この作品は“ライブ感”が強い。セリフを発することなく魅せる冒頭の場面にも注目

──コメディーミュージカルということで、明るい楽曲が多いのですが、曲のおもしろさについてはどのようにとらえていますか。海外版を見ると、コンラッドが歌う曲は、全体的にパワフルな印象を受けたのですが。

コンラッドというスターの持ち歌を歌う場面が多いので、先ほども言ったように、ライブをしている感覚を味わえます。ミュージカルとしてではなく、アーティストとしての歌い方が生かされる楽曲が多いかなと思っていて。その点は、ほかのミュージカルと大きく違う点です。

 コンラッドの歌の中では『正直になれ』が、もっともテンションの上がる曲です。コンラッドのすべてを表しているような曲なのですが、自由度が高くて、歌っていてとにかく気持ちがいい。繰り返しのフレーズが多いのですが、それが多ければ多いほど遊べるんです。ちょっと"はずせる"ポイントにたくさん出合える曲です。劇場を出るときまで耳に残る曲になるのではないでしょうか

──1幕と2幕で大きな展開がありますが、「この場面、演じがいがあるな」と思うところはどこですか?

最初に登場する場面ですね。舞台上には出ているんですが、セリフがまったくないんです。ほかの登場人物たちがコンラッドを囲んでコンサート会場で歌っていて、自分はその中心に立っているだけで、セリフなしでみんなを夢中にさせなければならない。一言も発することなくコンラッドのスター性を出すという、難しいからこそ、演じがいがあるシーンです

──声の出し方や歌い方で、こだわっているところはありますか?

全体的に、相当こだわってやっています。まずは感覚で歌ってみて練習しますが、その時期が過ぎたら、次はどこまで伸ばすとか、どこの部分でフォールさせるとか、ここはビブラートをかける、かけないとか、歌い方を細かく練っていきます。

 エルヴィス・プレスリーの曲はもともと聴いていたのですが、今回この役を演じるにあたり、改めて曲を聴き込んで、どのような方向性にしていくか模索しました。エルヴィスの歌い方には、“自分ならしないな”という“遊び”が多く入っています。ときには、ふざけてめちゃくちゃ低めに歌ったりするのですが、コンラッドの場合もそんなポイントがあったりするので、参考にしたいと思っています。それと、プレスリーの歌い方は、若々しくてビビッドなんですよね。その部分が自分とは違うところだと感じています

──音楽的には、どのような道を通ってきて現在に至るのでしょうか?

特に好きでやってきた音楽はR&B、ソウルやゴスペルです。自分の歌い方も、“聴いたらまさに、そういう音楽をたどってきたことがわかる”と、よく言われます。グルーヴ感を大事にするR&Bとか、特にアフリカン・アメリカンからの影響を受けてきたので、これをコンラッドの歌にのせられれば、僕ならではの役作りができるのでは、と考えています。

 数え切れないほどいろいろなジャンルの音楽に触れてきましたが、“歌って踊って”を昔からやっていたからか、最近ではアッシャーが好きで、1997年のアルバム『マイ・ウェイ』の25周年を記念して当時の楽曲を歌い直したデラックス・エディションが最高です! 40歳を過ぎても、いまだに現役バリバリで、歌もダンスもかっこいいアーティストです」

自分の好きなものからどんどん吸収しようとする姿勢がすてきです! 撮影/山田智絵