断絶された文脈を再接続して、仲間を増やしたい
──最後に、ご自身の活動でも、周りの世界でもいいんですが、今後どんな環境になっていったら面白いと感じますか?
本田:僕は、「悪口が多い社会」になってほしいです。建設的なことに限るんですけど、たとえば作品を語る時とか、もっと感情的でもいいと思うんですよね。もっとぶん殴ってほしいです。
ヒョウリ:みんなが、自分が好きなものや主張にアイデンティティを預けてる時代だから、好きなものを否定されると自分の人生や人格を否定されたように感じる。だから触れ合わないっていうムードはあるかも。それってつまり、「宗教の時代」だと思う。今って、コンテンツでも、アイドルでも、本当にものすごい数の神々がいて、それぞれの村が宗教を信仰しているような時代だと思う。
本田:それで、それぞれの村がすごい充実してる時代ですよね。武道館のライブスケジュールとか見てるとビックリするんですけど、本当に知らないアーティストがたくさんいて武道館を埋めてるんですよ。「誰もが知ってる大物」じゃないんですよね。だからメインが消失したから、サブカルチャーっていうのももう消失したんだと思います。
ヒョウリ:誰も、メインとサブの対立構造なんて考えてないよね。それこそYouTubeだって、最初は明らかにサブだったわけだし。自分にとってのメインを追い求める時代。だから、結局「宗教」を作るしかないんだと思う。本当に、それが求められている。
矢崎:そういう意味では、僕は、正直広いところにリーチして浅く伝える気はないんですよ。今に違和感を抱いてる人はたくさんいると思うから、そこにいる人たちで仲間を増やしたいとは思うんですけど。
本田:濃いところで関係性を作るっていうか。カルチャーを好きな人たちが集まって友達になれる、その最短距離を示してあげられるような環境を作れたらいいなと思いますね。友達しか来ないライブハウスでライブするような感じ。「見に行ってやるか」で集まってくれる、そんな関係性ですね。
ヒョウリ:僕は、2010年代にものすごい大きな断絶があったと思っていて。それは、ネットネイティブ世代が登場したことで、一部の「文脈」が断絶されて「なかったこと」になっているという感覚。自分たちはそのはざまの、過渡期に生きていたんだっていうのが最近わかってきたんだ。
だから、やっぱおませちゃんも含めて、僕たちは絶対にネットネイティブになれないんだよね。ネットにつながることに、1枚の壁があるんだと思う。
でも、だからこそできることもあるんじゃないかと思っていて、それは「断絶された文脈を再接続する」っていうこと。それこそ村と村の間に道を作るとか。大きなお世話なのかもしれないけど、アナログとネットのはざまで生きてきた僕らの世代にできることなんじゃないかって思ってますね。そして、それを刺激的だと思ってくれる仲間を増やしたい。
僕は選択肢の多さが豊かさだと思うので、そうやって無数の価値観がつながって共存してグレーになっていく、中庸な世の中がいいですね。
池田:極端なものにしかみんな惹かれない時代だからこそ、グラデーションの間もちゃんと見ていきたいと思ってます。
ヒョウリ:池田がまとめた!!
(構成/タカハシヒョウリ、編集/福アニー)
【Profile】
●タカハシヒョウリ
ミュージシャン・作家。ロックバンド「オワリカラ」のボーカル・ギター、作詞作曲家。さまざまなカルチャーへの偏愛と造詣から、コラム寄稿、番組・イベント出演など多数。
●おませちゃんブラザーズ
ニッチでおませなサブカルチャーを紹介するYouTubeチャンネル。クラスで2~3人しか知らない映画や音楽、漫画をわかりやすく伝える。