本番での会話はすべてアドリブ!

 ウルトラクイズの旅から帰ったあと、私はよく周りの人から、こんな質問をされました。

「ウルトラクイズって、台本はあったの?」

 結論から言えば、チャレンジャー側には、台本はいっさいありませんでした

 もちろん司会の福留さんは、チェックポイントごとに、オープニングトークなどの台本をご自身で書いていて、チャレンジャー1人ひとりへの質問なども考えておられました。

 しかし、福留さんからの質問に対する回答は、すべてチャレンジャーのアドリブに任されていたのです。

 もちろん、敗者が決まったあとの、福留さんと敗者とのやりとりもすべて、その場の「素」の会話。

 ついでに言えば、放送最終週の最後に、優勝者と私がスタジオでインタビュー受けたときも、楽屋で渡された台本の「受け答え」の部分には何も書かれていませんでした

 スタッフからは、「質問されたら、思ったことを言ってもらっていいですから」とか言われたのを覚えています。

 最後に、もうひとつ裏話。

 ウルトラクイズでは、時おりクイズの勝者が、敗者が決まったときに「○○さんと別れるのがツラい」と涙を流す場面があります。

 実は、あの涙には、理由がありました。

 クイズの収録が終わったあと、敗者と勝者は、いっさい会話することなく、お別れをしなくてはならなかったからです。

 前述のように、敗者はそのまま福留さんのインタビューを受け、勝ち抜いたチャレンジャーたちはそれを黙って見守ります。そして、カメラが止まると、勝者はそのまま移動用のバスへと戻り、敗者はそのまま罰ゲームへと突入する。

 つまり、敗者と勝者は、会話が許されない。

 せいぜい、バスへと向かいながら大声で「日本で会おうーーっ!」なんて叫ぶくらい。

 ついさっきまで仲間として一緒に旅をしていたのに、もう、バスの中に敗者の姿はないという寂しさ……。

 それは、「一緒に旅をする仲間」が、そのまま「クイズでニューヨーク行きを争うライバル」でもあるという、ウルトラクイズの醍醐味のひとつでもあったのです。

(文/西沢泰生)