“とあるひと言”を放つ相手にいちばんゾッとする

 はい、大笑いしたところでまた怖い話に戻るよ。緊張と緩和だからね。そうだな~、「鬼才」って怖くない?「奇才」ならともかく、「鬼」って。よくアバンギャルドすぎてどう評価していいかわからないときに使われてるイメージだけどね。「映画界の鬼才」とか「文学界の鬼才」はいいとして、「ラーメン界の鬼才」って言われてもね。どんなの食わされるんだろって怖いよね。だって鬼才なんだからスープに何を混ぜてるか、わかったもんじゃないよ。で、ラーメンついでに、これ僕しか言ってないんだけど、チャーハンって高いよね。普通のチャーハン750円って! これからも言い続ける。この執念、怖いね。

 あと、長くてよくわからないからって、ちゃんと読まずに「同意する」のボタンを押すとき怖いね。

 一瞬ためらうけど、覚悟を決めて心の中で「もうどうにでもなれ」って小っちゃく叫びながら押すね。押したら押したですぐ忘れるんだけどね。

 あと「速さ」って怖いよね。体感するスピードの速さも怖かったりするけど、お店で料理を頼んで出てくる速さね。何でこんな早く出てくるの? 作り置き? よーく見ちゃう、食べるの怖いよね。そういう“出す速さ”で言うと、銭湯の番台にいるおばちゃんのおつりを出す速さよ。大人と子ども料金の2つしかないから暗算は簡単だけども、それにしても速いよ。かぶせ気味におつりがくるからね。なんなら財布開いて千円札に触れた時点で、おつりが先に出てくるからね、まだ出してないのに。怖いよ。「え、くれるの?」ってなる。お風呂に入りに来たらお金がもらえたという空間が一瞬、成立する。

 お金で言うとさ、お札に名前が書いてあるときない? なんか怖いよね。名前以外で僕のところに回ってきた千円札は、洗ったのかな? なんかちょっと、ひと回り縮んでる千円札。出会ったことない? 怖いからすぐ使ったけどね。まりもみたいな10円玉も。

 あと「俺が君を勝手に好きなだけだから」って言われてもね。怖いよね。「気にしないで!」じゃないよ。気になってしゃーないよ。何で言ってきたんだよ。君のファンだから的な、「君に俺のこと好きになってもらいたいわけじゃないから」みたいにへりくだっているように見せる怖い圧。この言葉を真に受けて「あ、そうなんだ~どうぞご自由に」なんて態度をとってたら、そのうち「なんでわかってくれないんだ!」って豹変したりして、もう怖いね、巻き込まれたくない。本気で考えたら、いちばんゾッとする話だよね。怖い怖い。

土用の丑の日とかき氷の味に隠された“共通点”

 そうそう、今回の絵はね、かき氷を食べて舌の色が変わったのをわざわざ得意げに見せてくる子の舌。冒頭で書いた、「暑い夏を乗り切るため、土用の丑の日にはウナギを」って話がウソだとわかってもウナギの消費量が減らないのと、これまた「かき氷のシロップはイチゴ味・メロン味・レモン味とか言ってるけど、本当は色が違うだけで全部同じ味」ということがこんだけ世間に広まって、みんな「ダマされたー」ってなったのに需要は減っていないところが似てるな~と思って。

 ちなみに、絵で表したのはブルーハワイ味を食べたあとの舌。だいたい、ブルーハワイって何味? 見た目の雰囲気だけで言ってるよね。この時点で気づくべきだったね、「シロップは全部同じ味」ってね。

(文/つぶやきシロー)


【PROFILE】
つぶやきシロー ◎1971年3月10日、栃木県生まれ。お笑いタレントや俳優として活動するかたわら、2011年からは小説も執筆。2021年には、著書『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館刊)が安田顕主演で映画化された。2022年4月、新著『こんな人いるよねぇ~──本を読んでつぶやいた』(自由国民社刊)を上梓。また、2009年から公式Twitterでほぼ毎日「あるあるネタ」をつぶやき続けて大人気に。フォロワー数は99万1000人を超える。(2022年6月現在)
公式Twitter→@shiro_tsubuyaki

『こんな人いるよねぇ~──本を読んでつぶやいた』(つぶやきシロー著・自由国民社刊) ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします