NYでの経験が大きな糧に。最初はさほど興味のなかった舞台が今は楽しい

──そもそもミュージシャンになりたいと思った特別な動機はありますか?

祖父母が演歌好きで、よく家で歌を聴いていたのが、音楽好きになる原点です。歌うことに関しては、ちょっと普通と違う感覚だと思います。例えば、学校の授業で歌わされたりするのが恥ずかしいと感じる人って多いみたいですが、そこで周囲との歌に対する感じ方のギャップを抱いたことはあります。自分は人前で歌うことが好きで、恥ずかしいと思ったことがなかったので。

 ミュージシャンになりたいと思った動機は、ただめちゃくちゃ目立ちたいからでしたね。12歳のときに紅白歌合戦でw-inds.が歌って踊る姿を見て、“自分もやりたい!”と、すぐにオーディション雑誌を買って、レッスンを受け始めたんです

──中3のとき、音楽の勉強をするためにニューヨークに行かれたそうですが、その若さでのニューヨーク体験はいかがでしたか?

「自分がやると言ったら、親の言うことは聞かない、やれと強制されたことは、まったくやらない。そんな子どもだったので、ニューヨーク行きを決めたときも、親は理解してくれたようです。そのころ、ミュージカルにはさほど興味がなかったんですが、せっかくニューヨークに来たんだからと観劇したり、ゴスペルを聴いたり、ダンスレッスンを受けたりと、それなりに充実した日々を過ごしていました。

 日本にいたころは、自分が好きになる音楽がどちらかというとマイノリティーだったんです。ヒップホップとかR&Bは、今に比べてやっている人たちが少なく、自分たちのまわりの仲間だけだったんです。今はだんだん変わってきていますが、日本では音楽チャートのトップ10にこのジャンルの音楽が入ってくることは、まずなかったんですよね。アメリカでは、逆にそれが大衆音楽だったので、すごくうらやましかったんです。本場の音楽を目の当たりにして、“これらを自分が好きなものとしていいんだ”と思わせてもらえた。ニューヨークに行っていちばんよかったのは、それがわかったことですね

──音楽活動をメインに活動していらしたかと思いますが、舞台に出ることになったきっかけはありますか?

「ニューヨークから日本に戻ってスクールに通っていたのですが、プロデューサーと曲を準備していき歌でデビューしました。それからは、ミュージシャンとしての活動がメインで、初めて舞台に出る機会があったのは18歳のときです。レコード会社からお話をいただいたのですが、“やってもいいかな”くらいの消極的な気持ちでした。当時は芝居にも舞台にも、さほど興味がなかったんです。ただ、性格的にまじめなほうなので、自分なりにがむしゃらに取り組んではいました。だからこそ、今、ミュージカルの舞台に声をかけていただけるような評価をいただけたのかなと思います。

 今は舞台が楽しくなりましたし、現時点では楽しく稽古を進めています。演出家がトップにいて全員で共有して作るのが舞台ですから、自分の意見を伝えることはあまりありませんが、例えば今回で言うと、コンラッド・バーディーはロックスターで、みんながロックスターとして扱うからこそスターに見えるわけです。そういうことへの共通認識を、アンサンブルも含めてもっと高めていってもいいんじゃないか、さらにステップアップする段階として必要になってくるんじゃないかな、と思ったりしています

──一度聴いたら忘れられないキャッチーな楽曲に彩られ、キュートでパワフル、底抜けにハッピーな作品で、映画化もされ、何度も再演されている作品ですが、今回の舞台の最大の見どころを教えてください。

やはり、自分が歌っているシーンですね。心底楽しそうにやっているのがわかってもらえると思います。ミュージカルから入った役者さんだと、苦戦する役だったと思うんですよ。自分は、もともと音楽からスタートしていて、ライブをたくさん経験させてもらっていますから、ステージ上ではそれを踏襲して、いつもどおりのパフォーマンスをすればいい。そういう意味では、コンラッドは自分にとってやりやすい役といえます。ですから、ミュージカルとしても、また、ライブとしても楽しんでいただけたらうれしいです

セリフがないシーンも、全力の歌唱シーンにも、乞うご期待! 撮影/山田智絵

(取材・文/Miki D'Angelo Yamashita)


【PROFILE】
松下優也(まつした・ゆうや) ◎1990年5月24日生まれ、兵庫県西宮市出身。2008年ソロアーティストとしてデビュー。'11年『マイケル・ジャクソン トリビュート・ライブ 』ソング・ステージにアーティストとして最年少で出演。'16年NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』に出演。「栄輔ロス」を巻き起こし大きな話題となる。'20年YOUYA名義で海外を視野に入れた音楽活動を始動。'22年には個人事務所『Mars Art』を立ち上げ、音楽活動と並行し舞台やドラマなどジャンルの垣根を越え幅広く活動している。

ブロードウェイ・ミュージカル『バイ・バイ・バーディー』

原作戯曲:マイケル・スチュワート/音楽:チャールズ・ストラウス/作詞:リー・アダムス/翻訳・訳詞:高橋亜子/演出・振付:TETSUHARU/音楽監督:岩崎廉

出演:長野博/霧矢大夢/松下優也
寺西拓人/日髙麻鈴 内海啓貴 敷村珠夕/田中利花 樹里咲穂/今井清隆 ほか 

【神奈川公演】2022年10月18日(火)~30日(日)@KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
【大阪公演】2022年11月5日(土)~7日(月)@森ノ宮ピロティホール
【東京ファイナル公演】2022年11月10日(木)@パルテノン多摩 大ホール

※公演詳細やチケット情報情報は公式HPにて→https://www.byebyebirdie.jp/