歴代キャラクターにはそれぞれの役割がある
──パッケージも変わってきましたね。
「初めての大きなリニューアルは、発売から約30年たった1988年です。ちょうど昭和から平成になり、売り場も駄菓子屋さんからスーパーマーケットやコンビニに移ってきたころ。それで駄菓子屋さんで映えるオレンジ色から、スーパーマーケットなどの蛍光灯の店内照明の下でも目立つ白を基調としたデザインにしました」
──合わせて新キャラクターも登場しました。
「初代の女の子のキャラクターには名前がなかったのですが、2代目は『ベイちゃん』と名づけました。実はベイちゃんはフレーバーによって衣装を変えていたんですよ。カレー味だとターバンを巻いていたり、みそ味だと着物を着ていたり。字が読めない小さなお子さまにも味をイメージしてもらうためのアイコンでもあったんです」
──そうなんですね! 現在のキャラクター「ホシオくん」のデビューは2017年でしたね。
「ちょうど前回のリニューアルから30年がたつころです。やはり30年たつと客層や時代も変わります。キャラクターやパッケージはその時代のお客様の感性に合ったものにしていく必要があるとの考えから、再びリニューアルを行いました。
2017年は、モノ消費よりコト消費に重きが置かれるようになったころ。ベイちゃんには味やおいしさを伝えてもらっていましたが、そこはしっかり伝わっただろうと考えて、ホシオくんにはベビースターラーメンを食べたときのワクワク感や楽しさ、喜びなどを表す役割を担ってもらっています」
──キャラクターの世代交代への反響はいかがでしたか?
「2016年にベイちゃんが引退宣言をすると、Yahoo!ニュースにも大きく取り上げられ、多くの人に愛されていたことを実感しました。ホシオくんの名前は、SNSで募集し、4万7000件以上の応募の中から選びました。ベビースターラーメンの商品名には、“子どもたちのおやつの中で一番になるように”という願いが込められているのですが、その思いを表現してくれている名前です」
苦労して開発した3つの兄弟ブランド
──ベビースターラーメンには『ドデカイラーメン』『ラーメン丸』『ラーメンおつまみ』という兄弟ブランドがありますね。
「3ブランドとも、1999年に誕生しました。ベビースターラーメンは食べるときにどうしてもポロポロとこぼれてしまいます。それも文化だと思っているのですが、お客さまからは“食べづらい”という声もあり、それに応えて開発したのが幅広の『ドデカイラーメン』やひとくちサイズに固めた『ラーメン丸』です。
もうひとつの『ラーメンおつまみ』は、店頭で缶ビールとベビースターラーメンを一緒にお買い求めになる方を見て、かつて子どもだったお客さまも年齢を重ねていることを実感。おつまみとして食べるという新たな食シーンに合ったブランドを展開しようということになりました」
──開発にはどれくらいかかったんですか?
「正確にはわからないのですが、かなり時間をかけたようです。たとえば『ドデカイラーメン』は、一見すると麺が横につながっているように見えるのですが、実は溝をつけてそう見せています。開発当初は、きしめんやうどんのような太い麺を作ろうとしていたのですが、きしめんタイプは薄いので生地が膨張して割れてしまい、うどんタイプは厚みがあるぶん、中まで味がしみこまなかった。あれこれ試行錯誤する中で、たどりついたのが溝をつけるという方法でした。これだと表面積が多いので味もしっかり出せて、かつベビースターラーメンらしい麺のイメージも保つことができます。
ひと口サイズの『ラーメン丸』も、雷おこしのように甘い味つけで固める製法はあったものの、しょっぱい味つけで固める方法がなかなか見つからず、ほどよい硬さに仕上げるのに苦労したと聞いています」
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60年以上の歴史を誇るベビースターラーメン。そこには老舗ブランドの冠に甘んじず、常に進化し続けるチャレンジングな企業姿勢がありました。第2弾記事(11/6 17:00公開)では、最近のコラボ事情やSNSで話題の“麺文字”など、ユニークな取り組みについて聞いていきます。
【第2弾:『ベビースターラーメン』が“カップ麺”に続き、“スニーカー”を発売! 異業種とのコラボに積極的になった理由とは】
(取材・文/古屋江美子)