クラウドファンディングの成功と失敗
開店資金の一部はクラウドファンディングを利用した。背景には「多くの日本人に知ってほしい」という想いがあったという。
「カフェを作っていく過程でどれだけ多くの日本人が関わってくれるかに重きを置いていました。このクラウドファンディングで関わったことをきっかけに、フィリピンのことを知ってほしいんです」
約1か月半のプロジェクト期間で、集まった資金は約200万円。リターンには「KAPE TAYO TOKYO」で使えるコーヒー回数券や限定イベント参加券をはじめ、Fumiyaさんからの個人向けビデオメッセージの他、Fumiyaさんと一対一のお食事、YouTubeチャンネル「Fumishun Base」動画出演権、全国どこでもFumiyaさんが会いに来て一緒に過ごす権利など、インフルエンサーらしい項目が並ぶ。
興味深いのは、半分以上の支援者がコーヒー回数券を選んでいる点だ。SNSなどを通してFumiyaさんを知った人ならば、直接会う権利などに触手が伸びそうなものだが、そうではなかった点に、支援者の多くがこの店のコンセプトに共感していることがうかがえるだろう。Fumiyaさんも「これに関してはすっごい嬉しかったです」と頬を緩める。
だが、うまくいくことばかりではない。リアル店舗を持つという初めての経験は、予想もできないさまざまなトラブルに見舞われた。
「床下に大きな穴が空いていたり、換気扇が強すぎて入り口のドアが開かなくなってしまったり、注文したネオンがデザインと違っていたり……。当初よりもオープンが4か月も延びてしまって、支援していただいた方にご迷惑をおかけしてしまいました」
フィリピンと日本をつなぐリアルの場として
そんな失敗を経て、反省と勉強を繰り返しながらも、「KAPE TAYO TOKYO」の滑り出しは上々だ。店には行列ができることもあり、連日多くの人でにぎわっている。隣にはフィリピンレストランが、向かいにはフィリピン食材が購入できるアジア系食料品店があり、在日フィリピン大使館までは歩いて数分の距離。そんなロケーションもあってか、お客さんの多くはフィリピン人だ。「フィリピンの人たちが直接会える場所を作れたら」という目的は、早くも達成されつつあるようだ。今後は、もうひとつの目的「フィリピンが好きな日本の人たちが集まれる場所」としての認知を広げていくことが課題になる。
「クラウドファンディングの支援者さんたちと限定イベントをやった時、来てくれた人のほとんどが、何かしらフィリピンと縁のある方々でした。フィリピンで活動しているアーティストさんや、フィリピンのコーヒー豆を輸入している方、フィリピン料理店を経営している方。そういう方々がフィリピンを通してつながっているのを見て、すごく素敵だなと思いました。フィリピン仲間を欲しがっている方って、結構いるんです」
そんな人たちが集い、交流し、つながり、情報が集まることによってコミュニティが生まれる。「KAPE TAYO TOKYO」が「フィリピンと日本の懸け橋になる」ための拠点となる。そんな日を夢見て、Fumiyaさんは仲間とともに今日もお店に立つ。Fumiyaさんの挑戦は、始まったばかりだ。
(取材・文/山田宗太朗、編集/福アニー)
【Profile】
●Fumiya
静岡県出身。フィリピンを拠点に活動する日本の俳優、歌手、タレント、YouTuber。SNSの総フォロワー数が約600万人のフィリピンで最も影響力のある日本人インフルエンサー。2021年、Newsweek日本版『世界が尊敬する日本人100人』に選出。
Twitter:https://twitter.com/fumfumfum3
Instagram:https://www.instagram.com/23shun_base/
【Information】
●KAPE TAYO TOKYO
2022年8月に六本木にオープンした、「日本とフィリピンの懸け橋」がテーマのカフェ。フィリピンの定番パン「パン・デ・サル」やご当地スイーツ「レチェフラン」、グリーンカレーなどフードも充実。