歌詞、メロディーから感じる「80年代っぽさ」とは?

──今回のミニアルバムでは『City Hunter~愛よ消えないで~』(小比類巻かほる)、『愛は心の仕事です』(ラ・ムー)、『プラスティック・ラブ』(竹内まりや)などをカバーしています。レコーディングのポイントはどんなところでしたか?

「選曲のテーマはタイトルのとおり“高速道路のドライブが似合う”でした。私の好きな曲ばかりにするとさすがにマニアックに寄ってしまうので、好きで聴いてきたものと一緒に『プラスティック・ラブ』などで定番のナンバーも押さえてみました。二名敦子さんの『Wonderland 夕闇 City』や、ラ・ムーも私のセレクトです。

 レコーディングでは私が憧れる80年代の女性像を表現するために、低い音域を使って大人っぽくてしたたかな印象が出せるようにしました。もちろん原曲をアレンジしていただいているので、マネでもなく、でも自分のクセが出すぎず歌詞の世界に寄り添うようにしてみました。例えば『プラスティック・ラブ』のサビは編曲の本間昭光さんと一緒に考えて、パワフルに歌っています。

 男性ボーカルの曲もカバーしていて、角松敏生さんの『AIRPORT LADY』はサウンドに引っ張ってもらってドライブに似合う、疾走感のあるムードが出せたかなと思います」

──カバーだけでなく、ソロアーティストとしても80年代風の楽曲を一貫して歌ってきましたし、ご自身で作詞もされていますね。当時のレトロ感を出すために考えていることはありますか?

あの時代って、カタカナが目立つんですよ。カタカナ語と日本語を混ぜて日常であまり聞かない言葉にして“おっ!?”と思わせるタイトルが多いのかな、と。作詞のために、ふと思いついたフレーズはストックしています。

 これは松本隆さんの曲で顕著に感じるんですけど、歌詞にはストーリー性があって、しかも聴き手に(歌詞の中の)経験がなくても共感できてしまう言葉選びのセンスが巧みだなって思います。ほかにも面白いと思うのは松任谷由実さんの『真珠のピアス』ですね! 彼の浮気を疑ってわざとベッドの下に真珠のピアスを残して、引っ越しのときに気づくでしょうと目論(もくろ)んで別れる、1曲の中で物語が展開できてしまうのがすごいです」

降幡愛さん 写真提供/Purple One Star

──ジャケットのデザインもアーティスト写真も、さらにはMVまで80年代っぽく、デビュー1年目からカセットテープや7インチレコードをリリースするなど、徹頭徹尾こだわり抜いていますね。

80年代のものなら当時のロゴやフォントも好きで、ジャケットのデザインにも取り入れています。クリエイティブ志向というか、子どものころの漫画家やアニメーターへの憧れの影響もあるんでしょうか(笑)。1stシングルの『ハネムーン』(2021年)は夏っぽい曲にしたのですが、これもあの時代になんとなく夏のイメージがあったので。大磯ロングビーチの水泳大会とかのですね。

 本間さんをはじめ、80年代当時に現役だった方と音楽制作ができるので、このチームで始めるならレコードもカセットも出そう、となりました。いい写真を撮るカメラマンさんをインスタで探してしまうほどこだわりグセがある私ですが、多才なスタッフのみなさんにアイデアをブラッシュアップしていただいて、レトロなアーティストイメージをつくってきました」

MVにもレトロ感を盛り込んだ1stシングル『ハネムーン』

──サウンド面で好きな音楽クリエイターの方はいますか?

林哲司さんですね。私がこれ好き! と思うシティポップがほとんど林さんの楽曲だったり、大好きな菊池桃子さんのソロ曲にもラ・ムーにも作曲でかかわってらっしゃるんです。私にとって林さんのサウンドが80年代を象徴してくれているのかもしれませんね