キラキラコンカフェ嬢もいれば、サブカルオタクも

──令和のコンカフェは、ただ可愛いだけじゃダメなんだ……。

「そうですね。コンカフェ界隈では、“キラキラコンカフェ嬢”って言葉が、もうずっとホットワードです。もはやキラキラっていうか“ギラッギラッ”なんですけど(笑)。

 歌舞伎町の『Bar Chainon(シェノン)』でキャストを務めている岩瀬唯奈さんが、“コンカフェ嬢”っていう言葉とともにシャンパンタワーの画像とかをSNSに上げ始めたのがきっかけだと思うんですけど。それで、“私もキラキラコンカフェ嬢になりたい”っていうキャストさんは増えていますね。

 ……とはいっても、この前、渋谷のコンカフェでドリンクを頼んだとき、“おいしくな~れ、森鴎外♪”(※)って魔法かけてくれる、サブカルなオタクっぽい子もいましたけど(笑)」

(※メイドカフェの決め台詞のひとつ。有名なものでは、メニューを頼んだときに「おいしくな〜れ、萌え萌えきゅん♪」というフレーズがある)

──(笑)。

「“なにそれ、斬新なんだけど”って返したら、“三島由紀夫のほうがよかった?”って(笑)」

──そういう問題じゃない(笑)。

「だから全員が全員、キラキラコンカフェ嬢を目指しているわけではないんですよね。令和でも“森鴎外♪”って言ってくれる子もいる」

──単純にお店のコンセプトが多様化しているんですね。

「そうなんですよね。だから簡単に“昔ながらのメイドカフェ”と“新興キラキラコンカフェ”みたいに二分できないと思います。

 そういった点で最近おもしろいなと思ったのが、秋葉原の『OVERTURE(通称:おばちゅ)』というお店です。一見、キラキラ系なんですよ。店内の壁にはずら~っとシャンパンが並んでいて、最初はちょっとビビる(笑)。

 でも、メニューにキャストドリンク(キャストにごちそうするための飲み物)はないし、シャンパンも入れられるけど、お手ごろなものが2種類しかない。キャバクラみたいに“恋愛”を感じさせるような接客もしない。で、見ているとお客さん同士がTwitter上で仲よく交流している。

 つまりソフトとしては、アットホームな“昔ながらのメイドカフェの雰囲気”なんですよね。こうした新旧のよさを合わせ持つお店も出てきています

秋葉原・OVERTUREの可愛らしい内装。どこかアットホームで落ち着く雰囲気があり、ごはんを食べてチェキを撮るだけで超幸せになれる

推しを見つけたい人は「まずは5店舗」行ってほしい

──もうなんか、コンカフェ業界全体がカオスですよね。

「そう。初めてコンカフェに行く人から、“わかりやすくカテゴライズしてほしい”とメッセージをもらうことが多いので、私もいろいろ考えたんですよ。例えば、“シャンパンあるかどうか”とか、“風営法を取っているか”とか。でも、『OVERTURE』みたいなお店もあるし、そんな一概には“コンカフェ”っていうくくりでまとめるのって難しいんじゃないかな、って思いますね

──なるほど。もうそれぞれのよさがある、と。多様化が進んでいる状況については、どうお考えですか?

「“うちの店はコンカフェです”って自己申告しているお店は、あるがままを許容して、“よし、行ってみよう”って思うことにしています。これは僕のポリシーですね。僕はやっぱりメイドカフェ・コンカフェの“進化”を見るのが好きなので、今の状況を楽しみたい、と」

──排他的でないところが、すごくすてきです。「コンカフェに行ってみたいけど、ちょっと怖そう」と考えている方にコンカフェ研究家としてアドバイスをするなら?

まずは5店舗まわってください。本当にお店によって業態も接客も多様化しているので、1店舗だけ行って“なんか違うな”と諦めないでほしい(笑)。5店舗行ったら、きっと推しが見つかるはずですから
 

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変化を「進化」ととらえる、柔軟な“オタク力”

 取材にあたって、秋葉原や歌舞伎町のコンカフェを10店舗ほど回ってみたら、これがマジでとんでもなく楽しかった。何の気なしに「いつから働いてるんですか?」って聞いたら、お店のコンセプトに合わせて「え~っと……3000年前です♪」とか返ってくる。「(え、なにこの生き物、超可愛いんですけど〜)」って思いながら「長寿〜! 大先輩~!」と世界観に没入してしまう。

 それで完全に別世界に入っているうちに、自分の頭がちゃんとバカになってくる。もう現実のことなど忘れて脳死状態で「可愛い!」を連呼していたら、あっという間に1時間経つ。店を出たあとに「あ、そうか。ここ秋葉原……か……」と謎の喪失感でいっぱいになる。これは推しが出てるアニメを見終わったときの感覚に近い。

 つまり、店内での時間は三次元とは完全に隔離されているので、そりゃもう恋愛感情など起こるはずもない。「はい最高でした。もう推します。ありがとうございまーす」という固い意志だけが残るのだ。色恋の空気が生まれがちな“夜のお店”に比べると、裏表のないむちゃくちゃ健康な感覚だ。そして、お財布にも優しい。

 ふゅーちゃーさんが言うように、コンカフェは多様化している。お店によって雰囲気もコンセプトもばらばらだ。ついマウントを取りたくなる古参ヲタとしては「変化」を斜に構えて見てしまうこともあるだろう。しかし、その状況を「進化」ととらえて面白がること。そこに彼の「オタク力」があるふゅーちゃーさんは考えが柔軟だからこそ、ひとつのことを長年にわたって楽しめるのだろう。

 ふゅーちゃーさんは「初心者の方にはどんどん質問してほしい。自分が推しているお店と、その方のニーズが合致したとき、うれしくなる」と笑う。「気になるけど、ちょっと怖い」と思っている方は、安心して楽しむためにも識者に質問をしたうえで、数店舗回ってみてはいかがだろうか。

(取材・文/ジュウ・ショ)


《INFORMATION》
ふゅーちゃーさんのTwitterアカウント→@FutureX01
(「“安心して楽しめるお店を知りたい”という方は、リプやDMで相談してください。予算に合わせて安心できるお店を紹介します」byふゅーちゃーさん)