どの業界でも、最後は「人」が重要!

──これまでの経歴で、“今も役立っている”と思うことは何かありますか?

議員秘書のときは、“最後は、人(が重要)なんだ”ということを学びました。選挙活動は、チラシを配ったり、演説をしたり、選挙カーを走らせたりとアナログなものが多く、今の時代にそぐわないと感じることもあったのですが、そうはいっても、実際に面と向かって握手することで、“あなたに投票するわ”と応援する人に変わっていくことが多いんです。

 それって、全ての商売に通じると思うんです。どんなにSNSで上手に宣伝したとしても、商品がよくても、お店のスタッフの対応が悪かったら、全然ダメなもの。最後は、人ありきなんです

──初めて外食業界に入った「俺の」の経験も、大きな影響があったのではないでしょうか。

そのことがきっかけで、外食業界の魅力にハマりました。以前、創業者の坂本さんが“外食だけは、小が大に勝てる”とおっしゃったんです。例えば、大手の飲食店の隣に、小さなイケている飲食店があったら、そっちのほうに行列ができることがある、と。ロールアイスクリームファクトリーも大手に比べたら小さいけど、大手ではできないことを目指して、ファンを作っていきたいと考えています

──フリーランスでの「飲食店のPRのお仕事」を通していろいろな経営者を間近で見てきたことで、学べたことはありますか?

ここでも、飲食店を長続きさせる秘訣は、人だと感じました。スタッフから見て“社長が尊敬されているけど、遠くない”と言いますか、社長との距離が近くてもきちんと威厳を示せている会社は、アルバイトから社員になる確率が高かったです。アルバイトの経験だけで終わらせて、他のところに就職するよりも、“ここで社員になろう”という人が多いんです。

 ある社長さんは、従業員をとても大切にしていて、夜はお店に行き、従業員たちと時間を共有していました。“いつ家に帰っているの?”と不思議に思うくらいでした」

浅野社長は取材班への対応もホスピタリティにあふれ、温かい人柄が伝わってきた 撮影/山田智絵

──「人材を大切にする」って重要ですよね。従業員が頻繁に辞めてしまうと、また新たな人材を探し、仕事を一から教えて慣れてもらわなくてはいけなくなるので、会社にとっても、効率が悪いものです。さまざまな業種を経験されてきていますが、今後、異業種の仕事にチャレンジしたい人に何かアドバイスをお願いします。

私は、はじめは“儲かるかどうか”ということはあまり考えないんです。それよりは、“今やるかどうか”ということが大事で、大抵すぐに動いています。“思ったときがタイミング”です。もちろん失敗することはありますが、その後、修正することもできますから。

 例えば、ロールアイスの場合、“これをやりたい”と思って、いろいろな人に声をかけ始めたのが2016年12月。翌年の2月には一緒に立ち上げた2人と会って、4月には1人でニューヨークにロールアイスクリームを見に行き、5月に会社を起こし、6月にオープンしました。

 すごく好きでどうしてもやりたくて、今がチャンスだったら、やってみたほうがいいと思います

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 まずは「行動してみること」、そして「人を大切にすること」、さらに「自分の“人となり”を磨くこと」が、成功の秘訣なのかもしれません。ナレーターや議員秘書の仕事は一見、今の飲食店経営の仕事に関係ないようであっても、実は大きな影響を与えていると感じさせられます。精いっぱい打ち込んだ経験は、どんなことも無駄にはならない、ということでしょうね。

 第2弾インタビューでは、ロールアイスクリームファクトリーが人気を保ち続けている理由や、経営者として大切にしていること、殺処分寸前のところを保護した愛犬メロンちゃんのことなどを伺っていきます。

(取材・文/加藤弓子 撮影協力/ビジネスエアポート京橋)

〈PROFILE〉
浅野まり(あさの・まり)
株式会社トレンドファクトリー代表取締役。一般社団法人日本外食リサーチ&PR協会代表理事。ナレーター、雑誌ライター、国会議員秘書をへて、俺のイタリアンなどを展開する「俺の株式会社」創業期の企業戦略や広報を担当したのちに独立。現在、おもに中堅・大手外食企業の広報・PR業務支援を行う傍ら、中小企業庁の全国支援事業「専門家派遣事業」のPR専門家としても活動中。

■トレンドファクトリー:https://www.trendfactory.jp/
■ロールアイスクリームファクトリー:https://rollicecreamfactory.com/