被害に遭わないための心構え
──私たちが危機を未然に防ぐためにはどうしたらよいですか?
もっと周りを観察すること。これに尽きます。例えばこのペットボトル。このペットボトルを下に落としたくないという目的があった時に、このペットボトルが落ち始めてから、つかむ訓練を何回もやっても取れるかどうかはわからない。
今のペットボトルの状況をちゃんと観察して、テーブルの端に置かれているから落ちそうだなということに、まずは気づくことなんです。これが未然に防ぐということの本質です。そして観察の次に来るのが「気づき」です。
有名なイギリスのボディーガードが「僕らは同じところを見ていても、他の人と気づくところが違う」という言葉を残しています。一般の人って、例えば周りに不審な人がいても気づかない人のほうが多いんです。でも僕らは普段から不審な人はいるものだ、という目で周りを見ているので、彼らの存在に気づくんです。
例えば夜道を歩いていて、30メートル先に不審な人物が立っているとします。この段階で危険だなと気づくことなんです。気づけば、ほとんどの人は危険だから近づかないようにしようとか、ちょっと迂回(うかい)して帰ろうと考えることができます。
被害に遭う人の多くが、周囲を見ていないんです。見ていないから気づかないんです。事前に気づいておらず、危険が目の前で起きてからようやく気づくので、対処が遅れるんです。例えば、電車に乗っていても、ずっとスマホをいじっている人とか、寝てる人がほとんどです。そこに隣の車両から刃物を持った人物が黙って入ってきても、多くの人は、被害が発生しはじめるまで気づかないでしょう。もっと顔を上げて周りを見なさい。もっといろんなことに気づきなさいと僕は教えています。
(取材・文/羽富宏文)
《プロフィール》
小山内秀友(おさない・ひでと)──1973年生まれ。株式会社CCTT代表取締役。IBA(国際ボディーガード協会)副長官兼アジア地域統括責任者。1991年より国内外でセキュリティ関連の専門教育訓練を受け始める。2002年、英国Task Internationalに入校。要人警護やセキュリティマネージメントなどの専門教育訓練を受ける。2003年、日本に株式会社CCTTを設立。2004年、イスラエル国防省に関係する人物より誘いを受け、イスラエル国防省が許可する要人警護教育訓練およびセキュリティマネージメント教育訓練を現地で受ける。2009年、IBAでは最短記録となる約1年半で国際要人警護教育訓練指導員資格(CIBGI)を取得。同年12月、それまでの成果を認められ、IBAのアジア地域統括責任者兼副長官に昇任、IBA名誉勲章を授与される。数多くの海外アーティスト、有名スポーツ選手、有名グローバル企業要人、海外政府要人、海外王族ロイヤルファミリー、宗教指導者などの警護経験を持つ。