オープンしてすぐにコロナ禍に突入。飲食業から会員制スペースに
──銭湯ぐらしを企業化してから、どれくらいで小杉湯となりをオープンできましたか?
「構想期間が2年あって、2020年3月がオープンです。コンセプトは“銭湯のあるくらし”が体験できる場所。湯上がりにご飯を食べたり、仕事をしたり、くつろいだり。くらしの中に銭湯がある。でも、オープン2週間後にコロナの感染拡大が起きて、2週間しか通常営業できなかったんです」
──いきなりのピンチですね。
「悩んだけれど、少しでも安心して使えるように、小杉湯となりを2020年6月から会員制に切り替えたんです。そこから現在まで、会員制で運営しています」
──小杉湯となりは、2、3階は和室になっていて、1階にはキッチンもあり、家にいるみたいな内装ですね。
「1階にはシェアキッチンがあるので、自炊をする人もいるし、週末、食堂を開催する人もいます。“まちの台所”みたいなイメージです。2階は、仕事や読書に集中できる畳の小上がりがあり、“まちの書斎”と位置づけています。3階は個室になっていて、天気がいい日には富士山も見えるんですよ」
──既存のコワーキングスペースとは違って、心地よい空間をみんなでシェアするような感じですね。
「一般的なワークスペースのように、使い方が限定される場所にはしたくなかったんです。人とちょっと話したい人もいれば、こもりたい人もいる。コミュニケーションや過ごし方に選択の自由を作りたいって思っていました」
──そこに銭湯も加わるのですね。
「銭湯は“まちのお風呂”ですね。徒歩圏内に、お風呂、台所、書斎が分散していて、街全体を1つの家のように使うくらし方です。小杉湯となりの会員になると、『となりチケット』というものが月10枚配られるのですが、小杉湯だけではなくて、近くのコーヒー店の割引券として使えたり、レンタル自転車も利用できるんです。街の機能と連携しています」
──街を知るきっかけにもなるのですね。
「ほかにも、近くの古民家を利用できたり、元会員が長野で始めたゲストハウスに無料宿泊ができるなど、拠点が広がっています。これからも小杉湯となりを中心に、くらしの拠点を広げていきたいと思っています」
──今は、小杉湯となりのスタッフはどれくらいいるのですか?
「メンバーは50人くらい。経営や企画に関わるメンバーが20人、アルバイトスタッフや運営を手伝ってくれるボランティアのメンバーが30人。最高齢は80歳なんですよ。80歳のスタッフは小杉湯のお客さんだった男性で、番台の子がリクルートしてくれました」
──幅広い年齢層ですね。高齢の方はどのような仕事をしているのですか?
「銭湯ぐらしでは、家の浴槽に入れて楽しめる『お風呂のもと』という定期便を発送しているんです。高齢の方には、もともとは廃棄される予定だった酒粕や、カカオの皮などを使ったお風呂のもとの梱包作業を手伝ってもらっています。みんな近所の人で、家で詰めて持ってきてくれています」