前年のアルバム曲や、数年前に発売された楽曲がランクインする年も
2004年は、DREAMS COME TRUEの吉田美和が手がけたラブソングの「ね、がんばるよ。」が3位。剛がファンということから楽曲提供が実現し、ドリカムの「MERRY ME?」に対するアンサーソングとなっている。こうした穏やかなラブソングが徐々にハマるようになったのも、2人の成長を感じさせるし、この曲が持つホンワカとした雰囲気も、KinKi Kidsらしさのひとつという感じがする。
また、注目は、23位の「Bonnie Butterfly」。前年のアルバム『G album -24/7-』収録で、ビートが強く鳴り響く中を2人がコーラスやラップを交えて駆け抜けていくようなアッパーチューンだが、こうしたLIVE映えしそうな楽曲がカラオケでヒットするというのも、アーティストとして認知されている証拠だろう。
そして、2005年では前年末に発売された「Anniversary」が2位に。シングル20作目の記念作ということもあり、デビュー曲「硝子の少年」のときと同様、シングルとアルバム『KinKi Single Selection II』が同一パッケージとなった。この影響もあり、シングルは2005年のオリコンヒット年間6位を記録し、3年ぶりにTOP10入りしたが、カラオケでもしっかり大ヒットしている。これも、「雪の華」などで知られるSatomiによる実直な歌詩と、織田哲郎によるスケール感のあるメロディーにKinKi Kidsの優しく包むような歌声が合わさってこそのことだろう。
さらに、「愛のかたまり」が発売5年目にして、ついにカラオケ9位に。シングルズ・ベスト『KinKi Single Selection II』の中で、カップリング曲ながら唯一収録されており、発売されたタイミングで音楽番組でも何度か歌われたことで、改めて名曲という認識が広まった。もともと、剛が作詩、光一が作曲したということも、ファンの思い入れが強くなるキッカケだっただろうが、それにしても意外と譜割りが複雑だったり、ブレスの位置が少なかったりする楽曲がカラオケでヒットしたというのは、実に感慨深い。
なお、2005年には10位に「ビロードの闇」がランクイン。カラオケ的には地味かもしれないが、当時、音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にて、光一が「僕らは一人で打ちひしがれるだろう」と歌詩を間違え(正しくは「眠れる夜に打ちひしがれる〜(中略)〜僕らは見ることさえ許されないだろう」と続く)、その即興詩に笑ってしまい、剛も仲よく間違えてしまうという、“ビロードの闇・打ちひしがれ事件”が起こった。これが今でも語り草になるほど、ファンの間では有名な楽曲なので、初心者の方はおさえておこう(笑)。
そして、2006年には「愛のかたまり」が5位とさらに躍進し、また2000年発売の「もう君以外愛せない」も2位と、ラブソングの上位入りがより顕著に。1位から5位の作詩は、順に松本隆、周水(Shusui)、松本隆、Satomi、そして堂本剛と四者四様なのに、“繊細であるがゆえに恋愛に不器用でも、相手のことを大切に思っている”という男性像が一貫している。これらのカラオケ定番人気曲から、“図書委員(※)が理想とする恋人像”が浮かび上がってくるのがとても興味深い。
(※ 「図書委員」=KinKi Kidsのファンネーム。剛が「おとなしくて図書委員みたい」と言ったことから浸透)
このように、前の5年間と比べると、やや地味に見えるかもしれないが、2002年からの5年間も名曲が次々と誕生している。また、互いのソロ活動による人間面での深化から、ピースフルな要素やファンキーな要素など、新曲により彼らの魅力が広がったのもこのころ。一方、彼らのカラオケ人気曲に登場する男性像は「硝子の少年」から一貫しており、ある種の美学も見えてきた。ここに、彼らが25年間(そして、これからも)愛され続けている理由があるのかもしれない。
《取材・文/臼井孝(人と音楽をつなげたい音楽マーケッター)》