「帰国したら秋葉原が変わっていた」 喪失を経験したからこそ沼にハマる

秋葉原のメイドカフェ『JAM Akihabara』の店内。昔ながらのメイドカフェの雰囲気を残しており、ふゅーちゃーさんが「特にたくさん友だちができた」と語る

──このあと、2004年に『@ほぉ~むカフェ』ができて、同年から2005年の「電車男ブーム」がきて「萌え~」が新語・流行語大賞トップ10に入ります。「メイドカフェ」という言葉が世間に知られることになりました。

「そうなんですよね……。ただ、実はその時期に海外の大学に進学したので、日本にいなかったんですよ

──え!

「そう。メイドカフェがいちばん盛り上がっていたときを体験していないんです。だから、こうしてメディアに取り上げていただくときに、古参のみなさま方から、“おまえがコンカフェを語るな”とお叱りを受けることもあったり(笑)」

──古参怖え(笑)。じゃあ「帰国したら世界が変わっていた」みたいな感じですよね。浦島太郎アゲイン……。

はい。帰国したら秋葉原が変わっていて(笑)。なんか、めちゃくちゃ悔しかったんですよね。嫌じゃないですか。自分たちの“居場所”だったのに、いつの間にかいろんな人が出入りしてるのって。あと……ほら、オタクってマウント取ってくるじゃないですか(笑)。それがホント悔しくて。

 だから帰国してすぐ、メイドカフェに行きまくりました。もう、いろんな店舗の情報をキャッチアップしまくった時期ですね」

──なるほど。そこで「喪失」を経験したからこそ、取り返すべくさらに沼にハマっていくんですね。それで今日までコンカフェにハマりきり、いつの間にかコンカフェ研究家となった、と。

「そうなんですよね。個人的には2019年に結婚して、2021年には子どもができました

──いや、ソレですよ(笑)。以前にご出演されたABEMAの番組のなかで「妻と子どもがいます」とおっしゃったとき、マジでびっくりしました。それでもコンカフェ、メイドカフェに行く理由はどこにあるのでしょう。

「いや、もうぶっちゃけ、やめたいんですよ(笑)。だって人の親ですからね……。だから最近じゃ、コンカフェに行って“俺を出禁にしてくれ”って(笑)」

──(笑)。

「……というのは、まぁ冗談ですけど、ずっとハマり続けられるのは“コンカフェにはストーリーがあるからだ”と思ってます

──ストーリーですか。

「そう。コンカフェってお店にも界隈にもストーリーがあるんです。

 例えば最近だと、歌舞伎町のコンカフェ界隈がおもしろい。2021年と2022年に『舞舞悪魔(まいまいでびる)』と『Royal Melt』っていうお店が注目を集めたんですよね。この2店舗ってルーツが一緒で、もともと歌舞伎町の人気コンカフェ『みらいぷらんと』のキャストだった方が独立して始めたお店なんですよ

「Royal Melt」の外装。白を基調にした世界観がキラッキラで可愛らしい。

──お、なんか面白そう。

「『みらいぷらんと』側としては、後発に話題を持っていかれてしまったわけじゃないですか。“どうするんだろ”と思っていたら、“天下のみらいぷらんとが歌舞伎町を水色に染める”ってTwitterで発表して、総工費5000万円以上をかけて新装開店すると宣言したんです

 そのツイートに『舞舞悪魔』側が、“歌舞伎町スプラトゥーン(※)かな? 一緒に盛り上げましょう”って。それでオタクたちは、“水色のみらいぷらんと、白のロイヤルメルト、ピンクの舞々悪魔、三つどもえの歌舞伎町スプラトゥーンが始まった!”と(笑)

(※スプラトゥーン:任天堂のゲームタイトル。チームにわかれて自軍の色を塗ることで縄張りを広げ、最終的に面積が大きかったほうの勝利となる)

──「歌舞伎町スプラトゥーン」は座布団2枚あげたい。

「面白いですよね。こういうストーリーがオタクに“刺さる”んで、“お、まだまだ楽しめるじゃん”ってなるんですよね。この状態がもう20年以上続いているという(笑)。

 これが普通のカフェみたいに、ある程度フォーマットが固まってしまったら、こんなに推せないんです。ストーリーがあって、そこにドラマが生まれるのが、結婚して子どもができても通い続けられる理由だと思います
 

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「友だちが近くにいなかった」「親の仕事で早くからパソコンが家にあった」という理由で幼いころからインターネットでコミュニケーションをとっていたふゅーちゃーさん。そこから恋愛シミュレーションゲームをへて、メイドカフェの世界を知った彼だからこそ気づける「インターネット掲示板とメイドカフェの共通点」はとても興味深い。

 そう言われると、メイドカフェだけでなくアニメやアイドルといった、いわゆる「アキバ文化」全体を通して「リアル過ぎない空気感」があるなぁ、なんて思ったり……。こうした“見えないパーティション”で現実と切り離されたコミュニケーションにこそ、オタクにとって心地いい空間が生まれるのかもしれない。

 インタビュー第2弾ではふゅーちゃーさんに「秋葉原で巻き起こっているメイドカフェ・コンカフェ論争」や「昔のメイドカフェと今のコンカフェ」の違いについて語っていただく。

(取材・文/ジュウ・ショ)

《INFORMATION》
ふゅーちゃーさんのTwitterアカウント→@FutureX01