──そんな石田さんが、出会いから約15年たった今も自動販売機を追いかけているというのが、自動販売機の魅力の深さを物語ってます(笑)。まず卒論を書いているとき、どのあたりに魅力を感じたんですか?
「まずは歴史ですね。世界初の自動販売機は紀元前215年の古代エジプトで生まれています。天秤状になっていて、片方にお金を置くと、もう片方の秤(はかり)で聖水を汲める仕組みだったんですけど、まずこれがすごいなと。日本でいうと弥生時代ですからね」
──え、すごい、知らなかった……。確かにそれはびっくりです。
「日本では1800年代に自動販売機が登場するんですけど、そのころからすでに“偽物の硬貨を見破る機能”とか“自動的に売り切れを知らせてくれる機能”があったんです。これもすばらしいなと思いました」
──すごい。調べていくと、普段見ていた自動販売機が実はすごい機械だった、と気づいていくわけですか。
「そうですね。普段は何気なく見ていた筐体(きょうたい)に、だんだん興味が湧いてくるんですよ。ここまでひとつの事に没頭した経験はなかったので、新鮮だったのかもしれませんね」
──卒論を書き終えたあとも、自動販売機を探求し続けているのがすごいです。だいたいの大学生って、卒論のテーマはその場限りというか(笑)。
「そうですよね。まず“社会人になっても趣味として手軽に楽しめる”と思ったんですよ。自動販売機って、生活していれば自然と目にするじゃないですか。これは簡単でいい趣味だな、と思ったんですよね」
──たしかに。お金がかかるわけでもないし。
「そうですよね。それと私が新卒でIT企業に入ったタイミングでacureさんから『イノベーション自販機』が登場しました。よく駅にある"顔認証をして、AIでその人におすすめの商品をレコメンドしてくれる機能"が搭載されたものです。そのテクノロジーを見て“仕事にも生かせそうだな”と思ったのも、自販機をもっと知りたいと思ったきっかけですね」
──なるほど。確かに技術の進化によって、どんどん新しい筐体が出てくるわけで、それがオタクとしては新たな楽しみにつながりますよね。
「そうですね。進化があるからこそ、常に新鮮な気持ちで楽しめているんだと思います。自動販売機のオタ活として"テクノロジー"はキーワードのひとつですね」