心理学を応用したカラーコーディネート

──実際のCGを見せていただけますか?

「はい。これが浜松市内にあるうなぎ屋さんから店内のリフォームのご依頼をいただいたときに描いたCGになります」

山崎さんが描いたCG (c)和楽舎設計工房
施工後の店内 (c)和楽舎設計工房

──驚きました。こんなに完成度が高いとは……、床の色が違うくらいで、施工後の店内はほとんどCGどおりにリフォームされるんですね。奥の壁だけ赤いのもインパクトがあります。

「あれは意図的にやってるんです。人間の心理は、手前に派手なオブジェや目立つ色合いのものがあると目を奪われるんですが、それはほんの一瞬だけですぐに慣れてしまうんですね。ところが、奥のほうや遠いところに目立つ色やちょっと変わったオブジェなどがあると、“あれは何だろう”と思って無意識のうちに近づいていく傾向があるんです」

──あの赤い壁に引き寄せられてしまうんですか?

「はい。“誘目性の技法”と言うんですが、心理学の応用したテクニックの1つです

──心理学も勉強されたんですか?

「専門的に学んだわけではありませんが、時間があるときに文献を漁ったり、大学の講義を聴講に行ったりしてちょっとずつ勉強しています。カラーコーディネートって、心理学的な要素も大きいんです」

──それにしても、なかなかおしゃれなうなぎ屋さんですね。

浜松と言えばうなぎですが、こちらのお店では関西風のうなぎを提供されてるんですよ。だから、あの赤も“京緋色(きょうひいろ)”という、京都に伝わる伝統的な赤を選びました。もしこれがイタリアンレストランだったら、もっと鮮やかな赤にしていたと思います

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 “雑談”からクライアントの“生き方”を引き出すヒアリングや完成度の高いCGなどからもプロの仕事ぶりの一端を見せつけられたような気がします。次回(最終話)も引き続き山崎さんにインテリアコーディネーターの仕事についてお話を伺います。

※第3回:【インテリアコーディネーター#3】ずっと挑戦が続く仕事だからやりがいがある(10月29日12時公開予定)

(取材・文/久保弘毅)