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社会

原発PR標語の考案者が「12年目のリスタート」、故郷・福島とウクライナにはせる“強い思い”

SNSでの感想
所有するアパート『エクセレントユーティー』の除染作業の様子を見に来た大沼さん=4月28日、牧内昇平撮影
目次
  • 今夏、3・11から12年目のリスタート
  • 故郷は恋しい、しかし──。消えない悩み
  • ウクライナの人々は「自分たち以上に不安だろう」

「原子力明るい未来のエネルギー」

 原発PRの標語を考えたことで知られる大沼勇治さん(46)は今年の夏、悩みながら「新たなスタート」を切ろうとしている。

 故郷の福島県双葉町で避難指示が解除される。子どものことを考えると、町に帰ることはできない。けれど、町で暮らしたい人のために何かできないか──。悩んだ末、事故前のアパート事業を再開させることにした。

「明るい未来はなかったけれど、やっぱり故郷は故郷。縁を切りたくないんです」

 ウクライナで故郷を追われている人々にも思いをはせつつ、大沼さんの新たな挑戦が始まる。

(昨年秋には、大沼さんに今も深刻な被害が続く原発事故をどう「伝承」していくのかなどを聞いたインタビューを掲載:〈原子力明るい未来のエネルギー〉標語の考案者が語る「恥ずかしい記憶」の意味

今夏、3・11から12年目のリスタート

 福島第一原発が立つ福島県双葉町。町の中心部の一画に「原子力明るい未来のエネルギー」の原発PR看板は立っていた。

福島県双葉町に立っていた原子力PR看板。標語は小学6年生だった頃の大沼勇治さんが考えた=大沼さん提供

 看板は2015年12月に撤去され、近くにあった商工会や体育館なども、すでに解体されている。風景は変わり果ててしまった。その中で今も事故前の面影を残しているのが、大沼さんが所有するアパート「エクセレント・ユーティー」だ。

 4月下旬の晴れた日に双葉町を訪ねると、「エクセレント・ユーティー」のブルーの外壁の周りには足場が組まれ、作業服姿の人々が屋根にのぼっていた。「除染作業中」のノボリが立っている。

 大沼さんが話す。

「屋根や壁の除染を業者の方にお願いしています。これで放射線量が下ってくれれば、屋内に入ってハウスクリーニングをします。あとは電気やガスなどの設備や必要なリフォームを済ませれば、もう一度お客さんに入ってもらうことができます」

所有するアパートの除染作業の様子を見に来た大沼さん。写真右側の路上にはかつて〈明るい未来〉の原子力広報看板が立っていた=4月28日、牧内昇平撮影

 オール電化・高密度・高断熱が売りの2階建て住宅。4世帯が入居できる。大沼さんが新築した2008年のころは、町の高級物件だった。見た目は今も立派だが、目に見えない放射性物質で汚染されてしまっている。

「除染してもらって、線量が下ってくれればいいんですけどね……」

 大沼さんはそう言いながら、ビデオカメラを回して除染の様子を撮影していた。

「双葉町が変わっていくところを写真や映像に残しています。故郷のもとの姿を忘れないためです。このアパートも町の風景の一部ですから、建物がどう変わっていくのかをきちんと記録しておきたいんです」

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