音楽活動とキックボクシング、違いはどんなところ?
──竹村さんはバンド時代、誰かから楽器を教わったりはされましたか?
「スネイルを始める前は、パンクバンドとはいえ、ある程度は弾けなきゃいけないと思って、結構しっかり練習した時もあったんですよね。でも練習をしすぎて、腱鞘炎になっちゃったり……。だから途中からは“こんなもんかな”って思って、つらい練習はもうやめちゃったんですね」
──楽器が上達するのと、キックボクシングが上達する感覚は似ていますか?
「楽器を使う音楽って成長がわかりやすいけど、格闘技のほうが段階的ですね。だってバンドは結局、自分でやってくしかないから! 弾き方がよくわかんなくても、楽器を買ったらもう次の日から本番みたいな(笑)」
──楽器は出たとこ勝負な部分があったのですね。
「演奏は本番で積み重ねられて、だんだんレベルアップしてくる。格闘技はジムに入って誰かに教わるっていう環境なので、考え方が違いますよね。僕の場合だと、好きになっちゃうと、そればっかりやっちゃうタイプ。だから自分としては努力しているって感覚もない。肉体的なパフォーマンスはある程度若いほうがいいけれど、その反面、若い子のほうが諦めやすいって思いますね」
──確かに、竹村さんは30歳でキックボクシングを始められて、43歳でチャンピオンになられています。
「プロ選手でも、今は若い子のほうが長く続かない。年を取ってから始めた選手のほうが長く続きます。デビュー当時、後楽園ホールで“竹村哲31歳、本日がデビュー戦”ってアナウンスされると、会場がざわついたりしていたけれど(笑)。31歳って、今のキックボクシング界ではそこまで遅くはない。NKB(日本キックボクシング連盟)でも、50歳でデビューした人もいましたね。負けちゃったけど」
YouTuberの影響で、再び格闘技ブームが到来
──最近では、6月19日に東京ドームで『THE MATCH 2022』(那須川天心vs武尊をメインマッチとした格闘技イベント)が開催されて話題となりましたが、ジムにも影響はありましたか?
「『THE MATCH』のような、格闘技のビッグイベントがあった翌日は、ジムの来館者が多い(笑)。みんな “よっしゃやるぞ”って気分が上がっているんだよね(笑)」
──やはり、テレビなどの影響でみんなやる気になるのですね!
「あとはYouTubeの影響もめちゃくちゃ大きいなと思っていますね。今では完全に1つの媒体として認知されていて、受け取る側がそこに興味を示している。例えば格闘家でYouTuberの朝倉未来さんにしても、YouTuberを入り口として、格闘技の試合にみんな興味を持つ。そこから格闘技にハマるって人もいます」
──格闘技のどういう部分が、人を引きつけると思いますか?
「殴り合ったり、蹴り合うって原始的だし、判定がわかりやすいので興味を持ちやすい。MMA(総合格闘技)は、そこに組み技が入ってくるので、めちゃくちゃテクニカル。僕は総合はやったことがないので偉そうには言えないんですけど(笑)。でも非常に難しいっていうのは見ているだけでも感じる。そういう意味ではキックボクシングは非常にわかりやすい競技だと思いますね」