監督就任のあいさつで、プロ野球史上初の発言
新庄さんがプロ野球全体の未来を考えて、これまでの意識を変えようとしていることが垣間見えるエピソード。2つ目は、昨年、日本ハムの監督に就任したときのあいさつです。
近年の日本ハムは3年連続で5位に低迷中。当然、新監督の新庄さんに求められるのは「優勝」のはず。
ところが新庄さん、ご存じのように、就任の記者会見でこう言い放ちました。
「優勝なんかいっさい、目指しません。僕は!」
すべてのプロ野球チームにとっての大目標である「優勝」について全否定。そんなものは二の次とばかりに、「優勝なんか」と言いきったのです。
これは、弱いチームを任された新監督が「今年はまず、Aクラスを狙いたい」とか、「3年計画で優勝したい」などと言うのとは、根本的に質が違います。
新監督が、その就任のあいさつで「優勝なんかいっさい、目指しません」と宣言したのは、世界中のプロ野球史上でも初めてのことだったのではないでしょうか。
発言の意図は、「チームの勝利」より「もっと大切にしたいことがほかにある!」ということ。
それは何か?
新庄さん自身が考えたという、日本ハムの「2022年チームスローガン」がその答えでした。
新庄さんは、球団から提示されたという20~30個のスローガン候補を見て、「全部、違うな」と。そして、いつも意識している言葉をそのまま球団のスローガンとして提案し、採用されたのです。
そのスローガンは、次のたったひと言でした。
『ファンは宝物』
新庄さんは言っています。
「僕の野球人生は、球場に来てもらえるファンにどう喜んでもらえるか、どう感動させようかという野球人生だったので、その思いだけです」
これが新庄さんにとって、「優勝以上」の目標だったのです。
もちろん、優勝すればファンは喜びます。しかし、新庄さんにとっては、まず、ファンを喜ばせることが第一で、優勝は、あくまで、その延長線上にあるものなのでしょう。