カメラマンの幡野広志さん(※1)という方の闘病手記を読んだり、いろいろな映画を観たりしました」

(※1)編集部注:2017年、34歳のとき血液がんの一種である多発性骨髄腫を発症し、余命宣告を受けている。

──今作でウォーリーさんが一番伝えたいこととは?

「基本、伝えたいことはないんですけど(笑)。見に来たお客さん、その人が普段何を考えているかによって、全く感じるところや見えてくる部分が違う作品になってくるので、それぞれの方が感じることが正解だと思います。もっと言えば、そのとき他の人が感じていることが嘘なわけじゃなくて、全員が全員、別々の答えを持って進んでいくってことも、ひとつのテーマだなと思うので。何か一個の確固とした結論を出すような話ではないので、自由に受け止めてもらえるといいなと思っています」

舞台『僕はまだ死んでない』 撮影/岡千里

──脚本を読ませていただいて、安楽死の問題についてのシーンが、シリアスな状況なのに交わされる会話の端々に、親しい間柄、身近な存在ならではのユーモアや可笑(おか)しみが入り混じっていて印象に残りました。

「稽古場で役者さんたちと作りながら、実際にいろいろ議論しているんですね。そこが楽しいというか。安楽死のことってどうしても触れづらい部分じゃないですか。でも実はオープンに話していったほうが答えに近づける気がするので、そういう作る過程も含めて、とても有意義だなと思っています

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