キックボクシングジムって、どんなことをするところ?

──よくキックボクシングや格闘技ジムの看板などに書いてある「フリー」という時間は、何をするのですか?

「慣れている人って、自分で準備体操をしてシャドー(ボクシング)をやってサンドバッグを打ち始めて、ウォーミングアップができたぐらいの時に、トレーナーが声をかけてミット練習をやり始める。それをフリーと呼んでいるのですが、初心者の方がそれをできるようになるには、みんなで習うクラスを2回くらい経験してからです。そして、ある程度レッスンの流れを理解したら、今度は準備体操は自分で行って、シャドーから一緒に入るとか、段階的に独り立ちできるようにしていきます」

──お聞きしていると、いきなりジムに入会する前に、体験レッスンを受けたほうがいいのでしょうか。

「体験レッスンは受けたほうが絶対いいと思います。なぜなら、入会申し込みの時だけ、いい対応をするジムもあるので。体験レッスンを受けている間は、周りの会員さんたちを見てどういうジムかっていうのはある程度つかめると思う。あとはトレーナーが、自分が質問したことに対して、ちゃんと納得いく答えを返してくれるかどうかも大切なんです

──どういうふうに、自分に合うジムやトレーナーを見つければよいですか。

「例えば自分が聞いたことに対して、トレーナーが正当性のある答えを返していたとしても、それには人によって何通りもの言い方があるんですよ。なので、トレーナーに言われたことが自分でしっくり来るか来ないかってめちゃくちゃ大事。でもそれを見極めるって、難しいことではあるんですが。僕が今までいろんな指導者を見てきてわかったのは、選手時代にセンス抜群で、何でもできるタイプから指導者になった人の場合、技術的な教え方ってなかなか難しいんですよ

──なるほど。説明が論理的ではないってことでしょうか。そういえば私が以前、ある有名な先生のもとでベリーダンスを習っていた時、「風を感じて!」って指導されて、初心者には具体的にどうしたいいかわかりにくくて、困ったことがあります(笑)。

細かく考えなくても感覚的にできちゃう指導者の場合、本人は風を感じてやっているわけだから、あなたもできるよね、みたいな感じになっちゃうんですよね(笑)。逆に現役時代にセンスがなくて、努力でいろんなことを考えて、やってきたってタイプは常に頭で考えているので、そのタイプの指導者のほうが言語化が得意だったりすると思う。僕が一番最初に入ったジムでは、会長と2、3人くらいのトレーナーに教わっていたけれど、みんな言うことが違うんですね。これってキックボクシングあるあるかも(笑)」

竹村哲さん 撮影/矢島泰輔

──いろいろなトレーナーに教わって自分に合う、合わないを見極めるのも大事なのですね。

「それぞれが理論を持っているので、それぞれの教え方で指導する。でも教わるほうは戸惑いますよね。例えば、ヒヨコのひなは生まれて最初に見たものを親だと思うみたいに、初心者は最初のトレーナーに言われたことを信じるしかない。そのへんはもう運になっちゃうかもしれないですね」

──なるほど。上達するためにはやはり、運動神経が必要なのでしょうか。

キックボクシングって運動神経だけじゃないんです。大人の場合は、理解力。やっぱり指導をしていると、“人間って、頭で考えて動いているんだな”ってめちゃくちゃ感じるんですよ。耳で聞いて、頭で理解して、それでどう身体を動かしていくかっていうところなんです

──そういう意味では、大人になってから始めても楽しめそうですね。

「同じような説明をしても、動けるかどうかっていうのは人それぞれ。でも子どもは逆で、目から入る情報のほうが理解しやすいみたいなので、頭で理解させるよりも“これをこうやるんだよ”って見せたほうが早いですね」