ラップシーンに蔓延する“ナンセンス”、そしてふたりが描く今後の展望とは
──「金くれよ」という楽曲が、赤ちゃん婆ちゃんのYouTubeチャンネルの中でもっとも再生されています。この歌詞はどんな思いで書かれましたか?
でこ八「タイトルそのままの意味で書きました。ラッパーって、若い子たちはお金をもらってないんです。ライブに出させてもらうだけでうれしいっていう感じ。でも、遠くのライブへ行っても交通費は自分で出さなきゃいけない。これってナンセンスだと思うんです。1000円でもいいから、ラッパーにあげなさいよと」
──お金まわりはラッパーなどのミュージシャン、クリエイターにとっても死活問題ですね。
でこ八「実家が豊かならそれでもいいですよ。でもそうじゃない人もいるし、事故や事件に巻き込まれてしまったら払えるわけないし、金銭トラブルも発生します。あと、1000円でももらうと、“自分が出たんだ”っていう気持ちになってうれしいじゃないですか。“もらった”っていう事実が大事なんです」
──そこまで高い視座でリリックを書かれていたんですね。
でこ八「そうですね、イベントをするときはライブに出ている人の取り分として、お客さんから投げ銭をもらうようにしています。みんながそうしてあげんといかんと思うけど、今のヒップホップシーンには、そういう度量がある人がいないね」
──最後に、赤ちゃん婆ちゃんの展望を教えてください。
でこ八「いつくたばるかわからないけど、“赤ちゃん婆ちゃんって面白かったよな”って言ってもらえるような存在感は、ずっと打ち出していきたいです」
玄武「最近は勢いが落ちてるなというのが正直なところです。なので、もっと個人的に頑張らなくてはと感じますし、止まらないように動き続けていないと終わってしまうと思います。レベルアップして、今の赤ちゃん婆ちゃんに、自分たちのスキルと音楽性で色を加えていければと思います」
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《課題は話題性のその先 音出し新しいもの探して ステージの上ではトンデレラもシンデレラの靴を履かせてくれや 見て感じたもの吸い尽くす 誰もやれない事唯一無二 Wack(※)な奴、他のを当たれ 赤ちゃん婆ちゃん、ご堪能あれ》
※Wack(ワック):ダサいの意味
これは、MC玄武が言い放ったライブ中の一節です。
「課題は話題性のその先」
その言葉から、MC玄武の赤ちゃん婆ちゃんにかける思いが垣間見えました。新たな境地を切り開き続ける2人が、今後のラップシーンにどのような変化をもたらすのか、目が離せません。
(取材・文/翌檜佑哉)
【PROFILE】
赤ちゃん婆ちゃん(MC玄武(げんぶ)& MCでこ八):MC玄武2002年生まれ。MCでこ八1950年生まれ。祖母と孫による年齢差52歳の異色のコンビ『赤ちゃん婆ちゃん』を2017年11月に結成。その異色さだけでなく、デビュー曲からHIDADDYやAKIO BEATSといった、関西のラップシーンで活躍する豪華メンバーを製作陣に迎えたことでも話題になった。和の要素を取り入れたオリジナリティの高い楽曲でヒップホップファンの注目を集めている。代表曲に『天国と地獄』『金くれよ』などがある。
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCMa1Kvkl14nqCQl3LQGuZAA
Twitter:MC玄武(@MCgenbu)、MCでこ八(@QpCcbZa3Ul3HL82)