悩みの連続だけれど、“やるんだよ!”精神で乗り越えたい

──漫画家とアイドルという珍しい夫婦なので、生活スタイルも一般的な家庭とは違うのではないですか?

「アイドルの仕事は定時ではないので、赤ちゃんがいる環境って難しいなって感じています。深夜までの仕事があった場合、どうしたらいいのだろうっていうのが、今は心配ごとのひとつですね」

──5、10年後の未鈴さんの未来像、どうなっていると思いますか?

「たぶん5、10年後も悩んでいると思うんです。でんぱ組.incを続けてまだ舞台に立っているかもしれないし、もしかしたら育児一筋になって、お母さんとして息子を連れてライブを見に行っているかもしれない。まだその答えが出ないですね。ただ、どれを選んでもプラスになるとは思っています」

──結婚や出産など、新しいアイドルの道筋を未鈴さんが作っている部分があると思いますが。

「アイドルが結婚・出産しても、アイドルを続けるのが普通みたいな。本人が辞めたくないのなら続けられるという環境がスタンダードになったらうれしい。そういう道を少しでも作れたら、アイドルをやってきた甲斐(かい)はあるのかなと思います」

──「一生アイドルでいたい」と公言されていますが、その気持ちに変わりはないですか?

「これまでは一生アイドルでいたいと思っていたんですけれど、子どもが生まれてガラっと変わったんです。もちろん、アイドル以外の職業に就く気はないですが、私がアイドルを続けていたら、この子はやりたいこととかできるのかなって、そういうことを考え出しちゃうんですよ」

──具体的になにか、不安なこともあったりされますか?

「仕事を続けていたら、習いごとのお迎えとか、できるかなとか(笑)。自分の親が自分にしてくれたのと同じようなことができるのかとか、考えちゃいます。自分のことばかりで、子どものことがおろそかになってしまわないかなって心配になるんです。一生アイドルでやっていきますって、思っている反面、そう言い続けるのがいいのか、わからなくなったんですよ。本当、悩みが多くなりましたね

「でも、もがきながらも前に進んでいきたい」と語気を強める 撮影:山田智絵

──大変ですよね。ただ、周りから見たら、出産もされて順風満帆に見える部分もありますよ。

「今までは、アイドルで売れるってことだけを考えてきた。だから突っ走ってこれたんです。でも、自分にとって大切なものが増えるほど、悩みって増えるんだなって。私は何か生きる糧がないと生きていけないタイプで、その中のひとつが、“でんぱ組.incとして絶対に売れる”ってことだった。目標があったからこそ、生きてこられたんだなって思います。

 でも、出産をしてフェーズが変わってきたので、目標がぶれてきた。何を軸にしてやっていけばよいのだろうって、また悩んでいる時期ですね。ただ、悩みながらも少しずつ決断して、やっていくしかない。何が正解かわからないけれど、“でも、やるんだよ!”の精神でなんとか乗り越えられそうかな、と思う自分もいます

──子育てが落ちつかれたら、またアイドルを頑張りたいフェーズに戻るかもしれませんよ。

「本当ですか? そう考えたりもするんですけれど、“はたして数年後、数十年後に、私はまだアイドルとしてやっていけるのだろうか”みたいに思ったりもするんですよ。今まで、年齢なんて関係ないって言っていたけれど、その壁に、初めてぶち当たった瞬間ですね(笑)」

──未鈴さんがいちばん納得できる道を選べますように。最後に、古川未鈴のイメージカラーである赤について、思い入れはありますか?

昔から何を選ぶにも、赤を選んでいたんですよ。新体操をやっていたんですけれど、道具のボールやフープを選ぶときも、赤色のものを選んでいました。でんぱ組.incを結成したときに、好きな色をとっていいって言われて、ほかに誰も赤がいなかったので、“じゃあ、赤で”と挙手しました

──もしも未鈴さんが卒業されたら、イメージカラーの赤は継承するか、欠番するのか……。

「いや~。どうしますかね。ねむさん(夢眠ねむ・でんぱ組.inc元メンバー)がね、イメージカラーのミントグリーンを、ねもちゃん(根本凪・現メンバー)に継承したんですよね。でも、赤は自分だけのものにしておきたい気もしつつ(笑)」

未鈴さんとでんぱ組.incにますます輝かしい未来が待っていますように! 撮影:山田智絵
◇    ◇    ◇

 未鈴さんを撮影中、周りのスタッフから“可愛い!”という声が漏れた。いるだけで周りを明るくし、元気づける存在。結婚や出産も魅力のひとつと思える、新しいアイドル像を見た気がした。

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
古川未鈴(ふるかわ・みりん) ◎香川県出身、165センチ、A型。『でんぱ組.inc』のセンターを務める。キャッチフレーズは「歌って踊れるゲーマーアイドル」。コンシューマーからアーケード、ネットゲームまで幅広く網羅し、ゲーム番組のMCもこなす。新体操やクラッシックバレエの経験を生かしたダンスも得意。イメージカラーは「赤」。
Twitter→@FurukawaMirin、Instagram→furukawamirin、ブログ→「みりんのメモ帳.txt」

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2022年4月22日(金):福岡・Zepp Fukuoka
2022年5月7日(土):札幌・Zepp Sapporo
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