「ボディーガード最強国」での訓練

 世界各地の訓練を受けていく中で、イギリスで当時世界で一番厳しいとされたボディーガード学校があったんですが、そこに入学申請をしたら許可が下りたんです。入ってみると期待していたほどのレベルではなかったんです。僕はもっと上を目指していたので、物足りなさを正直感じていました。

 その後、各国で要人警護の訓練を受ける中、出会ったプロのボディーガードたちに聞いてまわりました。「世界一のボディーガード訓練をするのはどこの国なのか?」。プロのボディーガードたちは皆一様にある国の名前を口にしたのです。

 その国の名はイスラエル。僕はいつしかイスラエルでボディーガードとしての訓練を積みたいと周囲に話し続けました。それから1年後。ある連絡を受けます。イスラエルからの電話でした。

 その人物は、誰から僕のことを聞いたのかは明かさなかったんですけど「おまえがイスラエルでボディーガードの訓練を受けたい、という話をきいた。よかったら来るか?」。二つ返事で「行きます!」と答えました。

 1週間後にはイスラエルのテルアビブに行きまして、すぐに訓練を受け始めました。それから数年間、イスラエルを訪問し続けました。イスラエルの警護訓練は本当にレベルが高くて、アメリカとかイギリスで受けてきた訓練が、遊びに思えるほどハイレベルでした。イスラエルという国は、いるだけで無意識に危機感が増してくるというか、周りをよく見るようになりますし、人もよく観察するようになります。

 イスラエルという国の成り立ちにも関係しているのでしょうけど、警護の教育プログラム自体もすごいですし、教官たちのレベルも相当高い。それこそ物事の本質をちゃんと考えて、教育をしてくれたので、僕も目が覚めたような気持ちになりました。

 その後、訓練で得たノウハウを持ち帰り浸透させようと、日本に帰国し警護会社を立ち上げたんです。

「英語はボディーガードに必須です」 撮影/矢島泰輔

日本の要人警護を活性化するためには?

──今後、日本の要人警護をどう活性化させていきたいですか?

 日本の警備業界も世代が変わってきまして、やる気のある若い世代の社長が増えてきました。全国警備業協会という全国的な組織があるんですが、そこから「指導してくれないか」という依頼もきています。

 全国の警備業の講師たちが、各警備会社の指導員たちに教えていき、その指導員たちが警備員に教えていく。僕が経験した海外の警護のスタンダードと呼ばれるものを少しでも広めていければと考えています。

 日本人は警護に向いています。日本人の評価は海外ではとても高く、身辺警護に特に向いていると思っています。​真面目であるとか、規律正しいとか、誇張して物事を言わないとか。総じてすごく評価が高い。

 警護対象者との信頼関係の築き方は非常に重要です。日本の身辺警護員は今まで正しい教育を受ける機会がなかっただけだと思います。日本の警護員たちが世界の警護のスタンダードを知れば、優秀な警護員がたくさん育っていくと思います。

 僕の目標は、優秀な日本人警護員がどんどん世界の警護の現場に出ていってもらい、最終的なゴールは、海外で「ボディーガードといえば日本人」という称号を得ることです。